井上ひさしさんの逝去と「知識商人」対談のいちやまマート社長・三科雅嗣さんの「美味安心」
井上ひさしさんが亡くなった。
享年75歳。
1969年までつづいたNHKの『ひょっこりひょうたん島』が、
井上さんの職業作家としてのデビュー作だが、
これは児童文学者の山元護久(やまもと もりひさ)さんとの共作。
山元さんは、早稲田大学童話会出身で、
この童話会は、やがて、早稲田大学少年文学会となった。
少年文学会は、私が属していた童謡研究会と兄弟関係にあり、
学生時代から山元・井上の『ひょっこりひょうたん島』は、
私たちの先輩がつくっていると誇りにしていた。
1970年には『ムーミンのテーマ』で、
第12回日本レコード大賞童謡賞を受賞している。
井上さんの座右の銘。
むずかしいことをやさしく
やさしいことをふかく
ふかいことをおもしろく
おもしろいことをまじめに
まじめなことをゆかいに
そしてゆかいなことをあくまでゆかいに
私の文章法の基本は、
ジャーナリストの先輩でもある林廣美先生から教授された考え方。
難しいことを易しく。
易しいことを面白く。
面白いことをより深く。
深くなると、難しくなる。
だから、繰り返す。
難しいことを易しく。
易しいことを面白く。
面白いことをより深く。
林先生は、「もとは井上ひさしさん」とコメントされている。
井上さんの座右の銘は、
むずかしい⇒やさしい⇒ふかい⇒おもしろい
⇒まじめに⇒ゆかいに⇒あくまでゆかいに
これは、作家としての井上ひさしの信条を示す。
林先生と私のものは、問題解決的であると思う。
私は、循環するところが気に入っている。
もうひとつ、前職の時に、差別用語の問題が起こった。
私は、井上さんの『差別語のための私家版憲法十一箇条』をよりどころにして、
この問題解決に当たった。
合掌しつつ、ご冥福を祈りたい。
さて、昨日は、午後1時から東京・新宿のホテルの一室を借りて、
CDオーディオセミナー『知識商人登場!』の第21回目の収録。
毎月毎月、対談を重ねてきてもう21回。
ほとんどの対談相手は、私が決めている。
いわば私の先輩、友人、後輩との対談となっていて、
実にアットホームな雰囲気を醸し出している。
しかし、もっともっと、
バトル対談のようなものもあってよいとも思う。
今回のお相手は、
㈱いちやまマート代表取締役社長の三科雅嗣さん。
昭和27年11月生まれの、私と同級生。
山梨県を中心に11店舗の優良なスーパーマーケットを経営する。
もちろん、私にとって旧知の友人。
旧知の友人といっても、
音声録音は、毎回、緊張する。
だからその緊張をほぐしながら、
少しずつ本題に入る。
三科さんは、父上を55歳で亡くし、
兄上は46歳で早世された。
そこで38歳の時に、社長になった。
その後、12店開設させ、
11店を閉鎖した。
だから600坪くらいが、同社の標準店となっている。
ローカル・スーパーマーケットのひとつのあり方を、
しっかりと示す企業となった。
すなわち「規模」を追いかけることなく、
「質」を追求する企業である。
いちやまマートは「食を通じて幸せをもたらす」というコンセプトを掲げる。
これには二つの考え方がある。
第一は「おいしいものを食べる」
第二は「食を通じて健康をつくる」
三科さんは、この二点に集中し、徹している。
そこで、必然的に生鮮食品を充実させた店舗づくりとなる。
さらにプライベートブランド開発に力を入れることになる。
いちやまマートブランドを開発するにあたって、
三科さんが考えたことがある。
「わが社のブランドはNBより、
おいしくなければいけない」
NBの方がおいしいのならば、
NBを売ればいい。
自分で開発するならば、
NBとは違う特性をもつこと。
その特性を「おいしいこと」とした。
これは会社が目指すものだからである。
さらに「健康・安心・安全」を標榜し、
まず食品添加物の問題から徹底して改善した。
「わが社のお店から、
合成着色料が入っている商品を見つけたら、
1万円の賞金を差し上げます」
新聞広告にこんなチラシを打ったりした。
合成着色料、添加物、化学調味料。
徐々に、こういった食品添加物が削除され、
いちやまマートの売り場とPBは変わっていった。
しかし、三科さんは言う。
「私は80点主義なんです」
100点は求めない。
そして3年前に「美味安心」というブランドが誕生した。
三科さんは、その「味の責任者」である。
プライベートブランドには、一貫した味の統一が必要だ。
これは重要なことだ。
それに、社長が責任をもつ。
しかし社長は開発のプロではない。
あくまで顧客である。
そして「味の最終意思決定者」となる。
「美味安心」は現在、220品目。
いちやまマートの店内で、
独特のポジションを築いている。
さらにこの「美味安心」を販売する仲間の企業が増えてきた。
現在、30社の地方スーパーマーケットに供給されている。
三科さんは、さらに、㈱美味安心を設立し、
東京・中目黒にパイロットショップをオープンさせた。
おしいしさ、健康・安心・安全、リーズナブル価格を、
三つの旗印にして、
美味安心ブランドの開発はつづけられている。
中目黒の店は、東急ストア本部に道路を隔てた路面店。
全品プライベートブランドの店。
三科さんとの対談も、
あっという間に時間が過ぎた。
三科さんも、ブログを書いている。
「社長のトレビアン」
2008年の夏から、ほぼ週一回ペース。
おいしさや健康・安心・安全について、
自らメッセージを発信するためだ。
さらに自分の健康についても、
研究に余念がない。
「食を通じた幸せ」を提供しようという三科さん。
私はじっくり話をして、
三科さん自身が一番幸せなんだろうと、思った。
まさしく三科さん自身が「美味安心」なのだから。
昭和27年同志の対談。
楽しい時間だった。
多謝。
<結城義晴>
[追伸]
商人ねっと㈱CDオーディオセミナー担当の下山直美さんが、
今週をもって退職することとなった。
昨年5月の當仲寛哲さんとの対談のころ、
商人ねっとに入社し、
このプロジェクトに参加したから、
ちょうど1年になる。
寿退社ということだから、
これはお目出度いことなのだろうが、
せっかく編集技術など高まってきたのに、
まことに残念ではある。
お幸せに。