実質実効為替レートとイトーヨーカ堂の「アンダー500㎡」新型店実験について
円高は86円で一服し、
株安も日経平均41円ほど戻し、
お盆休みに入った。
しかし、為替も株価も、
表面だけでは判断できない。
外国為替に関しては「円高でなく、ドル安」。
「実質実効為替レート」では、当然ながら円はそれほど高くない。
「実質実効為替レート」とは、
ユーロやイギリス・ポンド、人民元など、
世界58カ国の主要通貨に対する円の価値を、
物価変動の影響を取り除いて算出した指標。
2005年の実質実効為替レートを100とすると、
現在は103.24。
1995年、1ドル80円を切って史上最高値がついた。
その時点の実質実効為替レートは151.11だった。
15年前と比較すると、昨日の86円は、
実質実効為替レートでは3割以上も低いのだ。
株価に関しては、
3月時点と比べると、
16.6%の下落率。
これは主要20カ国の中で、
最も大きい数値。
私自身は株はまったく持たない。
これは日経新聞記者たちにも課されたジャーナリストのあり方。
しかし、日本企業の株価には関心がある。
日本全体の経済力の一端を物語るものであることは確かだからだ。
この面でも、あるべき姿を取り戻すまでは、
まだまだ、先は遠い道のりが待っている。
さて、セブン&アイ・ホールディングスが、今秋から
500㎡クラスの小型スーパーマーケットを始める。
これも日経新聞のスクープ。
昭和50年代に大規模小売店舗法が施行され、強化されたころ、
日本のスーパーマーケット業界には、
500㎡型が盛んにつくられた。
「アンダー500㎡」という流行語が生まれたが、
この言葉をつくったのは、誰あろう結城義晴。
だから今朝の「セブン&アイ新型店展開」のニュースには、
私は、妙な既視感を持つ。
今回の試みは、
①大都市の消費者に絞った。
すなわち立地と客層を限定した。
②500~700㎡の面積。
イトーヨーカ堂の5分の1、セブン-イレブンの4倍。
③生鮮食品・惣菜中心の品ぞろえ。
④3年で100店体制2000億円。
これは、1店年商20億円の計画ということになる。
500㎡、150坪で、年商20億円なら、
笑いが止まらない。
年商を別にすれば、イギリスのテスコが、
イギリス本国で展開するテスコ・エクスプレスと同じ考え方。
当分、「イトーヨーカ堂」の店名で展開するというが、
さてこの試み、どう判断するか。
昭和50年代のアンダー500㎡とは、
競争環境も、マーケットの状況も違う。
立地と客層を絞り込んで、
マーケティングとしては一定のセオリーに則っている。
しかし、断言しておこう。
1店20億円は実現できないに違いない。
このプロジェクトは相当に、
苦労を覚悟しておかねばならない。
昭和51年、イトーヨーカ堂は、
1500㎡(450坪)の新型実験店を始めた。
ヨークマート勝田台店。
しかしこのヨークマート・プロジェクトはずっと水面下にいた。
あの試行錯誤を思い出してみるべきだ。
こんなニュースが出た時、
渥美俊一先生なら何と答えただろう。
そう考えた。
きっと、即座に、言い切るに違いない。
「もっとやらねばならないことがあるはずだ」
私も、そう思う。
<結城義晴>