杉村史朗、落合清四、木下潮音3講師による労働労務問題講座はコーネルの特徴
イギリスの新首相にデービッド・キャメロン。
副首相はニック・クレッグ。
ともに上流階級出身の43歳。
キャメロン首相は保守党。
クレッグ副首相は自由民主党。
戦後初の連立政権。
第3党の自由民主党が、
どちらかと言えば距離のある保守党と組んで、
新しい局面に立ち向かう。
これも反EUの姿勢を鮮明にしつつ。
若いリーダーに期待がかかる。
振り返ってみると、日本の民主党代表選挙も、
小沢一郎前代表の策略で、
1週間足らずの間に決めてしまって、
鳩山由紀夫代表となった。
岡田克也現外務相は涙をのんだ。
さて、日本の自動車メーカー10社。
3月期決算が出そろったが、
全社ともに黒字化した。
1年前は半数の5社が赤字にあえいでいた。
エコ減税など優遇措置があった。
エコロジーではなく、エコ贔屓だなどといわれた。
しかし同時に、各社共通して、
大胆なコスト削減を断行した結果の黒字化。
日本の自動車メーカーの底力を確認するとともに、
まだまだ回復途上という認識は強い。
自動車とともに、
ファストフード上位企業の決算も、
回復基調を示す。
日本マクドナルド年商3623億円、純利益128億円、
ゼンショー 3341億円、35億円、
吉野家ホールディングス 1796億円、マイナス89億円、
日本ケンタッキーフライドチキン 1248億円、25億円、
松屋フーズ 624億円、10億円、
モスフードサービス 600億円、16億円。
吉野家だけ、赤字決算だが、
あれだけ苦しんだ外食産業にも、
明かりが見えてきた。
政治は混迷していても、
民間企業は立ち直る。
さて昨日は、コーネル大学RMPジャパン5月2日目。
朝9時から、東京・市谷の法政大学。
雨模様の東京、午後には雨が上がって、
晴天が現れた。
朝一番で、単行本の紹介。
第1期生の広野道子さんが本を書いた。
「フツーのOL」の私が、社長になった理由。
これがタイトル。
洋菓子のヒロタ代表取締役。
第二期生の北川善裕さんが解説してくれた。
北川さんは現在、洋菓子のヒロタ代表取締役社長。
第一講座は杉村史朗講師。
テーマは「人材の採用と育成 評価を中心に」
評価に関して杉村先生は二つの方法を提示した。
第一が、コンピテンシー(実力)の評価。
高い業績を継続してあげている人の行動特性の評価。
第二は、実績(業績)の評価。
これは、一定期間にあげた実績の評価。
この組み合わせの方法が新しくて一般的。
小売業に向いているかがあとで議論の対象となった。
第二講座は「労働組合問題」
テーマは「民主的労働組合と労使関係」。
UIゼンセン同盟会長の落合清四さんが講師。
落合さんは組合員107万人の世界最大の労働組合のトップ。
日本社会のリーダーの一人。
まず、「労働者とは?」から入って、
「働くことの意義」を明快にしてくれた。
「労働は商品ではない」
日本的勤労観では「傍が楽」になること。
労働組合の意味、その現状。
そしてこれからの会社経営と労働組合の関係性。
私は労働組合は、
経営者や社員にとって必要だと考えている。
その本質が落合さんから語られた。
最後は同志共通の課題
「ワークライフバランス」について。
第2講座終了後、飛び入りで
日本スーパーマーケット協会の大塚明専務理事が登場。
大塚さんはコーネル・ジャパンの講師でもある。
大塚さんは、政治が大きく変わる今、
スーパーマーケット業界が、
きちんと施策に対する意見を述べていく、
その必要性が問われているということをメッセージしてくれた。
そして昼食をはさみ、第3講座は「小売業の労務問題」
木下潮音講師。
小売業を取り巻く労働環境の最近の特徴は、
①時間、無休営業、
②小型多店舗展開、
③パート・アルバイト中心のスタッフ構成。
そこで、適切な労務管理が重要となる。
木下先生の講義は、主に三つに絞って行われた。
第一が長時間労働問題。
そしてここから出てくるのが「不払残業の防止」問題。
いわゆるサービス残業の問題。
法定労働時間は、週40時間1日8時間、
法定休日は、週1日または4週4日。
これが基本。
これを超える労働をさせるためには36協定を結び、
割増賃金の支払が必要となる。
このブログでも書いたが、今年年4月1日から労基法が改正された。
残業は45時間までが、25%の割増。
45から60時間までは、25%から50%の間で労使が合意する率。
[年間360時間以上も同様]
そして60時間以上は基本賃金の50%の割増を払わねばならない。
「不払残業は労基法違反」である。
行政の是正指導だけでなく、刑事罰が適用され、
多額の遡及支払いが義務付けられる。
サービス残業の問題が解決されないことは、
会社にとって存続の危機となる。
木下先生の提起した第二は、「管理職問題」。
いわゆるマクドナルド裁判で明らかになった問題。
労働基準法41条2号で、「管理監督者」と「管理職」の関係が明記されている。
管理職は「各企業が企業運営の必要等から置く人事制度上の役職」
管理監督者は「労基法41条2号の規程により、
労働時間・休日・休憩の規定が適用除外されるもの」
従って、「管理監督者は労基法の解釈によって決まり、管理職とは一致しない」
ちょっと難しいのは「管理監督者の判断基準」。
①名称にとらわれない
②経営者と一体と認められる権限
③勤務の裁量性
④処遇(組織における人数)
従って、日常的にオペレーションに入ることが予定されている店長は、
管理監督者とはならない。
ここが重要なところ。
だから当然ながら、残業代が払われねばならない。
木下先生の第3の問題提起は、
「 パートタイマーの活用と労働法」
「パートタイマーのタイプ別雇用管理」が面白い。
①通常の労働者と同視すべき短時間労働者
②一定期間限定人事活用同一職務内容同一短時間労働者
③職務内容同一短時間労働者
④短時間労働者
⑤短時間労働者以外の非正規労働者
そのパートタイマーへの対応。
この問題も奥が深い。
木下先生をCDオーディオセミナーにでもお呼びして、
もっと丁寧にお伝えしたいものだ。
さて最後は、ディスカッションとまとめ。
私がコーディネートし、第二期生が意見を語り、
荒井先生がまとめる。
これも実に有意義で、面白かった。
[この項は次回に続きます]
コーネル・ジャパンの5月の講義。
マネジメントと労務問題を掘り下げる。
他の講座もそうだが、
コーネル・ジャパンならではのカリキュラム。
私はこの5月の講座を展開するために、
コーネルを始めさせてもらったと言ってもいいくらい。
商業の現代化において、
不可欠の内容が5月の講座である。
<結城義晴>