パリ市内にオープンしたカルフールの最新コンパクト・ハイパーマーケット
日本銀行の金融政策決定会合で、
2010年~2012年の国内総生産が討議された。
2010年度から2011年度に関しては、
実質成長率と消費者物価は下方修正され、
2012年度成長率は前年比でプラス1%台との予測。
これによってゼロ金利も、
長期化する可能性が高まりそうだ。
なんとも、厳しい環境が続きそうで、
昨日、このブログでイオンの中期経営計画を問題にしてが、
その基本認識に関して岡田元也社長がコメントしたことが、
2010年代の前半は当たりそうだ。
「これからの10年の環境変化は、
これまでで最も激しいものになる」
さて今日も、「ロンドン・パリ探訪」カルフール編の続き。
カルフールの最新店大繁盛。
これは最大店舗「モンテッソン店」以上の凄さ。
なぜか。
競争がないところ、
大型店舗がないところに、
最新のハイパーマーケットをオープンさせたから。
このレジ付近の混雑ぶりを見てほしい。
カルフールは、テスコ同様に、
大きく4つのパターンのフォーマットを展開している。
フランス国内で、21.7%のシェアを有するが、
これもテスコ同様に「クリティカル・マス」を突破している。
そしてこのように寡占するにはマルチ・フォーマット戦略をとらざるを得ない。
まずハイパーマーケットが231店舗で、224億ユーロ。
スーパーマーケットは987店舗で、139億ユーロ。
コンビニエンスストアが3165店で、71億ユーロ、
そして小型ハードディスカウンターが、928店舗で27億ユーロ。
この中で、ハイパーマーケットが半分以上を占める。
カルフールにとって、便利性総合小売業こそ、
収益性も高いし、その存在価値をアピールするフォーマットなのだ。
最新店のオートイユ店は、パリ市内にオープンしたハイパーマーケット。
フランスには「ラファラン法」という出店規制法がある。
「1996年7月5日法」ともいわれ、
これはやはり厳しい営業規制法だった「ロワイエ法」を修正したもの。
1975年にはフランス国内にハイパーマーケットが3151店あった。
それが1995年には3倍近い8771店に増えていた。
ラファラン法に記されているその目的。
「商業と手工業は価格および提供するサービスと商品の質に関し、
消費者の需要を満足させることをその役割とする。
雇用の発展に協力し、国内経済の競争力を高め、
都市および農村生活を活気付け、生活の質の向上に貢献しなくてはならない。
同時に、商業設備の近代化に貢献しなくてはならない」
小売商店の新築、または既存建築物の改造は、
300㎡以上の販売面積をもつ小売商店の開店・拡張には、
県商業設備委員会に対して許可申請が必要とされる。
当然ながらハイパーマーケットはもとより、
スーパーマーケットも規制対象となる。
この法規は、第1に小売店舗の新築、改造だけでなく、
ホテル、大規模映画館、店舗付きガソリンスタンドをも対象としている。
第2に県商業設備委員会の地元議会議員代表数を削減している。
第3に、出店に伴う影響調査の強化を挙げている。
そして第4に、違反に対する罰則の強化がある。
従って、パリ周辺ではほとんどといってよいほど、
新店舗はつくることができなかった。
不可能に近いこと。
それを可能にすると、
ものすごい繁盛店ができる。
それがオートイユ店。
パリ市は東京の山手線内ほどの広さを持つ。
そのパリ市外周道路の際に、この店は出店した。
ワンフロアの細長い店舗で、上は公園。
円形の入口をはいると、もう客の熱気が伝わってくる。
天井は低く、店舗としての条件がいいわけではない。
入口をはいると、シーゾナル・プロモーション売場。
飲料が大量陳列でディスカウントされている。
コカコーラなどこのあり様。
レジのところには、長い行列と人だかり。
土曜日の夕方ということもあるが、
レジには人がたまって、
その周辺は動きがとれないほど。
モンテッソン店も凄かったが、
この店も見てください。
繁盛とはどんなものだったか。
日本の小売業が忘れてしまったものがある。
定番売場は、まず花卉の売場から。
青果部門は鮮度の良い商品が並ぶ。
ワンフロア細長いハイパーマーケットでも、
青果部門は一番最初に来て、一番広い。
世界共通の現象。
トロ箱、クレート陳列は当たり前。
フォークリフトで運んで来て、そのまま売場に並べるだけ。
延々と青果部門が続く。
鮮魚は氷を敷き詰めた上に商品をきれいに並べる。
魚はセンスよく、しかも市場形式の売り方を採用している。
鮮魚から多段ケースの精肉へ、
そして対面精肉売場へ。
店舗の一番奥に精肉対面コーナー。
ここも畜種別、用途別に仕切られている。
1990年代の店舗からすると、
ずっとあか抜けていて、
さすがフランスという雰囲気づくりがなされている。
精肉よりも力が入っているのがデリ売場。
低い対面ケースの前に店員が立って、
客と会話しながら売り込む。
乳製品、チーズの売場も低い対面コーナーに、
商品がセンスよく並べられ、
顧客の注文に応じて商品提供される。
ホットデリ売場も、人気の的だ。
ベーカリーは巨大な売場。
フランスパンが、材木のように縦に並べられて売られている。
パッケージ・デリ売場。
電子棚札のデリ売場2は最下段の下のケースの縁に関連陳列。。
ピザ生地売場の下段にはコーラの関連陳列。
冷凍食品はセミ・リーチインケースを採用。
店舗が狭いことをずいぶん意識している。
それでもグロサリーは十分なスペースをとっている。
モンテッソン店の1万2000坪ほどに大量陳列はしていないが、
ハーフサイズ・ハイパーマーケットとして、
実は非常に買いやすい売場となっている。
ビン詰め、缶詰めなども絞り込みつつ、
整理された売場だ。
ワイン売場は、逆に品揃え豊富。
パリ市民の中の富裕層向けの店舗となっている。
水は壁面沿いで、大量陳列。
よく売れている。
水の補充風景。
飲料売場はどんな店でも十分なスペース。
そしてこの店でも搬入口が直接設けられている。
搬入口は1カ所ではない。
ここからフォークリフトで単品大量に搬入され、
単品大量に並べられ、
単品大量に販売される。
それがハイパーマーケットのコンセプト。
しかしパリ市内のハイパーマーケットは、
そのうえで絞り込んだ品ぞろえと、
ハイクオリティの商品ラインを導入している。
まさにコンパクト・ハイパーマーケット。
ウォルマートが、盛んに実験しているコンパクト・スーパーセンター。
それがパリ市内のカルフールにおいても展開されている。
こちらは実験ではない。
厳しいラファラン法の規制の中で、
出店しさえすれば確実に、
巨大な売上げをはじき、莫大な利益を出す。
それが、このオートイユ店。
小売業は、一に立地、二に立地、
三四がなくて、五に立地。
そのうえで競合がない。
こんな金城湯池を生みだすことができるのだということを、
この店は教えてくれる。
(まだまだつづきます)
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2 件のコメント
結城先生へ ありがとうございます。
カルフールのオートイユ店は驚きました!! 建物の上が公園になっているとは
「こんなのあり」とも思いますが、一に立地、二に立地と聞いて納得です。
近年ここ九州でも あるドラッグストアーが九州の離島(壱岐、対馬、種子島等)に次々と出店しました。
九州の離島は業種店が定価販売をしている市場です、そこにドラッグストアーが進出したので、超繁盛が次々と誕生していきました。
しかし 直ぐに競合のドラッグが先のドラッグの横に次々と出店(離島の商業集積は限定されるため。)していきました。
閉鎖商圏のパイを後で出店した2社~3社でに分け合う結果となり、超繁盛店は直ぐに
標準店になりました。
いまちゃん、その通り。
閉鎖商圏に強い業態が登場すると、
あっという間に超のつく繁盛店となります。
しかし同業が参入すると、すぐに普通の店となります。
フランスのラファラン法はそれを許しません。
だから何とか政治力を発揮してでも、閉鎖商圏に出店すると、
大きな利益をあげつづけ、それが海外進出の原資となります。
しかし、閉鎖商圏での殿様商売に慣れきってしまうと、
海外商圏での激しい競争には耐えられません。
最初の段階の競争環境が甘く、
一気にクリティカルマスを突破してしまった国では、
カルフールはまた、フランスと同じ状況を作り出します。
それがカルフールの米国や日本、韓国での撤退の原因、
そして南米や東欧での今のところの成功の理由です。