結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2008年10月30日(木曜日)

メリッサ・フレミング女史の対ウォルマート戦略とドン副店長の証言、そしてHEBプラス、ウォルマート、クローガーの店舗群

ブログアップの時間が12時間ほどズレています。
お許しください。

今、テキサス州ダラス。

朝、講義をして、視察して、
夕方、会食をして、
そのあと、私の部屋で懇談、議論して、
それから写真を整理して、
このブログを執筆して……。
すると、現地時間午前5時。

2時間弱、仮眠して、また出かけます。

それでも、気力充実。

楽しいことばかりですから。

さて、昨日は、
メリッサ・フレミングさんを迎えたセミナー
元HEバット上級副社長。
広告とマーケティング担当だった。
ニーマン・マーカスという超高級百貨店からキャリアを始めた。
同社は、ダラスに本拠を置く。
そこで、HEBにスカウトされ、副社長に就任。

主に、ウォルマート対策やプライベートブランド開発に携わった。

オースティンに来るたびに、
フレミングさんの講義を聴く。

今回は、ハロウィン直前ということもあって、
魔女の帽子をかぶって登場。
メリッサさんなりのユーモア。めりっさ1
ユーモアからのスタートではあったが、
講義は、いつも以上にテンションが高く、
私の持ち時間まで食い込んだ。

経済危機と穀物価格高騰から始まって、
店頭の消費者の動向へ。

クレジット・カードを使い果たしてしまった消費者は、
給料をもらったら、購買する。
懐の金がなくなったら、買わない。
まさに「Hand to mouth」
食品を買うか、食品をあきらめて、
腹をすかしながら違うものを買うか。
この選択しかない。

それに対応できる店だけが伸びている。

そう、ウォルマート、コストコ。

そのプライベート・レーベルが売れている。
「スカイ・ロケットのように」
ウォルマートのグレート・バリューは2.5倍のスピード。

「ラテ・イフェクト」という消費傾向がある。
スターバックスの売れ筋カフェラテが敬遠され、
プレーン・コーヒーが売れる。
余分なもの、飾り、虚飾は一切、排除する消費。

日本でも、こうなる。

さらに「テイク・ミール」
持ち帰りの食事が伸びている。

レストランやフード・サービスで消費せず、
家庭で食べる。
しかも格安な食事。

メリッサさんの講義は、続く。
テスコのフレッシュ&イージーに対する評価は辛口。
ウォルマートのマーケットサイドは絶賛。

ハッキリしている。

そしていつものように「HEBのウォルマート対策」。
今回は簡潔に要点を整理してくれた。

①全社を挙げて、ローコスト体質にする。
②仕入れ価格をできる限り下げる
③生鮮食品でウォルマートに決定的な差をつける

この3点。

私の持論の「利益を上げる5原則」のうちの3つに通じる。
利は内にあり。
利は元にあり。
利はこの品にあり。

そのためにウォルマートを徹底的に研究する。
そして「ウォルマートの強力さを中性化させる」
メリッサさんは「中性化」という言葉を使った。
なかなか良い表現。

勝つのではなく、敵の力を中性化させる。

メリッサさんの「ウォルマート対策」は、
帰国してから再整理して、お届けしよう。

ウォルマート対策のあとは、プレイべート・レーベル開発。
これも長編の講義。

コーネル大学RMPジャパンのカリキュラムに、
「商品開発とPB」がある。
私が担当する講座。
そこで、メリッサさんのレクチャーの内容も、
丁寧にご紹介しつつ、
私の持論を展開したい。
これも、単行本1冊分のテーマではある。

今回も、いい講義だった。

団員と記念写真。
メリッサ2

最後に、結城義晴とツーショット。
メリッサ3
私のコーネル大学RMPジャパン副学長就任を祝福してくれた。
メリッサさんには、その重みがよくわかっている。
だからこそ、なおさら、感謝したい。

朝の講義が終了し、メリッサさんに別れをつげると、
彼女の古巣HEBの三番目のフォーマット「HEBプラス」へ。
アシスタント・マネジャーのドンさんにインタビュー。
どん
彼もよく話してくれた。

同店は、5700坪のフルライン構成の店舗。
明らかにウォルマート対策店舗。
HEBプラス
車で5分のところにウォルマートがある。
ドンさんもこの店から2分のところに6年前に家を買った。
4ベッドルーム・建坪85坪の15万6000ドルの家。

だからウォルマートのことをよく知っている。

ちょうど、クリスマス売り場を始めたばかり。
H2

1週間の客数3万7000人。
客単価45ドル。

「強みは、店のサイズ、品揃えのバラエティ、
そしてユニーク・コンセプト」

「弱みは、ゼネラル・マーチャンダイズ」
すなわち非食品。

HEBプラスは非食品強化型だが、
その非食品はウォルマートには残念ながらかなわない。

しかし生鮮は圧倒的に強い。
青果・鮮魚・精肉。
青果

そして、グロサリーや雑貨では、
「ロープライス・エブリデー」を断行している
これがウォルマートの強さを中性化させる作戦。

この店に長いこといると、一瞬、
ウォルマートの店内を回っているような錯覚に陥る。

そしてウォルマートとの違いは、
「クーポン販促」
DMのクーポン、
新聞折り込みチラシによるクーポン、
インストアクーポン。

ウォルマートがやらないプロモーションを、
さらにひとつ持っている。

それが、奏功している。

ドンさんに別れを告げて、
私たちはバスで、ダラスへ。
4時間、私の車中講義は3時間近く。

そして、ウォルマートのハイランドビレッジ店へ。
アップスケールと環境対策の両方の要素をこめた意欲店舗。
ウォルマート1

ウォルマートは一足先に、10月1日からクリスマス売り場を展開。
クリスマス
消費不況の中、どこよりも早く、
年間最大イベントを立ち上げた。
「備えあらば憂いなし」

これが現在のウォルマート最新の惣菜売場。
信じられないほどの洗練さ。
デリ

ハロウィンの売り場もダイナミック。
ハロウィン
ウォルマートは、進化し続けている。

最後に、アメリカ最大のクローガーへ。
最大とはスーパーマーケット最大ということ。
年商702億3500万ドル(7兆円)、伸び率6.2%。
純利益11億8000万ドル(1200億円)、伸び率は5.9%。
店舗数3662店。
クローガー
堂々たるナショナルチェーン。

このところ業績はすこぶる良い。
それはウォルマート並みのローコスト・オペレーションを、
必死で確立したから。
経費率17%から18%。
そして財務を立て直した。

しかし、現場をみると、納得はいかない。
senngyo
たまたまこの1店のことかもしれない。
しかし、テキサスのクローガ―で、現場が生き生きとした店を、
見たことがない。

「神は現場にあり」

そして、コーネル大学ジーン・ジャーマン先生言うところの
「スーパーマーケット・ジレンマ」
それに陥っている。

マーケティングの本質的なところでの見直しが必要。

ライバル「セーフウェイ」はその修正が終了している。

クローガーは数字はいいが、現場がもう一息。
青果
生鮮が弱体化したのが決定的な問題。

今日も、充実した1日。

小売りの神に、感謝。

<結城義晴>


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