「ナゲットマーケットの奇跡」その②アクチュアリー・ロープライス
「FORTUNE」誌の2009働きたい企業ランキング第10位。
「ナゲット・マーケット」のお話。
ずいぶん飛んでしまって恐縮。
ヴァカヴィル店。
フロントマネジャーのケリーさんに話を聞いた。
「ナゲット・マーケットはファンタスティックな会社です」
のっけから、こんな言い方をした。
「私は大学で働いていた。
そしてこの会社に転職した。
この会社では、オーナーの気持ちで働く者は、
2~3年でデパートメントマネジャーになる。
今年は新店はないが、ニューストアを開設すると、
デパートメントマネジャーが誕生する。
デパートメントマネジャーは、やりがいもあるし、給料もいい」
このナゲットマーケットが、
働きたい企業ランキングの上位にいるのはなぜか?
「私たちの会社の社員は、フレンドであり、ファミリーです。
人をどう扱うかで、その会社の考え方が決まります。
私たちの店は特別ではない。
私たちの商品も特別ではない。
しかし会社は社員にフェアで、なおかつ地域に貢献している」
2009年働きたい企業ランキング5位のウェグマンズ。
2005年には第一位に輝いたし、
2006年2位、2007年、2008年と3位。
そのウェグマンズで働く日本人・吉野邦夫さん。
現在、カテゴリー・マーチャントというポジショニング。
その吉野さんが言う。
「働きたい企業といっても、ラクして、
給料が高い会社ではありません。
特にマネジャーは、猛烈に働くし、競争も激しい。
しかし、働き甲斐や遣り甲斐を提供してくれる会社なのです」
ナゲットも同様。
それをケリーさんが言う。
同社は現在、9店舗のナゲットマーケットと3店舗のフード4レスを展開する。
働きたい企業ランク上位に入るためには、
会社はポストを用意し続けねばならない。
すなわち、伸び続けねばならない。
ナゲットマーケットは離職率8.2%。
極めて低い率。
しかしやめる人はいる。
「会社を辞める人の多くは、大学に行きます。
誰一人、この会社が嫌いで辞める人はいない」
「私たちは、不可能なことをやる。
品質が高くて、価格が安い。
これはどちらも一番にするのは、不可能なことです。
不可能なことをやり遂げるのが面白いのです」
ナゲットの象徴は、翼の生えた豚。
「ウォルマート、セーフウェイ、ウィンコ。
みんな安いけれど、我々は、
アクチュアリーロープライスです」
「アクチュアリー・ロープライス」とは、
「外見と違って、本当に安い」といった意味。
「STOP」とPOPやサインが付けられた商品は、安い。
外見は、美しいし、ファンタスティック。
しかし、価格は安い。
それがナゲットの真髄。
「我々はスモールカンパニーです。
しかしウェアハウスをもっていて、どんどん買う。
冷凍食品のウェアハウスもある。
それをゲストに、どんどん売る」
どんどん売るから、安くできる。
「セーフウェイと価格勝負すれば、
10回のうち8回は勝っている。
そのセーフウェイより、
我々はいつも、断然サービスがいい」
これこそが「小さいもの」の闘い方である。
そして、フロントマネジャーが、
こんな基幹となる経営戦略を語る。
フロントマネジャーとは、
日本でいえば、「レジチーフ」。
ケリーさんは男性だけれど。
そして大学職員のキャリアがあるけれど。
彼らが「ナゲット・マーケットの奇跡」を生み出しているのである。
<結城義晴>