「論理」と「事実」の協働と、コンビニ・総合スーパーの10月販売統計
先週のコーネル大学RMPジャパン第3期の講義。
荒井伸也先生の時間の中で語られたこと。
「学問は突き詰めると論理ということです」
私は、はっとした。
荒井先生はコーネル・ジャパン首席講師。
サミット㈱社長、会長を歴任され、
現在、作家であり、オール日本スーパーマーケット協会会長。
さらにコンサルタントとしても活躍されている。
斯界随一の「識者」荒井先生の見識。
その表現力。
恐れ入った。
「産学協働」が盛んに叫ばれているが、
これは「実務」と「論理」の融合である。
実行したら、検証し、論理化する。
この論理化が、次の実行に役立つ。
一方、ジャーナリズムは「事実」を伝える。
この事実も極めて重要。
通常、事実は当事者にしかわかりにくい。
しかし当事者は自分の「事実」しか経験していない。
だからジャーナリズムは、
多くの事実を集めてきて、
それを正確に伝える。
ジャーナリズム、学問、どれも役割が違うということだ。
役割が違うから、どれもが大切な機能ということになる。
実務家とジャーナリストと学者の協働は、
だからこそ重大な意味を持つ。
ここで、荒井先生の認識を借りると、
「学問を否定する者は、
論理を否定していることになる」
ジャーナリズムを否定することは、
「事実の集積を否定することと同じである」
そして実務を否定することは、全否定となって、
論理は矛盾し、事実はゆがめられる。
ピーター・ドラッカー先生は、
ドイツでジャーナリストとしてスタートした。
その後イギリスでは投資銀行に勤めつつ、新聞記者でもあった。
やがてアメリカにわたって学者となった。
学者として研究を続けつつ、
コンサルタントとしてゼネラルモーターズから依頼を受け、
その実務体系を調べた。
そして膨大な報告書を書いた。
それが第3作「企業とは何か」に結実する。
すなわちジャーナリスト、学者、コンサルタント、
三足のわらじをはいていた。
ここでいうコンサルタントは、
実務指導する者ではない。
その会社の診断をする役割を担う。
端的にいえば「医者」のようなものだ。
商業の世界では故渥美俊一先生がそれだった。
渥美先生は読売新聞のジャーナリストとして、
キャリアをスタートさせ、
コンサルタントに転身した。
診断には論理性が不可欠だ。
だから学者兼コンサルタントは多い。
商業の世界では故川崎進一先生がそれだった。
渥美・川崎、お二人を合わせたようなキャリア、
それがまさにドラッカー先生だった。
重要なことは、
論理と事実からスタートしたということ。
もちろんどんな役割にも、
理想形と現実形がある。
つまり理想形の学者やジャーナリスト、
コンサルタントや実務家がいると同時に、
現実形のそれらも存在する。
理想的なコンサルタントと現実形の学者を比較して、
どっちがいいとか悪いとか評するのはお門違いというもの。
逆に現実形のコンサルタントと理想形のジャーナリストの比較も、
意味がない。
論理的に話を進める場合、
理想形と理想形の比較がいい。
そうすると、それぞれの役割が明確になって、
別々の役割の協働や連携も理解できる。
さて、10月の販売統計。
コンビニと総合スーパーから発表された。
まず日本フランチャイズチェーン協会発表のコンビニ統計調査月報。
既存店の売上高は前年同月比マイナス5.9%。
タバコ景気が終わって、4カ月ぶりダウン。
もともとコンビニはずっとダウントレンドにあった。
それが現れてきたということ。
店客数マイナス4.4%、
平均客単価マイナス1.5%。
店舗数は1.7%増えて、4万3268店。
1カ月の来店客数は2.6%減って11億5065万人。
平均の客単価はマイナス1.1%の558.8円。
コンビニの客単価559円は覚えておかねばならない数字のひとつ。
みなさんも覚えておいてください。
いろいろなことの基準のひとつになる。
一方、日本チェーンストア協会の発表。
この協会の会員企業62社、7872店。
そのうち、売上高の49%が、
8社の総合スーパー企業によって占められている。
そこに食品スーパーマーケットやホームセンター、
ホームファッションチェーン、100円ショップなどが加わる。
つまりは体制は総合スーパーの統計ということ。
その総合スーパーを中心とした10月の売上高、
前年同月比マイナス0.3%で、1兆0090億円。
23カ月連続ダウン。
商業統計では、総合スーパー業態は、
1997年をピークに、もうずっと13年もダウントレンドにある。
食料品は前年同月比で0.0%。
まったく変わらず。
「安定の食品」の面目躍如。
コンビニも食品販売中心の業態だから、
コンビニのマイナス5.9%は、
いかにこの業態がタバコに依存していたかを鮮明にした。
タバコの売上げだけでなく、
タバコを買いに来るという購買動機に連動した売上げ。
衣料品はマイナス1.4%、
住関品はマイナス1.1%。
この住関連にはニトリの貢献も織り込まれていて、
だから総合スーパーの住関連がまだまだ改善されていないことを物語る。
コーネル・ジャパンの講義中にも、
「総合スーパー」業態をどうするかがテーマとなった。
大久保恒夫先生、荒井先生、私、三者三様の解ながら、
決め手は見つかりにくい。
これこそ論理と事実との協働によって、
次の視点が要求されている課題である。
<結城義晴>