夏のボーナスと全英オープンと桑田真澄の「七つの道」
はじめにお礼とお知らせ。
この商人舎ホームページの好評連載のひとつが、
今日で一応終了します。
「二宮護の物流業界の基礎知識」
「小売・サービス業の知られざる隣人」というヘッドコピーが付けられた。
小売業・サービス業の商品や原材料の供給を担当する。
大きな視点でいえば、サプライチェーンのインフラを構成する。
まさに流通業の一翼を担って、
小売業をサポートしてくれる。
この連載で基礎的な勉強をしたら、
次は『物流業界大研究』(二宮護著・産学社刊)にステップアップしてください。
小売業・サービス業、流通業の皆さんの必読書です。
読者の皆様、ご愛読を感謝いたします。
二宮さん、連載ありがとうございました。
今日も全国的に暑い。
東京、千葉、埼玉、群馬、愛知などが、
1日の最高気温が35度を超える猛暑日。
こういった日が続く時、
くれぐれも熱中症に気をつけたい。
お客様にも呼び掛けたい。
店頭に、毎日、
「今日は猛暑日」「今日は真夏日」「今日は熱帯夜」など、
掲げるのもよい。
店は社会的な存在だ。
その公器に、毎日メッセージを掲げる。
それも地域と暮らしへのメッセージ。
お寺の門前などに、
メッセージが掲げられているけれど、
あれです。
さて日経新聞一面に、
今夏のボーナス最終集計結果が出ている。
対象企業は655社。
平均支給額は、
昨年の夏のボーナスに比べて0.75%プラス。
70万1687円。
プラス分は675円。
昨年夏は前年比17.43%のマイナスだったから、
決して高い水準ではない。
その前の年も前年比マイナスで、
今回は3年ぶりにプラスに転じた。
小さな喜び、
ささやかな幸せ、
明日への希望。
3年ぶりのわずかのプラスでも、
明日への希望という観点からすると、
少しだけ良い兆候。
製造業は輸出好調企業がアップさせて全体に良好、
非製造業は相変わらずで、3年連続ダウン。
百貨店・スーパー15社平均は43万5296円で、
前年比マイナス9.48%。
この額の平均年齢37.1歳。
一方、その他の小売業23社平均は、47万4296円で、
マイナス2.82%。
こちらの平均年齢は、31.9歳。
外食・その他サービスは、24社平均、46万0827円。
35.5歳平均で前年比マイナス3.32%。
こうして見ると百貨店・スーパーの平均値が、
一番低い。
しかし残念ながら、いずれも50万円を切っている。
製造業で一番高い業種は、医薬品製造業の94万2068円。
2番目が自動車・部品製造業の77万8772円。
非製造業では、電力の85万0591円、
通信の78万0238円、
ガスの77万5984円と続く。
社会のインフラ企業が上位を占める。
しかも企業数が少なくて、寡占化された業種。
企業別にみると、
第1位の任天堂は168万0108円、
ここには労働組合がない。
100万円を超える企業が11社。
9位にキリンビール、
11位にアサヒビールが入っている。
さて、このボーナスの金額、
どう受け取るか。
ボーナス平均金額が少し高くなったから、
「明日への希望」でお客さまも喜んでいるはずだし、
それが商売繁盛への希望だととるか、
われわれの業種はまだまだ低いと嘆くか。
商売を仕事にするということは、
面白い心理現象を招く。
お客様のために、
小さな喜び、
ささやかな幸せ、
明日への希望を、
用意し、提供する。
そう考えたら、
他人のボーナスアップを喜べることになる。
不思議な仕事です。
さてニュースの中からスポーツネタを二つ。
ひとつはゴルフ全英オープン。
優勝者はルイ・ウェストヘーゼン。
南アフリカ共和国のプレーヤー。
さきのFIFAワールドカップでは、
主催国として初めて予選リーグ突破ならずだった国。
しかしそのサッカー熱が過ぎ去ろうとしているとき、
ウェストへーゼンによって喜びがもたらされた。
彼の心には、きっと宿っていた。
サッカーの無念さが。
この国からはゲーリー・プレーヤー、
アーニー・エルスという名ゴルファーがでた。
彼らを継ぐ新星の登場。
セントアンドリューズという聖地での勝利。
不思議なものを感じる。
南アフリカから次に、
黒人の優勝者が誕生したら、
これは、本当の時代が来たといえる。
何年かかるかわからないが、
プレーヤー、エルス、ウェストへーゼンの次は、
そう願いたい。
アパルトヘイトの時代に、
「名誉白人」と位置付けられて、
別の差別をされていたことにも気付かず、
まんざらでもなかった日本人の一人として、
私はそれを希求するものだ。
もうひとつのスポーツネタ。
朝日新聞の「オピニオン」一面を使って、
桑田真澄が見解を書いている。
早稲田大学大学院スポーツ科学研究科卒業、
現在、野球評論家。
大学院の卒業論文に書いたことを中心に、
「球児たちへ」と題した意見の開陳。
朝日新聞だから、これは明らかに、
夏の甲子園高校野球に対する前宣伝。
しかし桑田の言うことは良い。
7つの提言をしている。
「野球を好きになる七つの道」
第一、練習時間を減らそう。
桑田のPL学園は彼の提案で、1日3時間の全体練習で、
春夏連覇を成し遂げた。
第二、ダッシュは全力10本。
監督やコーチから命じられた100本ダッシュ。
桑田は、中抜きでやっていたらしい。
「ぼくはカウントする数字を抜きました。
3の次は5、5の次は7、10・・・」
第三は、どんどんミスしよう。
野球はミスするスポーツ。
ミスを怒るな。
第四は、勝利ばかり追わない。
商売にたとえると、売上げばかり追わない。
第五は、勉強や遊びを大切に。
「成長期の人には心身のバランスが必要」と説く。
第六、米国を手本にしない。
これなど教訓的。
米国を学ぶのは良いが、
手本にしてコピーばかりしない。
そして第七、その大声、無駄では?
練習や試合のときに、大声を強要する習慣がある。
特に野球では。
それを無駄と切って捨てる。
桑田真澄、痛快。
「球児たちへ」というタイトルが付いているが、
これは「指導者たちへ」向けたメッセージだ。
さらにこれは経営者たちへ、経営幹部、経営リーダーたちへと、
受け止めることができる。
私は、プロ野球に関しては、
アンチ巨人を貫いている。
しかしアンチ巨人派の私ですら、
桑田真澄の七つの提言、
賛同したい。
ひとつの道を究めようとする者は、
浅はかなところが全くない。
それがとてもいい。
暑い夏の今、
すがすがしい気分になった。
皆さんも、このすがすがしさを、
忘れずに。
<結城義晴>