中国・上海訪問記[その2]外灘に登場した「金融牛」と「牛市・熊市」
民主党代表選挙の投開票が14日に迫った。
来週の火曜日。
菅直人と小沢一郎の一騎打ち。
各紙とも、自前の調査をかけて報道。
どこまで客観的かは、わからない。
国会議員票822ポイントは拮抗し、
地方議員票100ポイント、
党員・サポーター票300ポイントで、
「菅有利」と伝える。
塩野七生さんは、著書『日本人へ 国家と歴史編』で、
エッセイを書いている。
「拝啓 小沢一郎様」
民主党が政権をとる前の話。
アメリカもイギリスも、
フランス、ドイツも、
ロシアや中国も、
そしてイタリアさえも
政権が安定している。
その外にいるのは日本だけ。
「危機を打開するには、何をどうやるか、よりも、
何をどう一貫してやり続けるか、のほうが重要です」
まさしくその通り。
そこで、民主党が政権をとったと仮定して、
「私にはどうしても、選挙で民主党が勝ちさえすれば、
それがイコール日本の政治の安定になるとは思えないのです」
鋭い。
完璧に当たっている。
そのうえで小沢一郎氏に直言する。
「こうなると大手術をするしかないのではないでしょうか。
自民党と民主党の、今すぐの大連立です」
「それをやれるのは、小沢様、あなた御一人です」
「あなたも、私の作品を読んで下さるお一人と聞きました。
ならばおわかりでしょう。
古代のローマ人が、『勝って歩み寄る』名人であったことを。
あなたも、政治屋ではなくて政治家として、
名を残したいとは思われませんか?」
国民に、そして民主党地方議員や党員・サポーターに、
「今すぐの大手術」の緊急性がわかっているかどうか。
これが、問題ではあるが。
さて、一昨日から中国・上海。
ウェスティンホテルに宿泊して、
快適な視察をこなしている。
ウォルマート、カルフール、テスコ、メトロ。
地元のセンチュリーマート、シティ・ショップ。
そして中国人にも大人気のユニクロなどなど。
今日は週末なので、
そのレポートは来週月曜日からお届けするとして、
今日は「金融牛」のお話。
上海の観光メッカは、外灘(ワイタン)。
バンド(Bund)と通称される。
黄浦江と蘇州河の合流地点から南の黄浦江西岸地区。
大きな河川沿いに租界時代の西洋建築が並ぶ。
日没からその建築物がライトアップされ、
別世界のようだ。
その一角に人だかり。
近づいてみると、
巨大な牛の銅像。
「金融牛」
牛は、中国では「粘り強く、勤勉で、豊かなもの」の象徴。
まあ、現代の中国人も、ほとんどの人が、
牛のようになりたいと思っている。
古代、商売は物々交換から始まったとされるが、
最も早く等価交換の対象の一つとされたのが牛。
「貨幣の起源」のひとつともいわれている。
バンドの対岸の新都心・浦東区には、
上海証券取引所の地上27階、地下3階の建物がそびえている。
いわば、共産党一党独裁政権下における市場経済主義の象徴。
そのロビーにも、大理石の牛が鎮座する。
今年6月15日。
このバンドに登場したのが、この牛の銅像「金融牛」。
経済発展の願いが込められた銅像は、
全長5.2m、高さ3.2m。
作者は、Arturo Di Modica氏。
Modica氏は、イタリア系のアーティストで、
ニューヨーク・ウォール街の雄牛像「チャージング・ブル」も制作している。
上海市は、「外灘金融集積地帯」計画を推進中。
このバンドを含む黄浦江西岸に金融機関を集積させるプラン。
「金融牛は中国と上海の経済の活力を表現している。
外灘の金融文化のシンボルにしたい」
金融牛の色は中国人が好きな赤色。
尻尾は上向きに、跳ね上げられ、
頭は少しだけ上を向いている。
中国の証券界では、面白い用語を使う。
相場が上がり続けることを「牛市」といい、
下がり続けることを「熊市」という。
牛は、「粘り強く、勤勉で、豊かなもの」の象徴。
「貨幣の起源」のひとつ。
対して、熊は、下を向いてノソノソ歩くものの象徴。
私も、日本商業に「牛市」の到来を願って、
金融牛と一緒に写真。
この牛、なかなか使いこなすのは難しいかもしれない。
しかし、危機を打開するには、
「何をどうやるか」よりも、
「何をどう一貫してやり続けるか」
一貫してやり続けるものに、
「牛」は粘り強く、勤勉に従うに違いない。
では、みなさん、良い週末を。
私も、週末には帰国します。
<結城義晴>