キリン堂の顧客第一主義と現場主義、そして共栄会で講演した「知識社会の知識商人」
昨日から大阪の帝国ホテル。
最上階の24階からの展望がいいし、
気分もいい。
カラリと晴れた小春日和。
新幹線に乗るときにざっと眺める雑誌『WEDGE』1月号。
ちょうど3部構成の特集を組んでいる。
「日本経済は大阪の二の舞いか」
まず、企業から見捨てられつつある日本経済の現状を示す。
次に、1970年の大阪万博の後、大阪は衰退し始めたことを明らかにする。
それは産業構造の変化を甘く見たからだ。
そして最後に、過去、大阪が蘇った経験を見直し、
生き残り戦略を大阪から学ぼうと訴える。
この特集、大阪人を喜ばせることができるか。
東京人を奮い立たせることができるか。
日本人を蘇らせることができるか。
編集部は、結論を大阪大学教授の阿部武司さんに委ねた。
「大阪は2回の危機を乗り越えている」
第1回目は、江戸時代の末期。
「全国から集まった民間人が強力に工業化を推進」した。
その結果、大阪は「東洋のマンチェスター」となった。
第2回目は、太平洋戦争の戦時中。
「戦後、繊維産業や電機産業が、経済を大きく復興させた」
後者は「大阪に根づいた松下電器産業や三洋電機、シャープ」など。
そのうえで阿部教授はまとめる。
「大阪の復活は、
いつも民間活力がカギになっている」
私もその通りだと思う。
第3回目の今回、鍵を握るのは、
民間の小売業、サービス業、
そして食品や薬品など、
人々の命を守る消費財産業だ。
上海人の「どや顔」に負けないのは、
日本で唯一、大阪人、関西人である。
さて、昨日は、ドラッグストアの㈱キリン堂共栄会の新年会。
毎年恒例で、1月上旬に開催される。
700人からの取引先が参集し、
大阪・関西の新年はこの会で明けると言われるほど。
午後4時30分、
キリン堂会長兼社長の寺西忠幸さんが40分のご挨拶。
寺西さんは現在、日本チェーンドラッグストア協会会長で、
全国のドラッグストアや薬局・薬店のトップ・リーダー。
昭和30年代前半から商業界で学んだ、私にとって旧知の経営者。
従って商人舎発足の会の発起人に名を連ねていただいた。
寺西さんのお話の中身は挨拶の域をはるかに超えていて、
キリン堂の経営戦略や寺西さん自身の経営哲学がじっくりと語られた。
素晴らしい内容だった。
キリン堂は「顧客第一主義をテーマに
地域コミュニティに根差したビジネスを展開する」
それが寺西さんの主張。
そのために「抜本革新スローガン」がある。
スローガンⅠは、
「私たちは、日々現場で発生している問題に対して
本気で問題解決に向き合い
一生涯の顧客になっていただくために
妥協することなく
お客様の感動と満足の創造に取り組みます」
スローガンⅡ
「本部は各店舗を支える為に存在します。
その事に対する強い責任感に基づき
本部と店舗との深い信頼関係の絆をつくります」
顧客第一主義と現場主義、
本部と店舗の信頼関係によるチェーンストア経営。
キリン堂の21世紀がここに凝縮されている。
その後、私の記念講演が1時間。
テーマは「知識社会の知識商人」
私はこれから小売業・サービス業、そしてメーカーや卸売業は、
ナレッジ・マーチャントになっていくと考えている。
小売業のなかで、とりわけドラッグストアやスーパーマーケットは、
商品の品種・品目が多く、商品知識だけでも膨大となる。
それを熟知し、顧客のことを知って、
コミュニティに貢献することこそ、
小売業・サービス業の役割である。
寺西さんにリクエストされた商業界の理念から始めて、
サービス産業化のコンセプト、
業態からフォーマットへの転換が進む経営戦略論、
そしてロイヤルカスタマー論まで、
一気に60分きっかり。
今年最初の講演で、700人もの聴衆が聴いてくれていて、
だんだん声を張り上げていくものだから、
とうとう最後には声が枯れてしまった。
講演が終わると、すぐに懇親会。
開会宣言は㈱大木社長の松井秀夫さん。
キリン堂共栄会の副会長で、
松井さんも商人舎発足の会の発起人。
ご挨拶は、キリン堂共栄会会長の小林豊さん。
小林製薬㈱代表取締役社長。
さらにご挨拶は、共栄会副会長で、
ロート製薬㈱代表取締役社長兼COOの吉野俊昭さん。
乾杯のご挨拶と音頭は、
㈱Paltac代表取締役会長の三木田國夫さん。
やはりキリン堂共栄会副会長。
荒井伸也さん、廣田正さん、玉生弘昌さんを、
コーネル・ジャパンの「ホールインワントリオ」と呼ぶが、
三木田さんは、さらに凄い。
一昨年の2009年、8月と9月に二度、
ホールインワンをやってしまった。
保険会社にはホールインワン保険というのがあるが、
その担当者が信じなかったそうだ。
三木田さんはこれまで4度、
ホールインワンを達成している。
「あやかりたい、あやかりたい」
呟きつつ、一緒に「カンパイ」。
その後、怒涛の懇親会。
寺西さん、大幸製薬㈱社長の柴田高さん。
柴田高さんは、「ラッパのマークの正露丸」で有名な大幸製薬の社長だが、
医学博士で「カリスマ外科医」としても名を馳せている。
著書に『カリスマ外科医入門』『肝癌の熱凝固療法』があるが、
本というのは、こんなキャッチフレーズを人に与える。
「ラッパのマークの正露丸の社長はカリスマ外科医」
わかりやすくて、
具体的なイメージが湧いて、
いいですね。
もちろんドクターからプレジデントに「蛻変」した柴田さんこそ、
典型的な「ナレッジ・マーチャント」
その柴田さんとはすぐに意気投合。
野村證券㈱大阪企業金融二部長の池田肇さんを伴って、
二次会でも盛り上がった。
末長い付き合いを願っておきたい。
いまさら「知識社会の知識商人」か?
そんな見方もあるかもしれないが、
ドラッカー先生が見通したように、
21世紀の100年間という期間は、
後世から見ると「ナレッジ・ソサエティ」であるに違いない。
なにしろドラッカー先生は言う。
「我々は今、長い長い時代の峠を渡っている」
その長い峠は、1960年から始まって2030年ころまで続く。
私の考える「知識社会の知識商人」たちにも、
ザ・ロング・アンド・ワインディング・ロードが待っている。
<結城義晴>