1億0497万枚カード発行の電子マネー戦線異変あり?
「電子マネー戦線異変あり」
日経流通新聞(日経MJ)のトップ特集。
電子マネーは、運営主体によって、三分される。
スイカは東日本旅客鉄道。カード発行枚数2536万枚。
パスモは東急電鉄など私鉄。1177万枚。
イコカは西日本旅客鉄道。448万枚。
この三つを交通系と呼ぶ。
それに対して、流通系は二つ。
ナナコはセブン&アイ・ホールディングス。766万枚。
ワオンはイオン。820万枚。
そしてエディは、家電メーカーのソニー系のビットワレットが運営。
こちらは4750万枚。
全部合わせると、
なんと1億0497万枚となってしまう。
日本の人口が1億2770万人だから、もうすぐそれに並ぶ。
私は、もっぱらパスモを愛用している。
東京と横浜を結ぶ私鉄・東急電鉄沿線の妙蓮寺というところに住んでいて、
この通称・東横線の定期券を使っているため。
家族はスイカを使っているし、
私もスイカを持ってはいるが、あまり使わない。
エディは、発行枚数で圧倒しているように見えるが、
死蔵カードが多いそうだ。
それ以外では、スイカが発行枚数で圧倒。
スイカには、北海道旅客鉄道のキタカ、
九州旅客鉄道のスゴカ、西日本鉄道のニモカを含む。
関西流の「イコカ」のネーミングは、面白いし、
キタカやスゴカも、いい。
私は福岡生まれなので、スゴカの良さはわかる。
パスモも健闘といったところか。
交通系は、パスモを含めて、相互利用を開始している。
これは、実に便利。
電子マネーの特性を、よく理解している。
さて私たちは、流通はどうかとみがちだ。
ナナコとワオンの流通二強の対決構造だから。
しかし、電子マネー全体で見なければならないことは、確か。
その意味で、交通系が全体でリードしていることは、これまた確かだ。
そのなかで、日経MJの記事は、
ワオンが、台風の目になって、
電子マネー市場が動き始めたというもの。
電子マネーは、小売業ではコンビニでの利用頻度が高い。
そのコンビニにおいて、今年2月、
ファミリーマートがワオンと提携を発表。
一気に、最大コンビニのセブン-イレブンに迫ってきた。
現在、それぞれが使える店舗数は、
スイカ5万9220店
パスモ5万1000店
イコカ4万9790店
ナナコ2万3361店
ワオン2万8000店
エディ12万6000店
しかし、今秋からワオンはファミリーマートの店舗網を加えて、
3万5000店になる。
さらに決済数において、ワオンがナナコを急ピッチで追い上げている。
イオン・グループによるセブン&アイ・グループ追い上げの構造だ。
そのポイントが、「地域通貨戦略」。
実際に、昨年10月、島根県で、
山陰地方で通用する「あいポケットワオンカード」を発行。
200円の買い物に1ポイントが付くポイント制度を導入。
「地域通貨戦略」とポイント制度、
そしてファミリーマートや吉野家との提携戦略で、
ワオンが台風の目になっているというのが、
日経MJの特集。
ここで、私は思う。
電子マネーは、カードか貨幣か。
カードならば、他のカードとカブる。
ポイントカード、クレジットカード、
エトセトラ・エトセトラ。
そして便利さという以外に、
電子マネーのカードにはメリットはない。
定期券カードを持っていて、
それがほかの場面でも使えるから便利。
だからこれはあくまでもマネーだ。
貨幣ならば、信用と保証、そして適用範囲の広さが、
その価値となる。
信用と保証は、運営会社の収益力や企業力が問題となるし、
一応、この6種類の電子マネーにはその資格はある。
だからあくまでも問題は適用範囲の広さとなる。
ここで私の持論。
「クリティカル・マス」
電子マネーについては、私は最初から、
「クリティカル・マス」の概念をベースにモノを言っている。
クリティカルマスは、一般に17%のシェアを超えると、
特別のご利益が得られるという。
従って、例えばカード枚数は1億枚の17%、
すなわち1700万枚。
これをクリアしているのは、エディとスイカ。
しかしカード発行枚数だけでは、電子マネーは意味がない。
貨幣として流通している「生きた金」のクリティカル・マスという尺度が必要。
さらにこのマネーを使える拠点の範囲も、尺度の一つになる。
それが先の店舗数。
小売業は、現在、130万店だから、小売業で22万店。
外食やサービス業など含めると、50万店は目指さねばならない。
これも日経MJの記事からだが、
日銀の発表の2007年度の決済総額は、5636億円。
決済額の17%。
しかも電子マネーの決済は、小額硬貨中心となる。
カード発行枚数、利用店舗数、決済金額数。
3項目揃って、17%のポイントを、真っ先に超えるところが、
電子マネーの王者になる。
しかしワオンの地域戦略など、毛細血管のように電子マネーが広がると、
この分野のマーケットは拡大する。
拡大・膨張過程でクリティカル・マスを突破する。
それは、確かに日本経済を活性化させる。
クリティカル・マスのためには、M&Aが不可欠。
これは相互乗り入れも含めた今後の動き。
日経MJの特集は、ジャーナリズムとしては面白いネタだけに、
ややワオンを過大評価し過ぎるかもしれないが、
交通系と流通系の大胆な提携が、
一番の早道であることは間違いない。
パスモ愛用者として、私は、その方が便利だ。
<結城義晴>