総合スーパー・コンビニの売上げ減とクルーグマンの「節約のパラドックス」
ひどく花粉が飛び始めた。
今月最初のGood Mondayで予測した。
2月第2週は最後の寒さの極み。
第3週がひと雨ごとに暖かく、
第4週は、めっきり春らしくなるが花粉が飛ぶ。
今週に入って、やはりめっきり春らしくなった。
同時に、花粉が飛び始めた。
日本チェーンストア協会発表。
1月の売上数値。
会員企業68社で、8208店のデータ。
既存店の前年同月比販売額は、
マイナス4.9%。
大部門別にみると、
食料品がマイナス4.3%、
衣料品はマイナス8.7%。
住関蓮品はマイナス5.1%、
これまで伸びていたサービスまでマイナス1.9%。
商品カテゴリー別の動向をみると、
相場安の分野の売上げが伸びず、
しかも高額品・嗜好品の売上げも伸びず、
鍋材料なども伸びなかった。
紳士衣料の重衣料やセーターは不調で、
ワンマイルウェアは好調。
日用雑貨品は、掃除用品、流し用品は好調だが、
食器、台所用品、行楽用品が不調。
医薬品が不調で、
化粧品はフェイスケア、メンズは好調。
ヘアケア、ヘアメイク、ボディケアは不調。
家電製品は、エコポイント関連の薄型テレビ、
それにDVDレコーダー、空気清浄機は好調で、
冷蔵庫、洗濯機、エアコンは不調。
売上げ不調品種だらけの中で、好調品種には、
それなりの理由が感じられる。
一方、日本フランチャイズチェーン協会の発表。
コンビニ10社の1月月報。
既存店前年同月比の売上高マイナス5.3%。
これは、8カ月連続のマイナス。
既存店ベースの客数はマイナス1.6%、7カ連続減、
平均客単価もマイナス3.8%、
こちらはなんと14カ月連続の減少。
商品カテゴリー別にも、
日配食品、加工食品、非食品、サービス、
全部門でマイナス。
「低価格商品志向と消費マインドの低下」が原因。
すなわちデフレが原因だという分析。
アメリカでは、
ウォルマートの2010年度決算が発表された。
ウォルマートは1月末決算。
前年度比1.0%増の4050億4600万ドル。
事業部門別には、
スーパーセンターを中心にしたアメリカでの売上げが1.1%増。
2582億2900万ドル。
インターナショナル部門は、
1.3%増の1001億700万ドル。
会員制ホールセールクラブのサムズクラブは減った。
マイナス0.4%の467億1000万ドル。
サムズの売上げがマイナスになったことは衝撃的だ。
アメリカでも、デフレ傾向の上に、
ロールバック攻勢で他から売上げを奪取しようという政策が、
自らの売上高の伸びにブレーキをかけた。
購買点数は増えたが、
売上額はそれに応じた伸びを見せなかった。
ウォルマートにして、しかり。
プリンストン大学のポール・クルーグマン教授。
かつて『ニューヨークタイムズ』のコラムに書いたこと。
2008年のノーベル経済学賞受賞。
1953年生まれの私と同学年。
「よき道徳はよき経済学である」
今、裕福な人に税制優遇措置を施しても、
経済効果はない。
貧困な人にこそ、手を差し伸べて、
個人的危機を救うこと。
それが経済効果を引き出す。
これを「よき道徳」と、クルーグマンは言う。
「節約のパラドックス」もクルーグマンの持論。
個人は生活の節約したいと考える。
企業も投資の節約を考える。
それが集合すると、経済が停滞し、
個人の収入はますます下がるというもの。
クルーグマンは提案している。
「健全なインフレ目標」を掲げることを。
健全なインフレとは、「少しずつ成長するインフレ」
具体的な数値は「2%程度の経済成長」。
将来、モノの値段が上がると、
誰もが思っていれば、
買い控えをやめて、なるべく安いうちに買おうとする。
これによって経済の循環が進み、景気は回復する。
しかも、デフレで得をするのは裕福な層。
「物価が下がる」とは、
相対的に貨幣の価値が上がることを意味する。
すると既に金をもっている貯金残高の多い者ほど、
その資産価値は上がる。
逆に貧困な人は、預貯金もできず給料も上がらない。
借金をしていれば、その負担は大きくなっていく。
これがクルーグマンの「節約のパラドックス」の論旨。
クルーグマンは、ここで、
為政者の政策が大事だと主張する。
バラク・オバマであり、鳩山由紀夫。
貧困な人に手を差し伸べると同時に、
「健全なインフレ目標」を掲げ、
その誘導をする。
ウォルマートまで売上げの伸びが縮み、
総合スーパーはもとより、
コンビニまで成長が止まる。
私たちは、このクルーグマンの考え方を、
知っておかねばならない。
それを支持するか否かは別にして、
知っておかねばならない。
すなわち経済学の有用性を認識しなければならない。
「良き道徳は良き経済学」だからである。
<結城義晴>
[追伸]
3月9日火曜日。
商人舎発足2周年記念セミナー。
テーマは「2010知識商人の経営の流儀」
「㈱成城石井大久保恒夫社長と結城義晴の
二人のビッグセミナー」
大久保さんには、
2010年に必要な「経営改革」をベースに、
売場改革と数値改革の要諦を語っていただきます。
結城は、2010年の業界趨勢を整理し、
イノベーションとミッションを語ります。
最後に二人で、ディスカッションを展開します。
皆さんからの質問も受け付け、それを全体化します。
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お問い合わせ電話は045‐350‐6651。
二人が皆さんをお待ちしています!