デフレの中のユニクロ60周年10億円還元感謝セールと商売人の「心の目」
信頼している人から理解されないことほど、
悲しいものはない。
商人舎で展開しているアメリカ視察研修会は、
お陰様で、第5回を数え、大好評。
しかし私は、アメリカ小売業の情報屋ではないし、
単なる紹介屋でもないつもりだ。
基本的にアメリカの小売業界から、
謙虚に、真摯に、学びたいと考えている者だ。
だからアメリカの小売業を研究する。
世界でアメリカほど、
小売業の規制が少ない国はない。
だから、理論化が容易である。
皆さんも、小学校や中学校の理科や化学で、
実験したことがあるだろう。
試験管やビーカー、シャーレの中で、
実験は行われる。
試験管、ビーカー、シャーレは、
完璧に洗浄されていて、
仮説に、他の要素が加わらないように設定される。
規制が少ないアメリカ社会は、実験室のようなものだ。
だからアメリカの小売業の競争と発展は、
実験室における競争と発展のようなものとなり、
だからアメリカから学ぶ価値が生まれる。
実験室の結果は、理論化が容易だ。
その理論が、日本の小売業の競争や発展を、
「鳥の目」「魚の目」で読み取る時に大いに役立つ。
私は、アメリカ小売業を見るとき、
「虫の目」「鳥の目」「魚の目」で見る。
11月4日のこのブログで書いた。
「虫の目」とは、現場を見る力。
細部まで丁寧に「見極める能力」。
これを支えるのが、専門性と現場主義。
「鳥の目」は、大局を見る力。
全体像を俯瞰しながら、「見渡す能力」。
これを支えるのが、情報量と知識。
「魚の目」は、流れを見る力。
時間の経過の中で、現在と未来を「見通す能力」。
これを支えるのは、経験と見識。
そして、「四つ目の目」は、
謙虚で、真摯で、真っ正直な「心の目」である。
私は、日本の小売業、
特にスーパーマーケットや総合スーパー、
そしてコンビニを、
長年にわたって研究してきた。
「虫の目」「鳥の目」「魚の目」、
そして「心の目」で。
とりわけ「心の目」が大切であることを、
最近は、実感している。
ピーター・ドラッカー教授は、
「ポスト・モダンの七つの作法」の中で、
自ら「見ること」の大切さを、第一に挙げている。
私は、日本の小売商業・サービス業界のドラッカーになりたいと、
密かに、しかし心から願って、努力している。
だから私は、
アメリカ通でもないし、アメリカの情報屋でもない。
私のアメリカのパートナー浅野秀二先生も、
アメリカの情報屋ではない。
商人舎のホームページをご覧いただけば、よくわかる。
浅野先生は、アメリカを通して、人生を説いている。
私たちは、誰よりも、アメリカ小売業に対して、
謙虚で真摯な研究者でありたいと考えている。
そのために欠かせないものは、
謙虚で、真摯な「心の目」である。
もちろん「虫の目」「鳥の目」「魚の目」のどれかが欠けても、
たとえ試験管や、ビーカーや、シャーレの中の実験といえども、
結果を正確に見ることはできないし、
正しく判断することはできない。
さて、政府は、
現在の日本経済の「緩やかなデフレ」を正式に認めた。
2006年6月以来、3年5カ月ぶりのこと。
昨日のこのブログでも、そのことには言及した。
政府の「デフレ発表」を見越したかのように、
「ユニクロ」は、「創業60周年記念大感謝祭」を始めた。
期間は、11月21日から12月31日まで。
総額10億円を顧客に還元する。
方法は5000円以上お買上げごとに、
抽選で10万人に1万円のキャッシュバックをするというもの。
今日の朝刊に、大々的にチラシを入れ、
朝6時から、約400店で値引きセールを開催。
東京・銀座店には2000人以上、
大阪・梅田店は約650人が並び、
「予想以上の大盛況」(ユニクロ広報室談)。
ユニクロ1号店は1984年に広島でオープンした。
そのオープンの朝6時という設定を再現し、
同時に、店の前に並んだ顧客に、
「朝から感謝」の意を込めて、
朝食用のアンパンと牛乳を配った。
柳井正ファーストリテイリング会長兼社長の意気込みが、
私には、ひしひしと伝わってくる。
ユニクロのチラシは、
衣料品を販売しているにもかかわらず、
スーパーマーケットの「日替わり特売」を採用している。
これも柳井さんが自ら、最終チェックまで見ている。
日本中がデフレに騒いでいるときに、
創業60周年の感謝を込めて、
25年前の「ユニクロ」1号店の初心に帰る。
ここには、したたかな「商売人」の算盤と、
謙虚で、真摯で、真っ正直な「心の目」がある。
<結城義晴>
6 件のコメント
毎日ブログを拝見させて頂いております
私は不勉強なのでなぜ業界の方は
アメリカに学ぼうとするのか 理解できませんでした
しかし今日のお話はとても分かりやすく 結城さんの
目は何を見ているのか よく分かりました
自分の不勉強を恥じ入るばかりです
結結さんがよく仰る ともに学ぶ という姿勢で
企業や職位 立場を超えていろんな方々と学んで
行きたいと思った次第です
結城先生、お疲れ様です。
何かつらい事がおありだったのでしょうか?頑張って!
先日、電車内でとある紳士が小銭を落とし、気付かずに過ぎると、すかさず座っていた男性が「お金、落としましたよ!」と。
「あ、どうも」とその紳士。
これ外国では、まずありえない光景。
親切、思いやり。いわば「笑顔0円」これ日本のすばらしさ。
結城先生のブログは「マネジメントの極意0円」
いつもありがとうございます。
宮澤賢治の故郷から様、ありがとう。
どんなものからも「学ぶ」ことはできます。
しかしどうせ「学ぶ」ならば、学び甲斐のあるものから学ぶ。
ドラッカー先生の仰る「時間管理」の面からも、
学び甲斐のあるものから学んだほうがいい。
小売業の場合、それがアメリカです。
もちろん、ヨーロッパからも、日本からも、
中国やアジアからも、学んだほうがいい。
「学ぶ」ことこそ、「生きる」ことです。
船村さま、激励、こころから感謝。
大丈夫です。
ちょっとしたことを、
感情的になって書いてしまって、
恥入るばかり。
何人かの方から携帯にメールをいただいたり、
励ましをいただいたり。
ありがたいことです。
感謝します。
結城先生、はじめまして。ローカルスーパーで働いているものです。
いつもブログにて勇気と感動と気づきを沢山頂いております。
本当にありがとう御座います。
「四つの目」は日本での店舗見学でも絶対に必要な事ですね。
対象となる店舗の所在地の人口・主な産業・食文化・立地条件は当然、
それらを踏まえた上、その会社の考え・店長はじめスタッフの考え・
バックヤードや調理場のレイアウトなど沢山の情報を
「推理し、破壊し、組立て直し」そして、
自店へのフィードバック方法を考える。
それに反して…。
「何も考えずに繁盛店をそのまま真似ることが、成功への近道」
と教えられることが多くなった気がします。
そのお店のすべてのスタッフ一人一人が
「経験と知識を」「汗と涙を」「お客様への思いを」
その結晶が素晴らしい売場を作り上げます。
どのお店も簡単に出来上がったものではありません。
食べ物は咀嚼し飲み込むことによって栄養分となります。
ただ飲み込むだけでは栄養にはなりません。
人員もお店の規模もバックヤードの環境もまったく違うのに
「ただ寸分違わなく真似る…」
それが「経営理念?」「知識と先見?」「成功へのステップ?」
他地域の成功事例だけを吸い上げ、ただ他のお店に撒くことを
繰り返しの「情報屋」に振り回されずに、お客様にいちばん大切なことを考え
競合店と言う名の同志達を「四つの目」で研究し負けない素晴らしいお店を
僕は作りたいと思っております。
(まだまだ、虫の目を手に入れる修行中の身ですが。)
長駄文、申し訳御座いませんでした。
いつか結城先生に直接お会いしてお話出来る事を心待ちにしながら、
自分を精進してまいります。
寒くなってまいります。
ご多忙とは思われますがどうかお体にはお気をつけて下さいね。
ストレート・エッジさま、励ましのご投稿感謝。
>「何も考えずに繁盛店をそのまま真似ることが、成功への近道」
と教えられることが多くなった気がします。
そのとおりですね。
>食べ物は咀嚼し飲み込むことによって栄養分となります。
ただ飲み込むだけでは栄養にはなりません。
これも仰る通り。
商業界の故倉本長治先生は、
「創意を尊びつつ良いことは真似ろ」と、
教えました。
「創意を尊ぶ」私はこれをクリエーションと呼びます。
「良いことを真似る」これはイミテーション。
いたずらに模倣を貶めることもないけれど、
創造を抜きに模倣だけしていてもいけない。
イミテーションとクリエーションを繰り返すことを、
イノベーションといいます。
イノベーションこそ大切なことです。
本当にありがとう。
貴君は、私の同志ですね。