全米小売業11位から30位企業と「井の中の蛙大海を知らず」
アメリカ商業は何かにつけ、
ウォルマートの影響を受けている。
その意味では、アメリカにおけるウォルマートは、
1980年代から1990年代の日本のダイエーのような感じ。
フランスでも、カルフールがそんな位置付けだし、
イギリスのテスコもそういった観がある。
いずれも国内断トツ第一位の小売業。
「FORTUNE」グローバル500の統計資料2009年版では、
ウォルマートが世界企業ランキングの3位の4056億ドル。
1ドル100円でわかりやすく換算すると、40兆円。
カルフールは、25位の1291億ドル、約13兆円。
テスコは第56位の943億ドル、もうすぐ10兆円。
カルフールとメトロの間50位に、ドイツのメトロが入ってくる。
こちらは1012億ドル、10兆円。
各国の小売業ナンバーワン企業は、10兆円を超えている。
日本ではセブン&アイもイオンも5兆円。
まだまだ半分です。
これに対して世界企業ランキング100位に入っている日本の企業。
①トヨタが世界ランク10位の2044億ドル。
②日本郵政が11位の1987億ドル。
③NTTが44位の1037億ドル。
④ホンダが997億ドル。
かつての公営企業と自動車会社。
⑤日立が995億ドル。
⑥日産が67位で、840億ドル。
⑦パナソニック79位、773億ドル。
⑧ソニー81位の769億ドル。
⑨日本生命の96位、666億ドル。
最後に⑩東芝の97位662億ドル。
ズラリと家電メーカーが並ぶ。
まだまだ日本の経済は、製造業に引っ張られている。
「鳥の目」で見ると、日本の小売業の位置付けも見えてくる。
「鳥の目」「魚の目」は大切だ。
「虫の目」だけのスタンスを「井の中の蛙」という。
「井の中の蛙大海を知らず」
大海に漕ぎ出しているにもかかわらず、
「井の中」を決め込んでいるのは滑稽でしかない。
商人舎のアメリカBasicコースのテキストは、3部に分かれる。
第1部は、出発1週間ほど前にお送りする「視察店舗資料編」41ページ。
第2部は「メインテキスト」142ページ。
そして第3部は「業態別企業概要編」138ページ。
トータルではA4判321ページに及ぶ。
膨大な「鳥の目」「魚の目」「虫の目」の体系。
マーケティングの分野では「STP」といわれる考え方がある。
フィリップ・コトラーの方法論。
セグメンテーション。
マーケットにおける顧客や顧客ニーズを分類し細分化すること。
ターゲティング。
自社の参入するセグメントを選定し、ターゲットを明確にすること。
ポジショニング。
顧客のご利益を鮮明にし、自社の位置付けを確立すること。
私は第3のポジショニングの重要さを強調する。
アメリカの小売業やスーパーマーケットは、
このステップを踏んだ作戦を展開している。
その体系を理解せずして、
勝手に解釈してしまうと、
まるでトンチンカンになる。
それを「井の中の蛙」という。
さて昨日の続き。
今回のbasicコースで廻ったアメリカ小売業11位以下30位までの企業。
11位はスーパーバリュ。
445億ドル(4兆4564億円)の食品卸売業と食品小売業の会社。
アルバートソンは現在、スーパーバリュの傘下にある。
12位がセーフウェイ。
441億円、1739店。
このラスベガス地区では「ボンズ」の店名で第3位のシェアをとる。
「ニューライフスタイルストア」の新フォーマットに転換中で、
セグメンテーション、ターゲティング、そしてポジショニングの新展開を実践中。
14位は、百貨店のメーシーズ。
年商249億ドル。847店舗。
全米の百貨店連合。
かつてのブルーミングデール、メイ、マーシャルフィールド、
ロビンソン、ブロードウェイ、バロック。
現在はみんなメイシーズ。
しかしキッチン用品など定評のある商品群は、
今も、アメリカの百貨店代表として健在。
そして20位、オフプライスストアの雄TJマックス。
年商190億ドル、店舗数2652。
百貨店やステータスショップで売れ残った商品が、
シーズン終了後集荷され、このフォーマットで売られる。
売れ残りだから安い。
売れ残りだからサイズもマックスやミニマムしかない。
あるいは際立ってデザインや色目が悪い商品ばかり。
それでもブランド品が驚くほど安い。
TJマックスもウォルマートと異次元の商売をしている。
21位、JCペニー。
年商185億ドル。店舗数1093。
24位コールズ。
ジュニアデパートメントストア。
メーシーに次ぐ企業だが、
年商も164億ドルで1004店舗にも成長した。
セルフサービス集中レジが特徴の一つ。
26位にスーパーマーケットのHEバットが入って来ている。
テキサスの非上場のローカルチェーンだが、
年商146億ドル、322店。
そしてカジュアル衣料チェーンのギャップ。
年商145億ドル、純利益9億6700万ドル。
店舗数3149。
最後に30位、トイザらス。
137億ドル、前年比マイナス0.5%。
店舗数1159。
玩具小売業第1位は現在、ウォルマート。
だからトイザらスは苦しい。
ウォルマートは11月12月のクリスマス商戦に、
現具を大々的にロールバックし、売りつくす。
トイザらスは1年中、在庫を抱え、店舗を営業して、
一番おいしい時期のクリスマス商戦にウォルマートにガバっととられる。
かつてのカテゴリーキラーと、
商品調達力と販売力を兼ね備えた総合小売業との関係が、
逆転してしまっている。
時流の流れをとらえる「魚の目」で見ていると、
それがよくわかる。
いや「鳥の目」「魚の目」で観察しないと、
意味がない。
くれぐれも「虫の目」だけのアメリカ視察は、避けるように。
百害あって一利なし。
もし下手な解説が加わるならば、
むしろ観光にとどめておくべきだ。
(明日につづきます)
<結城義晴>