小売業「実践躬行のマネジメント」と「上げる・下げる・一定に保つ」三志向経営
深夜から夜明けの時間帯に勃発したニュース一色。
「尖閣諸島沖中国漁船衝突事件ビデオ流出」
海上保安庁が記録した映像が、
インターネット動画サイト「You Tube」に流出し、
それがテレビ各局で報道された。
考えてみるとテレビの方がはるかに大放出。
中国国内を除く世界中に氾濫してしまった。
東海大学海洋学部教授の山田吉彦さんは、
電話に出づっぱりで生解説。
こうなると、政府のこれまでの対応が、
トンチンカンなものと映る一方、
You Tubeに投稿した登録名「sengoku38」なる人物が、
ある種のヒーローとして、国民の喝采を浴びることとなってしまう。
「sengoku38」とは明らかに、
仙石由人官房長官を揶揄したものだが、
こういった「鼠小僧的現象」は、
あまり健全なものではないと思う。
「あなたの会社でこういった事件が起こったら、
どう思いますか?」
さらに朝日新聞一面トップでは、
「西友元社外取締役」のインサイダー取引疑惑事件。
2007年に、西友はウォルマートによって、
株式の公開買い付けで買収された。
その公開買い付け前に、
社外取締役の一人が家族に西友株を買わせ、
公開買い付け公表後に売却して、
1000万円程度の利益を得た。
絵に描いたような「インサイダー取引」。
インサイダー取引自体、卑怯千万だが、
1000万円の「はした金」もひどく情けない。
私も非常勤取締役や企業顧問の仕事をしていて、
そういった情報に触れることも少なからずあるが、
ここは、ドラッカーの言う「integrity」の問題だ。
ちなみに私は、株式取引はしない。
確実に利益が出ることがわかっていても、
株式による利得には、一線を引いている。
ジャーナリストの矜持である。
さて今日は、東京品川。
ロンドンのリーゼント・ストリートのような品川駅。
その南口を出ると、東京コンファレンスセンター品川。
Inforum Japan 2010が開催された。
主催は日本インフォア・グローバル・ソリューションズ㈱。
登録参加者は650人。
講演協力ユーザー企業の中に、
小売業・サービス業がある。
㈱エコス、㈱JIMOS(小売流通業パネルディスカッション)
㈱ファーストリテイリング(勤怠管理システム事例)
私は、特別講演と小売流通パネルディスカッションのモデレーター。
午後、1時30分からの特別講演は、
「流通小売業・実践躬行のマネジメント」
マネジメントの定義から入って、
時流の経営戦略と週次の実行・改革が核心テーマ。
前者が”Doing better things”
後者が”Doing things better”
両者のパフォーマンスの最大化がマネジメントそのものとなる。
さらに「think small」の考え方と、
クォータリー&ウィークリー・マネジメントの提唱。
とりわけて、現場に関しては、
ウィークリー・オペレーションの効用は計り知れない。
すべてのセッションが45分単位で、私の講演も45分。
私には当然、足りない時間割で、最後は例によって、
早送りレクチャーとなってしまったが、
お許しいただきたい。
レジュメに丁寧に書いておいたので、復習に使ってほしい。
私の主張は、現場のリーダーたちも、
貸借対照表による経営を実践してほしいということ。
「売上げ上げろ」「粗利を上げろ」、
あるいは「売上げ上がった・粗利上がった」の大合唱。
これを「売上至上主義」と称する。
もちろん、それも大事で、
それを無視しても良いとは言わない。
さらに進めれば、
営業利益を基準にした「利益経営」も必須だ。
しかし、さらにさらに、そのうえで、
人材を含めた経営資産を、
いかに有効に活用するかというマネジメントの基本を、
リーダーには忘れてほしくはない。
「人が大事だ、人が主役だ」と言葉だけ繰り返しても、
「実践躬行のマネジメント」にはならない。
数字という厳然とした触媒を使って、
バランスシート経営を実践する。
そうしなければ、
「躬行」すなわち「口で言う通りを実際に行うこと」にはならない。
指標には三通りのものがある。
故渥美俊一先生の貴重な教え。
「上げる指標・下げる指標・一定に保つ指標」
体育会系の経営は、「上げろ・上げろ」志向になりやすい。
ニヒルな経営は、「下げろ・下げろ」志向に陥りやすい。
あるべきは、
「上げる・下げる・一定に保つ」三志向の経営。
この中で「一定に保つ指標」がとりわけ大事。
なぜならば、見落とされがちだから。
例えば、労働分配率は、
一定に保たれねばならない。
そうしなければ、
「店は客のためにあり、
店員とともに栄える」にはならない。
そういったことが、例えば「予算・実績」管理には、
貫かれていなければならない。
私の特別講演の後は、
パネルディスカッション。
「経営と現場双方が利益を意識して活動する経営管理とは?」
パネラーは、三人。
㈱エコス取締役経営企画室長兼情報システム管掌の三吉敏郎さん(写真右)、
㈱JIMOS執行役員の中川昌史さん(中央)、
そして、㈱ジール代表取締役社長の山本秀典さん(左)。
エコスはご存知、首都圏のスーパーマーケット・チェーン。
JIMOSは福岡に本拠を置く大手通信販売企業。
ダイレクト・マーケティング・カンパニーといったほうがいい。
ジールは、情報システムのビジネスインテグレーター。
エコスとJIMOSのシステム開発を担当した会社といったほうがわかりやすい。
これも45分のセッションで、とても語りつくせない内容だったが、
皆さん、役割を十二分に意識して、
簡潔にして的確なコメントを発する優秀なパネラーを演じてくれた。
心から感謝したい。
聴講していただいた皆さんにも、ご清聴を感謝したい。
何しろ、今月の商人舎標語は、
「朝に希望、昼に努力、夕に感謝」
パネルディスカッションも終了して、
司会の㈱inforの小泉潤一さんも加わって写真。
会場には、立教大学大学院・結城ゼミの猪股信吾君も参加してくれて、
しっかり勉強していた。
こういうのは、とても嬉しい。
「実践躬行のマネジメント」、
そして「上げる・下げる・一定に保つ」三志向経営。
今日は、とても大切なことを語ったし、
語りつつ、あらためてこのことの重要性を認識した。
<結城義晴>