イオンはグループ販売力を活かして3年後、直接仕入れを5000億円15%に
「イオン、直接仕入れ5倍」
本日付、日本経済新聞一面の記事。
「直接仕入れ」とは、卸売業を通さず、
メーカーから自社センターに直接納品してもらい、
その後、自社物流させて、
問屋の利益分の経費を削減し、
同時に物流コストなどの無駄を省くこと。
さらにイオンは、この経費削減分の一部を、
最終売価に反映させて、顧客に還元する。
現在1000億円のメーカー直接仕入れを、
2011年には約5000億円にするという構想。
4%から15%へ。
ダイエーやマルエツを持分法適用会社とした今、
スケールの面でそれを活かすという、この施策、
まったく当然の成り行きである。
ちなみに、「自主企画商品」と日経が呼ぶプライベートレーベルは、
現在、年間2647億円だが、
2011年には、7500億円にもっていく。
合わせて1兆2500億円。
日本ナンバー1小売企業ならば、当たり前で、
むしろ遅いくらいだと、私は思う。
1998年だったか、
イオンが仙台にRDCをつくったときのことだ。
RDCとはリージョナルディストリビューションセンターのこと。
岡田元也社長も意気込んで、
「メーカー直接仕入れ」を宣言したが、
これに応じたメーカーは7社しかなかった。
ほとんどが外資系メーカーで、
日本資本の大手は菓子のカルビーだけだったと記憶している。
それが現在は、
花王、カゴメをはじめとして60社。
それでもメーカーから仕入れする商品の5%の金額に過ぎない。
現在、イオンはRDCを全国に8カ所もっている。
そのRDCもフル稼働することになる。
ただし、卸売業が担っていた機能を、
イオンが十全に果たすことが出来るのか。
自社物流にすることで、
すべては自己責任となる。
そこでの無駄の排除は、そのまま自社の利益となる。
果たして、問屋に任せていた仕事以上のことを、
イオンが成し遂げられるのか。
これが第1点。
第2は、ただ単に、直接仕入れではなく、
「丸裸の原価取引」にもっていけるのか、という点。
英語では、原価のことを「ネット・プライシング」という。
「丸裸の原価」は「ネットネットプライシング」。
別名「ファクトリー・ゲート・プライシング」ともいいう。
アメリカのウォルマートは、
1991年11月、
プロクター&ギャンブルと
このネットネットプライシングの
取引を始めた。
P&G側から「バリュー・プライシング」と名づけた。
それによって、両者は強い絆のもと、両者にメリットをもたらした。
もちろん、ウォルマートストーズの顧客にも。
そこまで、行けるか。
私の見解は以下。
イオンが2011年に、
1兆2500億円の規模にしようとしている商品群こそ、
「コモディティ・グッズ」である。
コモディティは、メーカーにとっても、
大量生産・大量物流・大量販売を、
計画的に展開することでしか、
利益が出しにくい環境にある。
このコモディティが、60社で5%という現在の状況こそ、
腑に落ちない。
つまり、イオンの側で、
自社物流してもメリットを出しにくいという実態を、
内包しているのではないか。
自社物流すれば、ジャスコにもマックスバリュにも、
ダイエーにもマルエツにも、サティにも、
カスミやイナゲヤ、ベルクにも、
それぞれに応じて店舗ごとにピッキングし、
効率よくデリバリーしなければならない。
遅配、誤配、緊急時の配送など、
卸売業のリテールサポートをカバーする機能があるのかどうか。
それには、店舗側に、シンプルな、
オペレーションシステムがなければならない。
コモディティの大量物流と大量販売で利益を出すには、
不可欠の条件である。
その構築が済んだという話は、聞かない。
イオンの取り組みは、
イオンにしか出来ない。
そしてそれがすぐさま効果を発揮するとは考えられない。
3年間のタイムラグは、
物流と情報と店内作業のシステム構築の、
時間的猶予を設定したというのが、
私の解釈である。
イオンの競争相手は、
この猶予期間に何をするか。
対抗すべく巨大なボランタリーを形成するのか。
これにも物流と情報と作業システムは欠かせない。
はたまたノンコモディティ開発に精を出すのか。
2010年を越える頃に、
すべての関係者にも、
21世紀の、その地平が見えてくるだろう。
<結城義晴>