「格差を差別せず」の商売の精神と10月の内食&外食販売統計の変化
世界の農産物価格が高騰している。
その影響は食品のみならず、
衣料品や生活用品にまで及ぶ。
クリスマス・年末年始商戦に向けて、
「価格高騰」は大きな与件となってきた。
いかに取り組むか。
さて昨日、補正予算が成立した国会。
仙谷由人官房長官と馬淵澄夫国土交通相の問責決議案が可決。
菅直人内閣、どんどん追い詰められている。
いま日本に、絶対に必要なのは、「長期政権」。
そのもとで、一貫した施策を実行し続けねばならないと思う。
会社でも同じ。
危機の時には、実行力のある長期的な経営陣が、
一貫したシナリオのもとに改革を続けねばならない。
次々に経営者が変わるのでは、
危機からの脱出はできない。
そんな中、昨日、プロボクシングに、
二人の世界チャンピオンが誕生した。
朝日新聞文化欄では、
「イクメン」や「草食系男子」のことを記事にしている。
その一方で、最もきついスポーツでの世界王者誕生。
フェザー級の長谷川穂積とスーパーフェザー級の栗生隆寛。
ともに2階級制覇のチャンピオン。
草食系男子とボクシング世界王者。
日本の若者には二通りの生き方があるのだろう。
それはそれで頼もしいことだと思う。
11月17日のこのブログで取り上げた「格差」。
朝日新聞のコラム『経済気象台』のコラムニスト遠雷氏は、
「格差がバネ力を生む」という。
「失われたのは若者のハングリー精神である。
若者自身に怒りが乏しいことこそが危機である」
遠雷氏は、こう、訴える。
しかし、この日本に現在、
プロボクシング世界チャンピオン6人。
「怒りやハングリー精神を持ち合わせた変革の担い手」が、
存在しないわけではない。
頼もしい限りだし、
「格差」を一概に無くすばかりがいいわけではない。
「格差そのものを差別視すること」こそ、
避けねばならない。
その点、商売はいい。
顧客を差別しない。
1673年の日本、「越後屋」を創業した三井高利が、
1683年に「店前現金無掛値」を訴えた。
「今度私工夫を以て呉服物何よらず格別やす値に売出し申候間、
私店へおいで御買上げ下さる可く候。
何方様えも持たせやり候儀は仕らず候」
「何方様えも」とは顧客を差別しない宣言だ。
1930年のアメリカでは、マイケル・カレンが、
スーパーマーケットを創業した。
カレンがロングアイランドの日刊地方紙に出した広告。
『最新型高級車にお乗りの方も、うば車をお引きの方も、ご来店歓迎。
流行遅れのお召物でも、そのままお気軽に、さあ、さあ、どうぞ!
金曜午後九時、土曜午後十時まで営業』
これも顧客を差別しないことの宣言だった。
商業の革新者二人のモットー。
「格差」の中で「差別」せず 。
さて昨日は午前中に、㈱いなげやの面々が揃って、
商人舎オフィスを訪ねてくれた。
私の隣から、吉野繁美さん、
小森俊幸さん、
押木昌巳さん、
そして高橋一郎さん。
小森さんが私の著書『メッセージ』をご持参下さったので、
サインした。
「心は燃やせ、頭は冷やせ」
最近はこの言葉、大好きだ。
午後は、「スーパーマーケット販売統計調査」の記者発表。
東京・神田の社団法人新日本スーパーマーケット協会。
一昨日の日本フードサービス協会の発表と見合わせると、
「10月の内食と外食の動向」が鮮明になる。
「10月の販売統計調査と11月の景況感調査」を、
まず協会副会長の増井徳太郎さんが流暢に報告。
10月の総売上高は、7492億1083万円で、
前年同月比102.1%。
食品合計は6424億4609万円(前年同月比102.6%)、
非食品合計は1067億6474万円(前年同月比98.9%)。
注目すべきは生鮮3部門。
3部門の合計は2419億2903万円で、
前年同月比104.2%だった。
そのなかで青果が前年比109.9%の993億3856万円。
これは、野菜の相場が高騰したための実績。
水産は相変わらず苦しく、前年比99%の659億4864万円。
そして、秋冬物の商材として畜産が売れ、
766億4183万円、前年比102%。
「昨年の年末は単価の低いものを発注しすぎて、
チャンス・ロスを出した。
この年末をどう乗り切るか。
昨年から学んでいれば、
各社知恵を絞るだろう」
続いて、株式会社マルトの安島浩代表取締役社長。
マルトはいわき市において圧倒的シェアをもつ。
安島さんの販売動向についての話は、
謙虚ながらも、自信にあふれていた。
マルトは地元シェア50%を誇るスーパーマーケット企業。
いわき市内では3kmおきに店舗をかまえ、どの道を通っていても、
必ずマルトの店舗に行きつくような展開がなされている。
「マルトが大切にしているのは、健康な食品を売ること。
そのため、マルトのお弁当は腐ります。
温かいお弁当はおいていません」
「先ほど販売統計の説明では、
水産が苦戦しているとの話だったが、
マルトでは魚は売れている。
昨対で129%伸びている。
これはちゃんと品揃え、商品づくり、アピールするなど
手間をかけた結果」
「経常利益は昨対で3割伸びた。
これは昨年が悪すぎたのと、
あいみつを取るなど、基本をしっかりしたから」
「しかし、マルトは地域密着企業。
多少値が高くても、地元を大事にします」
「たとえば、ヨーグルトや乳製品は120%伸びている。
地元の味を大事にしながら売る。
しっかり根付いているから売れているのです」
一方の、日本フードサービス協会。
「10月の外食産業市場動向調査」。
全体で前年同月比プラス2.7%。
4カ月連続の前年同月クリア。
内食の2.1%プラスを0.6ポイント上回った。
外食は内食の水先案内人。
外食の落ち込んだ部分を内食がかすめ取るといった構図からは、
一刻も早く抜け出して、内食・外食協力して、
「食の喜び」「食の楽しさ」を日本中の消費市場に知らしめたいもの。
10月の外食の客数はプラス4.4%、客単価はマイナス1.7%。
とはいっても客単価も、
9月の前年対比マイナス3.4というレベルから抜け出しつつある。
外食産業で唯一、伸び続けてきたファストフード。
10月の売上高プラス2.7%。
外食全体のトレンドと同じ水準。
客数はプラスの5.4%、客単価はマイナス2.6%。
ずっと悪かったファミリーレストランは、
リニューアル効果が実って売上高3.5%増。
客数がプラス3.5%、客単価はプラマイゼロ。
ディナーレストランも売上高プラスの4.2%。
客数3.1%、客単価1.1%、ともにプラス。
10月の統計で見ると、
コンビニ既存店の売上高は前年同月比マイナス5.9%。
総合スーパーを中心としたチェーンストアは、
前年同月比マイナス0.3%。
たしかに、生活の何かが変わりつつある。
「格差が差別」につながらないことだけを祈りたい。
良い週末を。
<結城義晴>