コーネル・ジャパンの荒井伸也・大久保恒夫・廣田正講義
ゼネラルモーターズが、再上場。
20世紀のアメリカの象徴の復活。
ウォルストリートに「GMのエンジン音」が響いて、
「アメリカの自信」が蘇りつつある。
1月から9月までの利益が3500億円と完全に復調。
しかし、国がかりの再建は、
国家と企業、企業と国民の関係性を、
私たちに考えさせることとなった。
私たちは、考えねばならない。
よくよく、考えねばならない。
昨日は、コーネル大学RMPジャパン第3期11月の2日目。
東京・市ヶ谷のお堀沿いの法政大学ボアソナードタワーも、
晴れ晴れとした容姿。
25階の私たちの教室の窓の下に、
東京の街が広がる。
午前9時、荒井伸也首席講師の講義。
「スーパーマーケット原論1」
荒井先生のこの講義も、
コーネル・ジャパンを特徴づける内容。
すなわちあくまで論理的に、
あくまで問題解決的に、
スーパーマーケットを考察し、
企業や事業、仕事を考える姿勢。
荒井先生の講義は、ダイエーの大型店は、
果たしてスーパーマーケットだったのか、というところから始まる。
林周二『流通革命』やダイエーと西友の赤羽戦争。
セルフサービスとチェーンストア。
それらの本質を解き明かしつつ、
「スーパーマーケットとは何か?」を明らかにする。
その間に「産業の理論」と「小売業」の関係性、
「小売業の業態」の社会的機能に基づいた分析。
毎回聞くけれど、毎回、目からうろこ。
荒井先生のスーパーマーケット論は、
「日本における小売業発展の特色」を時系列に整理し、
完璧な定義に至る。
「『家庭内で食べる食』を総合的に品揃えしている店」
この講義は、今後も様々な人に聞いてもらいたいと思う。
次の講義は、大久保恒夫先生。
㈱成城石井前社長にして現在、セブン&アイ・ホールディングス顧問。
その大久保先生は、コーネル・ジャパンの第1期生。
そのことを紹介する。
大久保先生の講義テーマは、
「スーパーマーケット・マネジメント」
「小売業にとって一番大事なのはマネジメント」
「小売業の目的はお客様に喜んでいただくこと」
「挨拶を良くするだけで5%経常利益が上がる」
「実行のマネジメント」こそ大久保先生のモットー。
これまでも何度もいっしょにセミナーを開いたり、
講義をお願いしたりした。
これまでの講義や講演も秀逸だった。
しかし今回はその中でも最高だった。
第3期生は幸せだと思った。
「実行の第3期生」が「実行のマネジメント」の、
最高の講義を聞くことができたからだ。
大久保さんの心境は、
「志定まれば、気盛んなり」
私はそう読み取った。
あっという間に昼食。
窓の外は小春日和。
午後1時15分、講義再開。
「ディスカッション」とタイトルしたが、
荒井先生、大久保先生への質疑応答。
私が司会を務め、
もちろん私も発言する。
すぐに質問が出始めた。
大久保先生が淡々と、しかし的確に答える。
荒井先生も経験に基づきつつ、
総括的に答える。
さらに質問が広がる。
論点が変わる。
大久保先生が答える。
荒井先生が解説する。
副学長が整理する。
今度もあっという間に90分は過ぎた。
荒井先生と大久保先生に共通すること、
それは21世紀の日本のスーパーマーケットや小売業にとって、
不可欠の経営機能である。
大久保先生は、来年1月の湯河原合宿での講義が最後となる。
来年からはしばらく教壇を降りる。
心から感謝しつつ、固い握手。
3人の質疑応答の後の最後の講義は、
「双葉の前に双葉なく、双葉の後に双葉なし」の、
菱食最高顧問・廣田正先生。
テーマは「食品卸売業からの提案」
廣田先生は、1955年に社会人となった。
食品の中間流通に属する。
その7年後に林周二著『流通革命』が大ブーム。
しかし、卸売業や中間流通の社会的機能を果たしつつ、
廣田先生は会社を1400倍に成長させた。
「メーカーにとって卸売業が顧客ではない。
卸売業にとって小売業が顧客ではない。
メーカーも卸売業も小売業も、
コンシューマーが共通の顧客だ」
最後に「食品流通業の先輩として」5つの提言。
1.成長と膨張は違う(田島義博)
2.不満足領域の継続は新産業を生む。
3.企業の利益はその企業が果たした社会貢献の対価である。
4.「脱皮」には「単純脱皮」と「変態脱皮」がある。
5.構造変革期にはリーダーの役割がより重要。
「志」を持った指導者になってほしい。
素晴らしい講義だった。
「食品産業の将来を支える人たちに、
ミッションを与えてほしい」
私のお願いは十二分に果たされた。
75分の講義が終わると、
質疑応答。
真っ先の質問は、国分㈱千木良治さん。
そして三井物産の小竹経一さん。
千木良、小竹、両君が質問したところが、
何よりも、いい。
廣田先生も、質問に丁寧に答えてくださった。
コーネル・ジャパンは食品産業全体のための、
教育機関であることが証明されたわけで、
私はことのほか嬉しかった。
廣田先生にも、心から感謝したい。
講義が終わるころ、
窓の外の「スカイツリー」も喜んで、
私たちのクラスを覗きこんでいるように見えた。
ゆうぐれの富士も、
美しかった。
荒井先生が最後につぶやいた。
「こんなにいい授業はそうそうない。
でも最初からこんないい講義ばかりで、
来月から見劣りしないだろうか」
荒井先生が、ほんとうに心配されている様子に、
私はほほえみを禁じえなかった。
コーネル大学RMPジャパン、
快調です。
「朝に希望、昼に努力、夕に感謝」
<結城義晴>