本邦初公開「スチュー・レオナード」ヨンカース店の全貌、「まず商品に語らせよ」
Everybody! Good Tuesday!
「体育の日」までの三連休、
日本の消費はどうだったのだろうか。
商売の営業状態はどうだったのだろうか。
ロンドンの中心街ピカデリー・サーカス。
人の波はすごいし、夜になっても途切れない。
東京やニューヨーク以上の活気が感じられる。
日本やアメリカはまだまだ子供の匂いが残る。
日本が小学生で、アメリカはハイスクールくらいか。
イギリスは大人の世界。
そんな感慨を持ってしまうが、
いかがだろう。
それでも昨夜のレスター・スクウェア近辺。
ミュージカル劇場や映画館が集中するあたり、
イギリスがもっと活力を持っていた時と比べると雲泥の差。
やはり世界的な不況感はぬぐえない。
そのためか高級・低級のカジノが増えた。
東京市場でも円高というかドル安が進み、81円台。
円とユーロは113円。
東京株式市場日経平均株価は200円も下げて、9388円。
アメリカのスーパーマーケットマン達のように、
客数が減っても、売場の水準を維持して、
それでいてロス対策なども怠りなく、
いつでも元気に、お客の来店を待ちたいものだ。
さて今日は一日、ホテルの部屋で溜まった仕事に勤しむ。
ロンドンにいながら、もったいないとも思うが、
大英博物館やナショナルギャラリーくらい覗きたいものだが、
仕事の進み具合次第。
ブログは、昨日につづいて、ロンドン発ニューヨーク報告。
スチュー・レオナードの巻。
マンハッタンから約1時間、フリーウェイを走ると、
ヨンカース地区。
その山の頂にスチュー・レオナードはある。
あまりにお客が多いので、
この誘導道路を「スチュー・レオナード・ドライブ」と呼ぶ。
近づいてきました。
胸が高鳴る、ドキドキ、わくわく。
出身が酪農業なので、店舗はミルク工場を模してつくられている。
頂上に着くと、現れました。
スチュー・レオナード第3号のヨンカース店。
創業者スチュー・レオナードは、1968年まで、
各家庭に牛乳配達をしていた酪農家。
1969年12月、7人の従業員を雇い小さな酪農場店「クローバー ファーム」を設立。
2台のレジと7アイテムを扱うだけのデイリーストアだった。
ただし新鮮な牛乳を販売する自販機が設置されていた。
この店は1977年には、20レーンの電子レジを導入。
145人の従業員を雇う大繁盛店になっていた。
その後、インストアベーカリー売場を導入し成功。
焼きたてのフレッシュなバター・クロワッサンやチョコチップ・クッキーが人気となった。
さらにバーベキュー、サラダバー、魚など、次々に部門を拡大。
1988年、ニューヨークタイムズから、
“The Disneyland of Dairy Stores.”
「まるでディズニーランドのような店」と称賛される。
1992年には、食料品店として1店舗当りの売上高世界一として、
ギネスブックに認定される。
そして1999年、ここニューヨーク州北部郊外ヨンカーズに、
12.5万平方フィートの3号店をオープン。
いつも店舗前には星条旗が掲げられ、はためいている。
スチュー・レオナードはアメリカの豊かさと楽しさを象徴する店なのだ。
10月は「ハロウィン」一色のプロモーション。
所狭しとパンプキンが並ぶ。
その規模、世界最大といっていいほど。
10月のハロウィン・プロモーションの王者は、
決まってスチュー・レオナードだ。
パンプキンだけではない。
ハロウィン人形も。
そして超有名なポリシー・ロック。
創業者理念が掲げられた「policy rock」。
この理念に基づいて、顧客満足を使命にしている。
意見箱への投書には24時間以内に対応する。
ポリシー・ロックの後ろにリカーショップ。
ニューヨーク州の法律で、
食品と酒は同じ売場で売ってはならない。
店舗の入り口を入ると、右奥で試飲をしている。
笑顔でワインをテースティングさせてくれた。
店舗前面のテントでは、もう売場が始まっている。
以前は、ここはプロモーション・スペースだったが、
不況期に入って、貪欲に売場拡充を図った。
もちろん、どんどん商品が変わるシーゾナル売場だが。
まずは、リンゴ売場。
そしてオレンジなど、果物で季節感を出す。
オレンジ、プラムなどカラフルな商品を並べて、
市場のイメージをつくる。
店舗に入る直前には、アイスクリーム・コーナー。
もともと牛乳屋さん、だからアイスクリームはとびきりおいしい。
さあ、いよいよ店内に入って行こう。
売場は迷路のように曲がりくねり、
完全にワンウェイコントロールされている。
陳列は商品を前面にアピールして見せ、
商品の持つ色彩やデザインを強調。
「商品に語らせる」
これはフェアウェイ・マーケットと同じ。
優れた店の根本思想は同じになる。
店内では至る所で、効果的な販促のための試飲・試食を多用している。
バックヤードをガラス越し、あるいはダイレクトに見せることで、
親近感やエンターテイメント感をアピールしている。
そして視覚、聴覚、五感すべてに訴えるエキサイティングな売場づくり。
まず、プロモーションの果物コーナー。
「今日の果実」というコンセプト。
その対面にはコーヒー売場。
これでおわかりだろう。
スチュー・レオナードは、朝食メニューから売場が始まるのだ。
今日の果実の隣に新鮮ジュース、
そして「フルーツ・カップ」が続く。
カットフルーツをカップに入れて売っている。
そしてオーガニックの簡便サラダコーナー。
本格サラダ材料コーナーに続く。
便利性商材が先に来て、
そのあとで素材が来る。
購買頻度が高い順にカテゴリーが並んでいる。
通路上の島陳列は「シーゾナル商品」。
スポット商品と考えればいい。
関連販売だったり、意外性の商品だったリ。
サラダとコーヒーの次は?
そう、主食、パンの売場。
ユダヤ人のパン「ベーグル」。
そのパンプキン・ベーグル。
ベーグルだけではもちろんない。
世界中のパンが、品揃えされている。
なにしろアメリカ合衆国は多民族国家。
バター・クロワッサン。
この売場の上には、天井から鉄棒をする人形が動いている。
焼き立てパンから、クッキーへ。
そしていよいよ、メイン売場のひとつ、青果部門へ。
プロモーション果物があって、
コーヒーがあって、
写真にはないが花売場があって、
サラダがあって、
ベーカリーがあって、
やっと青果部門に入る。
これ、アメリカのスーパーマーケットの部門構成そのもの。
スチュー・レオナードはワンウェイコントロールだが、
オーソドックスなスーパーマーケットの基本を守っている。
それを読み解いてほしい。
この不況で、土曜日というのに客数は少ない。
果物はリンゴから。
店頭のテントでリンゴを売っていたが、
強調すべきカテゴリーは何度でも売り込む。
カゴ盛りの野菜たち。
レタスとペッパーの売場。
カラフルだ。
ワンウェイの売場はくねくねと曲がっている。
山登りをするとき、あるいは綴れ折りの坂道のよう。
曲がるたびに新しいくくり、コンセプトが現れる。
そのコンセプトが連続している。
全体でこの店が提供する生活が浮かび上がってくる。
葉物野菜もカゴ盛り。
テレビ画面で生産者が語る。
いかにしてつくるか、安全か、美味しいか。
1ポンド1ドル99セントのプラム売場。
レモン、オレンジと続く。
左手には、カゴ盛りの野菜。
ナスやキュウリ。
メロン、グレープフルーツ、オレンジ。
SKUは多くはない。
1品目当りの陳列量が多い。
スチュー・レオナードは単品大量を原則にしている。
その意味でもスーパーマーケットの基本に忠実な店だ。
最後に、フルーツとベジタブルの簡便コーナーがふたたび登場。
そして最後の最後は、バナナ。
有名なバナナ娘が歌う。
ボタンを押すと、歌ってくれる。
そのボタンも擦り切れるほどにリクエストが多い。
青果部門の終わりは、根菜類。
このあたりは、異論もあろうが。
同じワンウェイコントロールのHEBセントラルマーケットでは、
根菜が先に来て、最後の最後にバナナだった。
これはポリシーの違い。
鶏合唱隊が楽しく歌う。
青果部門から精肉部門へ。
セルフ多段ケースで、品揃えから入る。
コーナーには上部にぬいぐるみ人形が。
セルフケースに続いて、対面ケースで売れ筋が並ぶ。
イタリアンソーセージ売場。
顧客が売場にアクセントがほしいと思ったころに、
試食のコーナーが現れる。
そこでつい、手を伸ばして、試食する。
店を出る頃には、おなかいっぱい。
これを「サンプル・ライフ」という。
しかし、それでも顧客は今夜のメニュー、明日の商材を購入してくれる。
冷凍食品はリーチインケースで売られる。
売場の中央に衣料品が島陳列。
シーフード・サラダやロテサリーチキンの売場がみえてきた。
バナナ娘に続いて、
オーム船長が歌う。
通路上には冷蔵ケースの島陳列も。
ここは変化させる売場。
時には売り切れ御免のシーゾナルアイテムが売られる。
そして曲がり角に、鮮魚の対面。
上部のパネルには大きな魚のデコレーションがある。
鮮魚から、次は乳製品へ。
スチュー・レオナードが牛乳や出身であることを思い知らせてくれる売場。
左はオーガニック・ミルク。
牛乳売場の続き。
ソフトドリンク売場が繋ぎで、奥にバター売場がみえる。
そのドリンク売場では、
コカコーラ、ペプシコーラが並んでいる。
バター売場の上部にはまた、楽しいミュージックを奏でるぬいぐるみ。
曲がりくねって、次のコンセプト、次のカテゴリーに。
向こうにチーズの売場がみえる。
間をつなぐのは水の売場。
ポーランドの水。
コーナーに、ぬいぐるみ人形。
アペタイザーの売場。
ライス・プディングやピクルス、ロマノチーズなどが、
コーナーづくりされている。
ミートボール5ドル49セント。
圧巻のスープ売場。
様々なスープがカップに入れて売られている。
買って帰って温めるだけ。
「凄い」の一言。
寿司売場は独立している。
並んでいる商品自体は、ベンダーから供給されるもので、
さして大きな違いはない。
奥に、最後のコンセプト・サービスデリの売場がみえる。
「ヘルシー・ステーション」とネーミングされたビュッフェ・スタイルの売場。
そしてHotデリ。
ミート・ラザニアやミート・バーベキューなど、
好きな品を選ぶことができる。
「ウィークリー・スぺシャル」と名付けられたコーナー。
HotデリとColdデリが選べる。
1週間ごとにメニューが変わり、
「今週のお薦め」料理が提案されている。
最後に、「キッズ・ミール」から「ピザ」へ。
キッズ・ミールは子供用の食事。
子供客も多いスチュー・レオナードらしい丁寧な提案。
右手のリーチインケースはアイスクリーム。
左手はライス・ケーキ。
真ん中に島陳列で、揚げたてのポテトチップスが売られている。
最後は、なぜかドライフルーツとミックスナッツ。
これは、店を見に来ただけの人々へのお土産売場。
何にも買わなかった人も、
ここでは「買ってね」の意思表示。
そしてぐるりと回ってレジへ。
レジの向こうは、入り口で、
右手にコーヒー売場がある。
不況のあおりで、やや閑散とした観があるが、
最後のおもてなしのレジが、元気よくて、よろしい。
さて、スチュー・レオナードの全貌をお届けした。
本邦初公開。
いかがだったろうか。
小手先の楽しさづくりではない。
小手先のプロモーションでもない。
小手先の売場づくりでもない。
メニューの提案が、
「これでもか、これでもか」となされる。
毎週のように商品が変わり、売場が変わる。
スチュー・レオナードは、まず、
こんな生活を送ってほしいという「願い」を持っていて、
それを店と商品に表している。
そこに知識商人たちの努力の粋が集まる。
Rule1 The Customer is Always Right!
原則1 顧客はいつも正しい。
Rule2 If the Customer is Ever Wrong, Reread Rule1.
原則2 たとえ、顧客が間違っていると思っても、原則1を読み返せ。
ポリシーが売場をつくり、店をつくる。
それを私たちに教えてくれる店。
スチュー・レオナードに、心より感謝。
(つづきます)
<結城義晴>
3 件のコメント
結城先生、本日も、ありがとうございます。
スチュー・レオナード見学をご一緒させて頂きました。
ポリシーが売場をつくり、店をつくり、ヤル気の集団をつくり、
企業をつくるのですね。
それを私たちに教えてくれる結城先生に。
心より感謝・・・
結城先生に「長寿と繁栄を」
結城先生 ありがとうございます。
スチュー・レオナードの紹介ブログはただ「圧巻!!」の一言につきます。
食文化の多様性などでは括れない、米国の食文化の広さと深さを感じました。
日本でも 次の世代へ「日本の安全で豊かな食文化」を伝える企業が出現すること
願ってやみません。
藤井直之さま、いまちゃん。ありがとうございます。
久しぶりに記者に徹して、写真紹介してしまいました。
スチュー・レオナードの素晴らしさ、
ご理解いただけて幸せです。
この店に限りません。
もっともっと、オリジナリティを発揮した店があります。
フェアウェイ・マーケットもそうですし、
ゼイバーズも、ガーデン・オブ・エデンも。
ウェグマンズ、ホールフーズ、トレーダージョーは、
その中でもフォーマットが完成された企業です。
だからチェーンオペレーションができるのです。
私たちは謙虚に謙虚に、優れた店に学び続けねばなりません。
あれはだめ、これもだめ、こちらはいい、なんて、
僭越なことを考えてはいけません。
すべてに学ぶ。すべてに、ありがとう。
この心持ちが大切です。