横山清・川野幸夫・荒井伸也、スーパーマーケット論客三人の弁
民主党代表選挙、菅直人氏の線で決まり。
その民主党の支持率も回復してきた。
菅氏は、アメリカの経済学者ポール・クルーグマン唱えるところの、
「インフレターゲット論者」で、
従って、外国為替市場では円売りの兆候。
しかし、信念を持って仕事してもらいものだ。
さて日経MJには、
2009年度の大型店新規出店件数の調査の報告が出ている。
ストアジャパンの2009年4月から2010年3月までの集計。
届け出件数は、約500件と2008年比マイナス22%。
総合スーパーは12件の届け出で、4割減少。
食品スーパーマーケットは222件で最多。
全体の44%を占める。
好調なのはスーパーマーケットということになる。
競争が激しいのはスーパーマーケットということになる。
そのスーパーマーケット三協会会長のコメント。
去る5月28日(金曜日)帝国ホテルで開催された記者発表会でのもの。
日本セルフ・サービス協会会長・横山清。
日本スーパーマーケット協会会長・川野幸夫。
オール日本スーパーマーケット協会会長・荒井伸也。
以下、私のメモからそれぞれの弁をお届けしよう。
まず荒井伸也さんから、
冒頭のコメント。
三つの団体はそれぞれに特色がある。
違いがある。
私たちオール日本スーパーマーケット協会は、
ある考え方のスーパーマーケットをつくろうという意思のもとに集まっている。
そこでメンバーの同質性は高いが、会員数は少ない。
今回の、三協会の販売統計に関しては、ある種の感慨がある。
30数年前、中国へいった。
そこで、スーパーマーケットの説明をしてほしいという要望が出た。
中国には市場はたくさんあるが、スーパーマーケットはなかった。
私は考えた。
スーパーマーケットは、「市場」と、何が一番違うのか。
そこで得た結論。
第一に、スーパーマーケットはセルフサービス方式を採用する。中国語で「自我服務」。
第二に、チェーンストアである。同じく「連鎖店」。
1960年ごろ、日本でも同じ。
最初に日本セルフ・サービス協会ができた
数年後、日本チェーンストア協会が誕生した。
それから50年。
新しい技術で作られた「市場」の統計がない。
消費者の動向、景気の動向がつかめない。
長い間、スーパーマーケットの統計がなかった。
市場であって、セルフサービス・システムを採用し、チェーンストアである業態の統計。
始めて認知されたという喜びがある。。
次に川野幸夫さんのコメント。
たくさんの方々に集まっていただくことに、まず感謝したい。
スーパーマーケットは、1930年にマイケル・カレンがつくった。
1953年には日本で紀ノ国屋がスーパーマーケットを始めた。
そして高度経済成長のとき、
アメリカのスーパーマーケットを学びながら、
何でも売る「スーパー」ができた。
大店法が施行されても、大手といわれる「総合スーパー」が業界を代表していた。
「総合スーパー」が「スーパー」の代表となった。
一方、私たち食品スーパーマーケットには戦略がなかった。
これは統計上にも言えることだった。
日経新聞でも「スーパー」といえば、日本チェーンストア協会の数字を使う。
総合スーパーの数字が使われる。
業界の天気図を見ていても、
おかしいことがあった。
違うぞという思いもあった。
一昨年、総合スーパーの業績が悪いときに、食品スーパーは良かった。
しかしまとまった統計がなかった。それは私たちの責任でもあった。
スーパーマーケットは、生活者の日常の生活を支える。
従って、この統計の意味は生活者の日常が表われることだ。
生活者の生活態度の分析については、大いに役に立つに違いない。
これからは、景気対策をはじめとして、
いろいろなことにこの統計を使ってほしい。
そして横山清さんの弁。
小売業は「士農工商」と、やや、低く見られている。
経済産業省の日本標準産業分類にも載っていない。
「スーパーに強盗」といえば、コンビニのこと。
75%以上の売上高が食品でしめられるのがスーパーマーケットである。
しかしその統計を取ることには苦労した。
きっかけは二つの社団法人が合併したこと。
全国スーパーマーケット協会と日本セルフ・サービス協会。
そこで、「戸籍がない産業」に戸籍をつくろうと考えた。
そのために一番先にやることは、統計を明らかにすること。
商売は数字である。
自らの開示なしに、他からの協力を得ることができない。
いま、新しい21世紀の分水嶺にある。
業界としてもカビが生えてきたかもしれない。
しかし食生活の実態を明らかにする。
そのために店頭の実態を数値で知ることが大切だ。
食生活は変わる。
40年前は、店頭でウナギを売っていなかった。
10年サイクルで歴然と変わる。
地域の動向、指向性、皆変わる。
それをとらえる統計となる。
オール日本スーパーマーケット協会(AJS)は入会が厳しい。
日本スーパーマーケット協会(JSA)は中堅がしっかり集まっている。
日本セルフ・サービス協会(JSSA)は小さい。
各協会垣根を低くして、数値を集め、
新しい分析技術を使っていけば、
未来予測が可能となる。
そのうえで、各協会が一緒になることも、
私個人としては、将来的には考えねばならないことだと思っている。
ここで記者からの質問。
「統計の意義について」
横山さん。
我々は立派な流通産業だ。
この統計によって消費者にも産業として見てもらえる。
さらに働く人たちにも産業と認識してもらえる。
明らかに5年で様変わりするに違いない。
川野さん。
私たちは日常ふだんの生活のベースになる部分を担当している。
その意味で大切な仕事だ。
スーパーマーケットは社会のライフラインとなっている。
とりわけ日本人は食を大切にしてきた。
だからスーパーマーケットの役割はさらに大きい。
この統計は、年間販売額が14兆円と集計された。
商業統計ではスーパーマーケットは17兆円を超える。
残念ながら今まで、統計の重大さの認識がなかった。
その努力を怠ってきた。
これによって業界全体が評価していただいたり、価値を認められたりする。
優秀な人も採用できる。
社会的評価が高まる。
小売業は店頭で競争しているから、大同団結がやりにくい。
しかし、時期が来れば、小異を捨てて大同に付くことも必要になるだろう。
荒井さん。
小売業は、消費者の生活のシーンを売っている。
狂牛病がはやると牛肉が売れない。
しかし豚肉が売れ、鶏肉が売れ、魚が売れ、豆腐が売れ、卵が売れる。
つまるところ消費者はタンパク質がほしいということがわかる。
衣料が悪い、家電が悪い。
そうすると食品が埋もれてしまう。
これまでの「スーパー」の統計がそうだった。
スーパーマーケットはインフラストラクチャーである。
すなわち生活のベースを支える。
したがって、インフラが完成するまではスーパーマーケットは成長する。
そのスーパーマーケットの協会ごとの統合など、
私は「呉越同舟」と思ったことは一度もない。
「呉でもなく越でもない」と考えている。
AJSは店頭とバックヤードの勉強会。
団体で徒党を組むといった次元にはない。
質問は続く。
「現状のスーパーマーケットの景況感」
横山さん。
札幌では、商品の売れ筋の変化や競争環境を考えた時、
もう少し深刻な状況が来ると「身構えた心境」だ。
上から下まで安売り戦争となっている。
超大手といえども、さらに特別の評価を得ている企業も、
業界全体で利益を失っている。
それが「闘い終わって日が暮れて」となるか。
川野さん。
もっともっと厳しい状況が続く。
年金を初めとした社会保障の問題に関しても、
さらに財布のひもを占めさせることになった。
マスコミも「安売りこそ正義、賢い消費者」とあおった。
オーバーストア、オーバーカンパニーであることは間違いない。
まだ整理されていないし、秩序が回復していない。
安く売るのは、値札を変えるだけでいい。
だから安売り大会が始まってしまった。
ただし、一回下げた価格は上げられない。
もちろん、コモディティは安さが価値だから、
理にかなった安さは求められる。
大きな企業は恫喝すればいいが、
小さな企業はそうはいかない。
しかし、ただ安いだけでは消費者は満足しない。
そういった点からも、評価される企業にならなければいけない。
当面、安売り大会は続く。
しばらくは、ある意味の我慢比べは続く。
世界の状況、日本の状況を見ると、まだまだ続く。
荒井さん。
社会全体がいい時はちょっと良い。
悪いときもちょっと悪い。
それがスーパーマーケットのインフラたる所以だ。
店の数は過当競争と言えるかもしれない。
しかし必要な店は少ない。
それが入れ替わってゆくプロセスが、現在だと思う。
この過程を通じて、だんだんいいスーパーマーケットが増えていく。
総合スーパーは行き詰る。
社会的機能がはっきりしていないからだ。
スーパーマーケットは提供する機能がはっきりしている。
だからまったく問題はない。
むしろ魚の売上げが下がっていることは問題だと思う。。
肉中心の売上げになり、それは社会全体として変化している。
惣菜が伸びている。
高齢化社会の中で、自分の家の食そのものが弁当化することは、
果たしてそれでいいのか。
こういったことのほうが問題だと思う。
「食品スーパーの将来観」
横山さん。
使命感だけでは、商売できない。
お客の支持がなければ、商売はできない。
日本はアメリカと違って、チェーン化で2~3社で事足りるわけではない。
この安売り戦争は、
新しいことを生み出す力となる。
まじめにやっているだけではうまくはいかないが、将来は明るい。
川野さん。
そんなに大きな変化が起きるわけではない。
生活者は要求水準を高めてくる。
要求水準が高まるとは、「何でもあることは何もないこと」となる。
商いのコンセプトを明確にする。
スーパーマーケットとしてどんな専門店になるか。
本当にお客のニーズにこたえるスーパーマーケットがどのくらいあるか。
これまで私たちも、大型店舗法で、規制に守られてきた。
それがなくなって競争が激しくなった。
顧客の要求水準も高まった。
専門店として、
それぞれの企業にとって、
どうなるのかと考えると、
将来性は高い。
荒井さん。
物事を、全国で考えてはいけない。
それがスーパーマーケットであり、小売業である。
スーパーマーケットは店ごとに競争が行われている。
スーパーマーケットで消費する額は、一世帯当たり年間約80万円。
人口6万人、2万世帯の街とすると、160億円となる。
それが人口3万人に減ると、80億円になる。
しかしスーパーマーケットは年商20億円で成り立つ。
だから160億円のマーケットならば8社必要だが、
80億円なら4社となる。
つまり強いスーパーマーケットだけ残る
人口に応じた店の数になる。
従って一番店を続けていると、十分に成長できる。
これからは強いスーパーマーケットの競争となる。
いかがだろう。
最後に結城義晴のコメント。
「この三人の会長だったから、
この歴史的統計の集計が実現した。
この三人の会長だから、
日本のスーパーマーケットの将来は明るい」
長文のご講読、感謝。
<結城義晴>
2 件のコメント
私の楽しみにしているTV番組に「秘密のケンミンSHOW」があります。
その中で県民に愛され熱烈な支持を受けるロカールチェーン・リージョナルチェーンのスーパーマーケットが登場して紹介されます。
「ヨークベニマル」「マルエツ」「サンリブ」等等
どのスーパーマーケットも全国区には無い、その県、その地方独自の「食材」や「全国1位の消費量の食品」を店頭に山積みしているシーンが紹介されます。
日本型スーパー・大型スーパー・日本型GMSとは違う、社会インフラとしてしっかりその県、地元に根を張った、中小企業ですが「スーパーマーケット」の存在感を良く伝えるTV番組です。
いまちゃん、いつもありがとうございます。
「秘密のケンミンshow」
私も見たことがあります。
ヨークベニマルのことを絶賛している内容でした。
とても嬉しく感じました。
「スーパーマーケットの存在感を良く伝えるTV番組」
本当にそうですね。
地元のニュースを欲している視聴者が増えているのでしょう。
ヨークベニマルは昔から、
「ベニマルさん」とさん付けで呼ばれる小売業でした。
地方のこういう企業にスポットがあてられるのは、
本当に良いことです。
嬉しい限りです。