商業経営問題研究会に飯能の流通仙人・杉山昭次郎来る
「疲労困憊」とはこのことか。
そんな体調の昨夕だった。
ひどくだるい。
喉は痛い。
節々が痛い。
しかし熱はない。
食欲もない。
酒はまずい。
水だけが旨い。
風邪でもひいたかと思ったが、
一晩熟睡したら、
けだるさは残るが、
喉の痛みは消え、
ずいぶんと回復した。
食欲も出てきた。
ただし私の弱点は、右眼。
右眼が重い。
まだ完全回復には至っていない。
けれども、休養が、
疲労を取り去ってくれることは確かだ。
生きているということは、
考えてみると、
疲労と休養の繰り返し。
仕事もスポーツも、懇親も議論も、
上質の快楽は、必ず疲労を伴う。
大切なのは、その疲労のあとに、
上手に休養を取るか否か。
ただし、この疲労と休養を必要としない存在がある。
仙人である。
仙人はあるがままに生きる。
雲のうえで、霞を食っている。
酒も飲んでいるだろう。
ときどき下界に降りてくる。
そして凡人どもを、雲に巻く。
昨日は、商業経営問題研究会。
Retail Manegement Learning Circle。略称RMLC。
不肖、結城義晴が座長を務める。
その6月研究会に、
飯能の流通仙人が降りてきた。
杉山昭次郎先生、82歳。
この商人舎のホームページに、
「ときどきエッセイ」を連載してくださっている。
RMLCは最初は「杉山ゼミ」と称してスタートした。
故磯見精祐さんが事務局長となって、
3人で研究会が始められた。
その後、5人のオリジナルメンバーが確定し、
少しずつ研究会は発展し、
「ヤオコースタディ」をまとめるに至った。
その後、杉山先生が、隠遁生活に入ったために、
磯見さんが座長となった。
磯見さんは一昨年、逝去され、
私が座長となった。
その初代座長の杉山先生の久しぶりの講義があるというので、
19人が参集した。
ところは、東京・芝の機械振興会館。
午後1時半。
タイトルもなし。
レジュメやテキストもなし。
しかし、たんたんと、
よどみなく、
ゆっくりと、
言葉がひとつひとつ選ばれながら、
1時間半ほど、
仙人の講話は、進んだ。
第一に、世の中の役に立つこと。
特にスーパーマーケットは食生活の向上に貢献すること
第二に、そのために利益にストイックであること。
利益は唯一では決してないが、
最も大切な目的の一つであること。
第三に、社会貢献し、利益を捻出するために、
「ソシオテクニカルシステム」の原理を知ること。
会社には、ソシオシステムという社会的な仕組みと、
テクニカルシステムという技術的な仕組みがあり、
両者は互いに影響を与えあって、組織を変容させる。
この総体がマネジメントシステムである。
仙人・杉山昭次郎の持論。
32年前、㈱商業界に入社して1週間後に、
この持論を説明してもらって以来、
私は「ソシオテクニカルシステム論者」である。
第四に、いかにすれば働く人が張り合いを感じられるか。
人は、イノベーティブな仕事を続けることに張り合いを感じる。
イノベーティブな仕事の継続こそ、面白い。
そしてイノベーティブな空気が充満しているから、
改善・改革が実行しやすい。
これが、良い組織文化である。
良い組織文化の構築こそ、
社会貢献と利益をもたらし、
イノベーションを実現させる。
仙人の話は、このあとも、
止まるところをしらず、淡々と続いた。
午後3時、講話が終わると、
拍手がわいた。
その後、質問や議論。
これがRMLCの特徴。
第二部は、㈱ケノス社長の小林清泰さんの報告。
今年2月末にオープンしたセーブオン本庄蛭川店が、
店内の全光源に発光ダイオード(LED――Light Emitting Diode) を採用した。
結果として、既存店舗の約4割減の省エネ率となった。
小林先生が、この店舗照明デザインを担当し、
それが、環境省の「省エネ照明デザインモデル事業」優秀店舗となった。
そのご報告を環境店舗の考え方。
5月2日のこのブログでもご紹介した。
第3部は、先月の続きの品川昭さんの報告。
神戸大学名誉教授・田村正紀先生の昨冬の著書『業態の盛衰』の解説。
業態論に関しては、この研究会参加メンバーはみな、一家言持つ人ばかり。
論議は改めて。
その後、懇親会。
私は、ちょっと抜けて機関誌原稿を書き上げてから参加。
体調は最悪だった。
しかし楽しかった。
さらに二次会。
六本木のエスカイヤクラブ。
高木和成さん、
浅香健一さん、
大高愛一郎さん、
杉山先生と、
私たち商人舎スタッフ。
「商業の現代化」とは何か。
そのために何をしなければならないか。
真剣に話し合った。
最後に私には、おぼろげながら見えてきた。
「疲れ切ったときの練習こそ身につく」
スポーツでよく言われること。
論議したり、考察したりすることにも、
それは当てはまる。
この夜、実感した。
<結城義晴>