コーネル・ジャパン、まるごとサミットで作業システムを学ぶ
コーネル大学リテール・マネジメント・プログラム・オブ・ジャパン。
日本の食品産業と食品小売業の産業内大学を標榜して、
第二期の7回目の講義に入った。
第7回目は、オペレーションシステム編。
「組織は戦略に従う」
(アルフレッド・チャンドラー・ジュニア)
まったく同様の思考法で、
「作業システムは戦略に従う」
横浜・伊勢佐木モールのはずれにあるセミナー会場。
まず、副学長の挨拶と今回の趣旨説明。
第二期生に第一期生からの参加もあって、
盛況の講座となった。
先月のロジスティックス&情報システム編は、
ヤオコーとロヂャースの視察実習が中心だった。
今回は、荒井伸也首席講師と高野保男講師、
そしてサミットでの視察、サミットからの解説で、
トータルに学ぶ。
荒井先生、高野講師もサミットご出身だから、
「まるごとサミットに学ぶ」の体。
まず、第1講座、第2講座は、
高野講師の「作業システムの概要」。
高野さんは、サミット取締役を退任して、
現在、超多忙のトップコンサルタント。
サミット時代に、
同社のレイバー・スケジューリング・プログラムをつくった。
その根本的な考え方と具体的なシステム構築の方法論が、
わかりやすく展開された。
サミットも高野さんの理論も、
1日のオペレーションを5つに区分する。
①朝一作業
②朝二作業
そして③午後一作業
④午後二作業
⑤閉店作業
作業の基準を決め、作業の区分をつくり、
作業量と作業時間を科学的に算出する。
そのうえで、調整時間を入れ、
作業と作業者と作業時間を合理的に割り当てる。
したがって、作業改善や生産性の向上が、
逐次、可能となる。
何よりも、売り場が安定する。
私は、もう30年ほど前に、
アメリカのロサンゼルスで、
「ラルフの24時間」という取材をした。
その時にも、時間区分を重視した。
①ミッドナイトオペレーション1
②ミッドナイトオペレーション2
③開店前オペレーション
④開店後オペレーション
⑤デイタイムオペレーション
ラルフは、午前7時までに100%の品揃えを終えると、
あとはほとんど売場に手をつけない。
商品がどんどん売れていく。
だからデイタイムオペレーションは、
年商70億円の店にも限らず生鮮部門ごとに、
一人ずつのパートタイマーで遂行されていた。
グロサリーは、アシスタントマネジャーが、
売場の維持管理を兼ねて監督し、
パートタイマーが売れた後の段ボールケースを、
片づける作業に専念していた。
そんな区分だったと思うが、
サミットも高野さんも、基本は同じ。
それを日本のスーパーマーケットとして、
完成の域に導いた。
高野さんのレイバー・スケジューリングは、
トヨタのカンバン方式と全く同一の思想である。
高野さんの講義が、3時間(180分)。
次は、荒井伸也首席講師の「ストアマネジメントシステム」。
「スーパーマーケット原論」の一つの章として、
「ストアマネジメント」が位置づけられている。
スーパーマーケットの構造、
店長の役割、
部門チーフの役割、
部門間の応援、
レイバー・スケジューリングの考え方が、
荒井先生の整理で、見事に描きだされた。
私がとりわけ印象に残ったのは、
「店長は管理者、部門チーフは監督者」という表現。
チーフは作業の監督者であって、
その作業が組み合わされて売り場がつくられる。
店長は、人と作業と売場の管理者である。
だから「店長は効率を求め、チーフは能率を求める」
ストアオペレーションのカギを握るのは店長である。
「店長は、チーフからみると本部の代弁者、
本部からみると店の代弁者」
荒井先生の講義が終わると、
サミット権太坂スクエア店に移動。
私、2008年1月18日、21日と、
このブログで、この店のレポートを書いている。
⇒
(比較して読んでいただくと理解は深まる)
バックヤードの休憩室で、
サミットの皆さんを紹介。
注意点など確認して、
夕方のピークタイムの店舗をチェックする。
バックヤードも整理整頓が行き届いている。
青果部門のフロントに筍の島陳列。
サミットは全店で青果が強いし、
この店も同様。
11.4%の売上高構成比。
果物の立体陳列も見事だ。
この売場が、
レイバースケジューリングプログラムによって、
実現され、監督・管理されている。
島陳列の売り場。
下段は新玉ねぎの箱売り。
夕方、6時ごろ、青果部門は補充陳列作業を続けている。
レタスの補充陳列。
ミニキャリアに載せた商品を取り出して並べる。
作業基準ができていて、
それを習得した作業者が、
淡々と作業する。
これによって、サービス残業もなく、
異常なことも起こらず、
顧客にとっては、
安心して買いやすい売場が出来上がる。
ニラの補充陳列。
売り場を適正の状態に維持するために、
青果部門はこの時間帯にも、
補充作業が組み入れられている。
ジャスト・イン・タイムでの補充が、
サミットの考えるスーパーマーケットの生命線である。
全店で「63円セール」が展開されている。
サミット創業の1963年にちなんだ創業祭。
鮮魚部門も品揃えは、ピークになっている。
鮮魚部門は9.3%の売上高構成比。
刺身3点盛り、598円。
「毎日が超特価!」
ほぼ正方形の店舗奥主通路沿いには精肉部門。
この部門が店全体の回遊性と買いやすさを左右させる。
精肉部門の売上高構成比は11.6%。
精肉は用途別と畜種別のミックスで組み立てられている。
その焼き鳥売り場。
店舗中央をオープン冷凍ケースが走る。
その冷凍食品売り場への補充陳列。
半額セールで、インパクトを与えている。
デイリー部門は20.6%と高い構成比。
加工食品が27.9%ともっとも高いが、
この2部門で48.5%。
生産性の高い部門。
この店舗の特徴だが、
カートで買い物する顧客が実に多い。
店にとっても、顧客にとっても、
非常にいいこと。
店全体の設計や陳列が、
カートショッピングに適しているから、
必然的にカートを使用する顧客が増える。
店舗右翼には惣菜部門が設けられている。
その筆頭が寿司。
惣菜は7.5%の構成比。
そしてこの時間帯の主役売り場でもある。
左翼の青果と右翼の惣菜。
両極が魅力的だから、
顧客はカートで全店を回遊する。
弁当も充実。
惣菜売り場にも焼き鳥がある。
焼き鳥は夕食のおかず。
最後に、ベーカリー。
売上構成比1.9%。
この時間帯に焼き立てのパンを提供。
これが重要。
権太坂スクエア店は、売り場面積754坪。
バックヤード面積368坪。
年商30億9000万円。
社員24名、パートタイマー70.5人。
アイテム数1万1929SKU。
そして冷蔵冷凍ケース数174台(6尺換算)、
ゴンドラ411.5台(こちらは3尺換算)。
いい店だ。
こんな店が近くにあればいいと、
素直に思う。
ここで、明日、
レイバースケジューリングの神髄が解明される。
バックヤードで、
お世話になった皆さんと写真。
右から常務執行役広報室・営業企画部担当の工藤静夫さん、
店長の寺田敏行さん、
第10ブロックマネジャーの福永智さん、
広報室マネジャーの清水則久さん。
そして高野講師と私。
今回も日本の食品小売業産業内大学に対して、
サミット㈱から大きな貢献をいただいた。
心より感謝するとともに、
この功績は後世まで確かに伝えられるし、
さらにサミットの発展にコーネル・ジャパンも、
貢献させていただかねばならないと考えている。
<明日につづきます。結城義晴>
2 件のコメント
こんばんは(*^_^*)
弊社の業務改革は、サミットさんが基になってるみたいですが。
昨年の夏に、ユニーさんのバックヤードを見せて頂く機会があった時に、
「トヨタ方式とは違うなぁ」と印象を受けたんです…
でも…サミットさんも、トヨタ方式も同じだったんですね!?
何故、「違う」と思ったのかが問題ですね…
13個目の課題ですかね(笑)。
大変、勉強になりました。
ありがとうございます。
明日も楽しみにしてます。
ナンバさん、ありがとう。
自分の勉強を続けているようですね。
自分の目でモノを見て、自分の頭で考える。
それがいいと思います。
それが脱グライダーです。
サミットも、機会があったら見てください。
考える対象として、もってこいの会社です。