結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2010年03月09日(火曜日)

「命と右目」「店と企業」のライフサイクルを考える

故田村弘一さんの告別式があった。
享年70歳。
㈱グリーンファクトリーの現役社長。
元㈱クイーンズ伊勢丹社長、㈱パレ社長など歴任。

スーパーマーケット・トレードショーのブースでお会いし、
㈱スズキヤの中村洋子社長と一緒に写真を撮った。
それが最後のお別れになった。

ご冥福を祈りたい。

合掌、黙祷。

今朝、東京・池尻の東邦大学付属病院で検査と診察。
私の場合は、右目。

10歳の夏休み、右目に針金が刺さり、
白内障で水晶体摘出手術

その後、㈱商業界社長の53歳の5月に、
突然の網膜剥離で、手術。

さらに、一昨年、㈱商人舎を立ち上げたばかりの3月に、
緑内障で眼圧が高まり、二度の手術。

それからちょうど二年。
今朝の視野検査、眼圧検査と診断のあと、
北善幸医師は言った。
「結城さんの場合、命よりも右目の寿命は短いでしょう」
「あと20年か、25年か」
「右目の視力がゼロになることもあります」

私は聞いた。
「ゼロというのは、真っ暗になることですか」
「はい」

私は、思った。
絶対に命は、右目より長生きさせる。
それに私には左目がある。

大切に、生きよう。

『週刊エコノミスト』は「特集・百貨店沈没」。
『週刊東洋経済』は「百貨店・スーパー大閉鎖時代」。

有楽町西武マリオンの閉店は、
一般マスコミ人にとって、
よほどインパクトのある事件だったようだ。

私の場合に置き換えると、
会社が私の寿命。
有楽町の店は、私の右目。

右目が見えなくなることは辛い、悲しい。
しかし、人間の命がもっと大切。

右目にも寿命があるし、
人間にも寿命がある。

店にも寿命があるし、
会社にも寿命がある。

そして業態にも寿命がある。

東洋経済記者のインタビュー。
「西武有楽町店は顔的存在だったと思うのですが」
それに答えて、
セブン&アイ・ホールディングス会長の鈴木敏文さん。
「顔でも何でもない。
今までやってきたこと自体が不思議だった」

「開業以来一度も黒字化したことがなく、
規模が小さいからファッションビルにもならない」

鈴木敏文さんへの質問は、
頓珍漢な事を聞くに限る。
あるいは怒らせる。

そうすると、いい答えが返ってくる。

鈴木さんは冷徹な人だ。

右目でも、胃袋でも、
たとえ顔であっても、
不必要なものは容赦なく手術する。

しかし、それが一番、
人間の命を大切にすることになる。

マスコミは、ともするとノスタルジックになる。
それが大衆受けするからだ。

小売業ももちろん、大衆を顧客にしている。
しかし、ノスタルジックな商売は成り立たない。  

不思議なことだ。

あくまでもリアリズム。
リアリティこそ、商人のよりどころだ。

ところで『東洋経済』と『エコノミスト』。
前者は全面展開しすぎて、
週刊誌としては散漫になってしまった。
「大閉鎖時代」と時代をとらえようとしたから、
百貨店もアパレルも総合スーパーも、
スペースをとって取り上げた。

そのために、一般読者からすると、
特集テーマと同じ「総合の隘路」に陥った。

一方、『エコノミスト』は百貨店の沈没に絞り込んだ。
巻頭記事に私のコメントも入れてくれた。
週刊誌としてはこれでよいかもしれない。

しかし、もっともっと、鋭い切り口が必要だ。
それこそ、「顔を切っても命は守る」くらいの意気込みを、
特集の中に塗りこめるべきだ。

自ら「毒」をもたねば、
マスコミ自体、生き残れない。

日経MJで㈱カスミ社長の小濵裕正さんが語っている。
「デフレがいけないとか安売りがいけないとか、
経済学者が言うのはわかるが、
スーパーの経営者が言ってはいけない」

「1円でも安く売り、
1円でも利益を出す仕組みをつくるのが、
チェーンストア」

「安く売ったらつぶれるというのなら、
経営者をやめなければいけない」

このリアリティが、本物の商人だ。

リアリティとノスタルジー。

雑誌も店も、
マスコミ企業も小売企業も。

実は、同じところに立っている。

再び、田村弘一さんに、黙祷。

<結城義晴>


8 件のコメント

  • 結城さん 大久保さん お話ありがとうございました

    CDの中でも何度も何度も『現場が大事』『お客様』
    というお話をされていましたが それをさらに具体的に
    話してくださって すべてはそこが出発点だという
    ことがよく分かりました

    一番印象に残ったのは『私が気にしているのは
    お客さまにどう見られているかなんです』
    という言葉でした

    ありがとうございました

  • 結城先生、こんにちは!

    一期家一笑の杉浦です。

    本日は、大久保社長さんとのセミナー、大変勉強になりました。

    顧客満足度、従業員満足共に日本トップレベルの経営者の考えとはどういうものなのか、

    また、結城先生が考える、これからの商人のあり方とは、

    という事を、一つでも教わりたくて参加させて頂きました。

    結城先生の熱い言葉、胸にグッときました。

    大久保社長の明確なビジョンと具体的なマネジメント理論。

    一つでも、今日から自店に反映していきます。

    それが一商人として、本日学ばせて頂いたお礼だと思いますので。

    本日は本当にありがとうございます。

    感謝!

  • 結城社長 二人のビッグセミナー参加させていただきありがとうございました 久々の結城節 元気をいただきました 大久保氏とのコラボ幸せ感じて拝聴しました   ご健康にはくれぐれもおきずかいくださり 御活躍お祈りいたします。

  • 結城先生
    目のご病気は大変心配です。くれぐれもお体ご自愛ください。

    これは私の経験からですが、病気はしない事にこしたことはないですが、長い人生で病気をすることで、他人の病気の苦しみがわかり、倒産や失業を経験して、そこから立ちがることで、人よりより深い人生の意味を知ることができます。

  • けんた様、ありがとう。
    「お客さまにどう見られているか」を一番気にしている。
    大久保さんの気にしていることが、
    成城石井の店長さんや社員の皆さん、
    パートタイマーさんにまで伝わって、
    みんなが「お客さまにどう見られているか」を気にしている。

    ヤン・カールソンはそれを、
    「真実の瞬間」と表現しました。

    けんたさんの会社でも、実現してください。
    時間はかかるかもしれませんが、
    面白くてやりがいのある仕事です。

  • 杉浦大西洋さま、ありがとう。
    ブログも見ました。
    「日本一」になってください。

    小さな店であることを恥じることはないよ。
    その小さなあなたのお店に、
    人の心の美しさを、
    いっぱいに満たそうよ。
    [岡田徹詩集から]

    人の心の美しさで、日本一を目指してください。

  • kawaziriさま、ありがとうございます。
    大久保さんとのコラボは、
    私も幸せになります。

    ほんとうにいつもありがとうございます。
    みんなで幸せになりましょう。

    きっとできます。
    私は信じています。

  • いまちゃん、あたたかいお言葉、感謝します。
    他の人の苦しみを知り、「利他」で生きることを学びたいと思います。

    「艱難が忍耐を生み出し、
    忍耐が練達を生み出し、
    練達が希望を生み出す。
    この希望は失望に終わることがない」
    (新約聖書・ローマ人への手紙5章)
    多謝。

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