セーフウェイ小型食品店実験「ザ・マーケット」の謎を解く
アメリカ小型店緊急特別セミナー真っ最中ですが、
6月の商人舎定番USA研修会のご案内が発表されました。
今回は、フェニックスとオースティン&ダラスです。
焦点のエリア。
いつものようにハードスケジュール。
そして自分を変える研修会です。
さて、緊急特別セミナーは中日。
アリゾナ州フェニックスから、
カリフォルニア州ロサンゼルスへ移動。
1時間半くらいで、到着。
すぐにバスに乗り込んで、ロングビーチへ。
セーフウェイの傘下にあるボンズが実験している小型店。
「ザ・マーケット」
昨年2008年の5月にオープン。
ボンズの既存店を改装して、
デリショップのごとき新タイプを作り上げた。
店舗面積は1万平方フィート、約422坪。
といっても、これは日本流の売り場面積ではない。
日本は大規模小売店舗法下の商調協時代に、
レジの内側の純然たる売り場面積が焦点となり続けたから、
売場面積が当たり前になっているし、
商業者の感覚に売り場面積が刷り込まれている。
しかしアメリカでは後方スペースも含めた店舗面積が問題にされる。
だからこの店の422坪も、ざっと400坪弱といったところ。
報道では、小型スーパーマーケットで、
青果部門やHMRを強化したとあるが、
この店は、「大型デリショップ」である。
だから、入口左側にレジ、そしてスターバックス。
左コーナーにリカーショップ。
正面にサンドイッチショップがある。
サンドイッチショップからサービスデリ、べーカリーと続く。
店舗真ん中には、島陳列のデリ。
そして青果部門の島ケース。
奥へ向かって青果部門。
店舗右手は、壁面に日本でいう日配品のリーチインケースや多段ケース。
そして絞り込まれたグロサリーのゴンドラ。
この店は、したがって、小型のスーパーマーケットと見ることもできるが、
サンドイッチやデリショップの便利性を高めるために、
スーパーマーケットの青果・精肉、日配品、グロサリーを足し算したと判断するのがよい。
その意味で、フレッシュ&イージーの正反対の店。
ウォルマートのマーケットサイドにやや近いが、
コンセプトは違う。
店内は、木製の床や落ち着いた什器で、
店づくりにはセーフウェイのニューライフスタイルストアの成果が生かされている。
だから見た目は美しい、コンパクトな店になっていて、
その面での評価は高いだろう。
しかし、機能として考えると、
サンドイッチ&デリショップを主力に、
スーパーマーケットの機能をサブにした店となる。
周辺が、ロサンゼルスの高級住宅街ロングビーチ。
日常の食品の買い出しは、週一回、
レギュラータイプのスーパーマーケットに行く。
しかし、中食のためのサンドイッチやちょっとしたデリは、
このザ・マーケットで済ませる。
しかし、それならば、サンドイッチやピザを提供するショップの、
ホスピタリティ、スピード、パフォーマンスは不可欠。
この店が成功するには、
主力部門の魅力づくりにもっともっと励む必要がある。
セーフウェイ全体の収益性に、
大きく影響を与える店になるにはずいぶんと時間がかかるだろうが。
さて、その後、
フレッシュ&イージーのパイロットショップへ。
この店は、セーフウェイの取り組みとは違って、
テスコが社運をかけたアメリカ進出の、望みの星。
実によく売れている。
新しい試みも満載。
トレーダージョーズのワイン「チャールズ・ショー」に対抗して、
1ドル99セントのワインも開発した。
アシスタントマネジャーのジェフさんにインタビュー(中身は、帰国してからお届けの予定)。
「間違いなく、客数が増えている」
この発言が、印象に残った。
テスコも、アメリカで、「残った残った」。
さらにそのフレッシュ&イージーと、隣合わせのような立地の、
トレーダージョーズ。
この店も、大繁盛店。
ハッキリ言って、私、トレーダージョーズのファンである。
コーネル大学のウィリアム・ドレイク博士と、その面では同志。
この店も、私のファン心理に見事に応えてくれた。
小売業は、立地産業であることを思い知らされる。
トレーダージョーズこそ、
アメリカの小型グロサリーストアの最強タイプである。
これは、今回の小型店研究セミナーの大前提の事実。
そのことを、トレーダージョーズの「スペシャリスト」のコリンさんが語ってくれた。
「テスコは我々をコピーしているが、
我々は彼らをコピーしようとは思わない」
なんと自信に満ちた言葉か。
だから固い握手。
しかしこの地で、トレーダージョーズに鍛えられて、
テスコ・フレッシュ&イージーが進化している。
(このインタビューの詳細も、帰国してからお届けする予定)
日本流にいえば200坪から500坪弱の食品セルフサービス店。
その実験が次々と、展開される。
しかし、小型店こそ、難しい。
小型店こそ、知恵がいる。
小型店こそ、特徴が鮮明だ。
それがトレーダージョーズを頂点とした米国食品小売業の現在の実力である。
<結城義晴>