結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2009年02月03日(火曜日)

コーネル大学RMPジャパン講義でマーチャンダイジングを学ぶ

今日は節分。  

「節分」の「節」は季節の「節」、「分」は「分ける」。
すなわち、季節を分ける日。

何の?

冬と春の。

だから、明日は「立春」。

立春の前日を「節分」と通称するが、
春と夏、夏と秋、秋と冬を分ける日も、
「節分」と呼ぶ。

しかし、誰にとっても、春がいちばん待ち遠しい。
だから春をむかえる「節分」が、
「節分」の代名詞のようになった。

暦の上では、明日から「春」。
私は、声高に、「春が来たよ」と、
言ったらいいと思う。

「春」には「希望」がこめられているからだ。

主要百貨店1月の売上高は軒並み10%前後の落ち込み。  
今日のこのホームページ巻頭テロップ「流通ニュース」
前年同月比、大丸は8.4%減、松坂屋が12.2%減。
高島屋は10.1%減。
三越は11.3%減、伊勢丹は9.1%減。

考えてみると、年末に、
あおりにあおって売上げをつくり、
年始にバーゲンセールを展開しても、
現在の消費者は動かない。

一方、出版業界も不振を極める。  
出版科学研究所が2008年の出版物の推定販売金額を発表。
全体で。前年比3.2%減、
雑誌は同4.5%減と過去最大の落ち込み。
書籍は同1.6%減。 
雑誌の前年割れは11年連続。雑誌休刊点数は186点。

アメリカの新聞も、相次いで赤字転落。

活字マスコミの凋落はひどい。

社会は大変革している。
マスコミのほうが、実はそのことを、
実感として感じていない節がある。

「節」の「分け目」の日に、そう思う。

さて、昨日から、
コーネル大学RMPジャパンの第5回講義。  
今回は、マーチャンダイジング編。

ところは、東京、法政大学。

お堀端に26階建てのタワー。

法政大学の入口。

その25階へ。

教室内から、澄み切った東京の街並みが見下ろせる。

講座ナンバー29。「マーチャンダイジングの基本」  
講師は、㈱ヤオコー顧問の大塚明さん。

1.商業経営における競争とはなにか?
2.マーチャンダイジングとは?
3.マーチャンダイジングの基本戦略
4.売場作りの流れ
5.商品開発
6.今後の課題
大筋は、このストーリー。
しかし現在時点の日本のスーパーマーケットの、
その商品構成と品揃えに関して、
ここまで整理された説明は、稀有だ。

詳細は、別の機会に譲るが、
垂直的MDと水平的MDを、ヤオコーがどのように考え、
どのように展開しているかが、
見事に解説された。

現代のマーチャンダイジング論は、
具体的でなければならない。
ケーススタディの商品政策が、
いちばん理解しやすいし、勉強になる。

私、脱帽。

大塚さんに「マーチャンダイジングの基本」を講義して貰って本当に良かった。

講座ナンバー30。「食料・農産物の現状と流通」。  
東京青果社長の川田一光さん。

東京青果は、大田市場の荷受会社。
グループ年商2800億円。
青果部門の卸売りでこの年商。
日本最大の青果取扱会社。

その川田さんの講義は、
世界と日本の食糧事情。
そして食品と青果の流通問題。

野菜果物は、卸売り市場を通じて流通される。

平成15年にその比率が75%であったものが、
現在90%に増えている。

昔のようなセリは、もう行われていないが、
商品を一品一品仕分けし、小分けし、物流させる。
その機能自体の重要さは変わらない。

小売業の現場の効率化が進めば、流通機能の果たす役割は大きくなる。

学者やジャーナリストは情報化によって、スピードアップするという。
「情報は空を飛ぶかもしれないが、
ダイコンやニンジンは空を飛ばない」
川田さんの講義は、最新の農政まで及んだ。

「契約取引は、8勝7敗というところで満足しなければいけない」
この言葉、重い。

野菜・果物の流通問題が浮き彫りになった。

講座ナンバー31は「水産物 サプライチェーンの協働」。  
日本水産社長の垣添直也さん。

垣添さんと私は、1994年、同社の「エビの包揚げ」が、
パリのシアルドール金賞を獲得した時からのお付き合い。

私は、日本代表国際審査委員。
当時、専務だった垣添さんは、同社代表として、シアルドール表彰式に参列してくださった、
ニッスイのエビの包揚げは、その2年間の世界最高の冷凍食品の栄誉を獲得した。

さて、垣添さんの講義は、見識に満ちていた。
世界の水産事情、日本の水産状況に関しての分析と問題提起は、
フィールドワークによって裏づけられていて、
実に的確だった。

「私は南氷洋の捕鯨に参加したことがある。
各国が捕鯨をやめる中、日本がひとりで捕鯨するようになった。
一人でやってはだめ、独り占めはいけない」

漁業者は「高く買ってくれない、儲けがない」と嘆く。
流通業者は「高く売れない、儲けがない」という。
消費者には「魅力ある商品が売り場にない」

したがって、「協働」が必要。
産業レベルで見ると、量的拡大に制約があるのだから、質的充実を図らねばならない。
その質とは、鮮度、おいしさ、美しさといったもの。 
そして安心の価値を生み出す。
米と魚の組み合わせもよい。

「私作る人 私食べる人」というコピーがあったが、それではだめ。
産業と生活のコラボレーションが必要だし、
小売業店頭こそ協働の場である。

今の水産業には、協働の場がないけれど、
明日の水産業には、希望がある。
まず「資源は国民のもの」と考える。
そして「協働の場」をつくる。
それは「関係する人々の情熱」によって成し遂げられる。

垣添さんの講義には、世界観があった。
産業観があった。

水産物マーチャンダイジングは、
日本のスーパーマーケットの生命線を握るものだ。

水産物は、店頭での努力だけでは問題解決されない。
しかしその店頭が、製配販のコラボレーションの格好の「場」となる。
しかも店頭は、産業と生活とのコラボレーションの「場」でもあるのだ。

今日もいい講義ばかりだった。

講義のあとは、懇親会。
赤坂のシティクラブ・オブ・東京で、
「江戸文化と伊丹酒を楽しむ会」  

パネルディスカッションは、
小西酒造㈱代表取締役社長の小西新太郎さん、
ソムリエの木村克己さん、
そして女現代浮世絵師のツバキアンナさん。

日本酒の様々な飲み方を勉強しつつ、
和食とのコラボレーションを楽しんだ。

小西酒造の皆さんのご協力に感謝。

最後に小西さんを囲んで、
荒井伸也首席講師と3人で写真。

コラボレーションと節目を考えさせられる日だった。

<結城義晴>  


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