日本スーパーマーケット協会会長・川野幸夫さんの「土をなめるくらいの店長」
昨日は夕方、
地方都市のスーパーマーケット店回り。
超のつく有力企業でも、
地方の雄の企業でも、
年末商戦としては驚くほど客数が少なく、
しかも売れていない。
まったくの普通の売場で、普通の状態。
有力企業は店の側も、この時期は、
年末を意識せず、紅白の腰巻など施さず、
普通の火曜日とした方がいいといった態勢。
やはり、「ギリギリ消費」が鮮明だ。
それが厳しい現実となる。
総務省発表の二つの指標。
第1に、11月の家計調査。
1世帯当たりの消費支出が前年同月比マイナス0.2%で3カ月連続減少。
1カ月平均支出金額は28万4212円。
物価変動分を調整した実質消費支出はマイナス0.4%。
第2は、11月の完全失業率。
季節調整値が5.1%。
これは前月の10月から動かず。
完全失業者数は318万人で、この1年間に13万人減少。
就業者数は6252万人で、こちらは1年間に8万人の減少。
一方、厚生労働省発表の11月の有効求人倍率は、
10月よりわずかだが0.01ポイント上がり、0.57倍。
これは7カ月連続向上。
家計調査や失業率、有効求人倍率は、
芳しくないまま、停滞気味。
㈱セブン&アイ・ホールディングス会長の鈴木敏文さんの言うとおり、
「世の中が明るくない」ことこそ最大の問題で、
小売業・サービス業はなんとかこの明るさを、
表現したいし、主張したい。
それが存在意義だと認識したい。
昨日は、午前中、
カスタマー・コミュニケーションズ㈱の今年最後の役員会。
その後、㈱プラネット本社を訪れて、
玉生弘昌社長、井上美智男副社長と懇談。
今年も、お世話になりました。
ありがとうございました。
プラネットは2011年1月1日から、
またまた料金の値下げに入る。
プラネットのシステムを利用する製造業・卸売業・小売業にとっては、
有難いこと。
さて、ブログは昨日の続き。
東京・日本橋の日本スーパーマーケット協会。
3団体合同のスーパーマーケット販売統計発表記者会見。
3団体とは、
社団法人新日本スーパーマーケット協会(横山清会長)
日本スーパーマーケット協会(川野幸夫会長)
オール日本スーパーマーケット協会(荒井伸也会長)
今回は日本スーパーマーケット協会専務理事の大塚明さんの発表。
いわば2010年の総括と2011年の取り組み。
そこへ川野幸夫協会会長がご登場くださって、
一気に盛り上がった。
小売業界に大転換が始まった。
その中で、来年はどうするか。
その取り組み事項とミッション。
第1に、スーパーマーケットとして「食を創り、食を守る」
これを大きなミッションとして、闘う必要がある。
第2に、「買い物難民」にスーパーマーケットとして、どう対応するか。
ビジネスモデルそのものが、顧客を不幸にしたり、不便にしたりしている。
スーパーマーケットは毎日の食に関して、
多くの消費者に不満足を与えず、
そのうえでいかに利益を出すか。
第3のミッションは、製配販三層のコラボレーション。
製造業・卸売業・小売業の間の無駄をいかに省いていくか。
さらに環境問題、容器リサイクル法見直し問題、消費税、最低賃金問題など、
山積している。
第3の問題に関しては、
「消費財流通業界における『製配販』の取組」というプロジェクトが始まっている。
川野会長がこれに参画。
主催は経済産業省、流通経済研究所、流通システム開発センター。
製造業5社・卸売業4社・小売業6社の合計15社で、
ワーキングがスタートした。
スーパーマーケットからはライフコーポレーションとヤオコーが参画。
総合スーパーからはイオンリテールとイトーヨーカ堂、
ドラッグストアのマツモトキヨシとコンビニのローソン。
製造業は、味の素、花王、キリンビール、資生堂、P&G。
そして卸売業は、あらた、国分、菱食、Paltac。
そうそうたるメンバーが参画し、
トップが自ら参加して議論が進みつつある。
代理出席はほとんどない。
ここでは、大きく5つの問題が議論されている。
1.リベート、センターフィー問題
2.返品問題
3.物流問題
4.クレート等の標準化問題
5.流通BMS問題
川野さんは述懐する。
「『製配販運命共同体』の認識がなければ、
こういった試みはうまくはいかない」
「真剣に、実のあるものにしていこうと考えている。
分科会で各社事務局が発言し、詰めているから、
それなりに意味が出てくる」
インフラは共有して、
それぞれはサービスと商品で闘っていく。
そのためのプラットフォームづくりが必須。
「モノ離れの今、まだまだモノを売ろうとしているが、
小売り、卸、製造業一体となって、
顧客との距離を短くしていきたい」
大塚専務理事の言葉。
「35年前、白菜はふた束売りが主流だった。
それがひと束売りになり、
今は半分、4分の1カットが出てきた。
そのうちざく切りも売るようになるに違いない。
つまり、お客に近づいていくことが必要です」
このあたりから記者の質問が出る。
「都市型小型店とコンビニの競争はいかに?」
大塚さんが答える。
「生まれてこのかた『コンビニの客』というお客さまも増えてきた。
スーパーマーケットの最終の敵はコンビニだと思う。
マスではなく個をターゲットにし、
すぐに使うものをターゲット商品にすれば、
当然、ぶつかり合う」
この認識は正しい。
「いま、卸が強いから、
小売業が強くなっていくには卸機能をどれだけ上げていくか。
チェーンストアでも本部は儲かっているし、
卸企業も統合しつつ、儲かっている」
川野幸夫さんの今年への感想。
「足掛かりとして、突破口として、
参議院選では清水信次さんに当選してもらいたかった。
まだまだ小売業は味噌っかすで、
失業のバッファー程度にしか考えられていない。
それを変えていくのが今の経営者の役割だし、
若い連中がこの業界に入ってこられるような、
足掛かりをつくっていけたらいいなと思っている」
「私たちの意識がまだ高くない。
どうしても当選してもらう、
なぜ受かってもらうか、の認識がない。
だから運動がうまくいかなかった。
小売業は隣同士で戦っている。
個々の競争の問題に頭が向いて、
業界の認識になっていない」
「去年は『安売り大会』だった。
しかし今年も『安売り大会』から抜け出られなかった。
ただし日本人は舌が肥えている。
おいしさを求めている」
「小売業は買い物意欲、消費意欲を、
いかに高めていくかが仕事。
それをいかに実現するか。
そのために知恵や工夫をする」
「わが社も含めて、それができていないから、
行ったり来たりしている」
「『スーパー』の本家は『スーパーマーケット』。
一般マスコミを含めて、
われわれの代表は『総合スーパー』だと思っているが、
それは違う」
「小売業はお客様に伝えていくことが役目だ。
わが社は雪印問題のときにも、
全工場が悪いわけではないという立場をとった。
そうするとお客さんからは、叱られる。
しかし伝えることは伝えていかないと、
小売業の役目は果たせない」
「原材料に関しては、買い負けしている。
日本そのものがクラッシングして、
ハイパーインフレとなる危険性がある。
その時にどう対応すべきか。
協会として考えていかねばならない時期に来ている」
「農業問題一つとってみても、
生産者は、だれが消費するかを意識せずにつくってきた。
しかし小売業もだれがつくっているか、
どうつくっているかを意識化しなければならない。
農家の方にあったとき、
小売業の店長がその畑に行って、
土を舐めるくらいでなければ、
農業者は信用しない、と言う。
あなたたちは汗水たらしてつくってくれている。
私たちがその価値を認めなければ、
相手は本気になってくれない」
「商品やサービスについて、
もっと真剣に、本気になって進めていかないと、
地産地消もうまくいかない。
土を舐めるほどの店長がいる店では、
互いに信頼している農家が、
1年間に千数百万円分もつくっている」
「お客の情報が生産者に伝わっていかなかった。
生産者の情報は生活者に伝わらなかった。
その意味でも小売業の果たすべき役割は大きい」。
最後は川野さんの一人舞台だった。
「12月後半、11日かけて全店を回った」
川野さんは、満足そうに語った。
私は言った。
「年末商戦は小売業の従事者にとって無上の喜びがあります。
それは商売の神様がすべての商人にくれるご褒美です」
川野さんは答えた。
「私は店を回って、年末は通信簿だと言ってる」
私は言った。
「だからヤオコーは成績がいいんだ」
記者会見が終わると、乾杯して、懇親。
日本スーパーマーケット協会・大塚明専務理事と。
オール日本スーパーマーケット協会・松本光雄専務理事と。
そして新日本スーパーマーケット協会・島原康浩事務局長と。
日本スーパーマーケット協会事務局長の江口法正さんと、
オール日本スーパーマーケット協会の統括マネジャー、中村伸一郎さん。
事務方として今年一年、お疲れ様でした。
最後に、日経新聞消費産業局次長・白鳥和生さんと。
良い記者会見と記者懇談会だった。
「土を舐めるくらいでないと信じてもらえない」
印象に残る言葉だった。
皆さん、ありがとうございます。
来年もよろしく。
<結城義晴>