建国記念の日のスーパーマーケットトレードショー2011の結城義晴的総括
東京も横浜も、雪。
関東地方は雪。
すこしだけ積りそう。
都会人は、ちょっと嬉しくなる。
建国記念の日の祝日なれど、
大新聞各紙は、取り上げない。
朝日と読売はエジプト・ムバラク大統領退陣の報、
日経は上場企業の経常利益が53%増加するニュース。
(ほとんどの中小企業や商業・サービス業は蚊帳の外だが)
そして小沢一郎元民主党代表の離党拒否、
米国におけるトヨタのリコール騒動。
一面コラムや社説でも、建国記念の日に触れない。
建国記念の日の2月11日は、
戦前、「紀元節」と呼ばれ、
それを『日本書紀』は、神武天皇が即位した日と伝える。
明治5年、この神話に近い伝説に基づいて、
紀元の始まりを祝う祝日として、「紀元節」が制定された。
戦後、この紀元節は廃止され、
昭和41年「建国記念の日」として祝日になった。
アメリカでは、インディペンデンス・デーが7月4日。
フランスは、パリ祭が7月14日。
独立記念日や革命記念日。
これはこれでよい。
毎年、私は考える。
日本は、神話でよいのだ、と。
大相撲の八百長問題が話題をさらっているが、
奈良時代から相撲は「神事」(しんじ)のひとつだった。
だからスポーツであって、スポーツではない。
その神事の勝ち負けに、
金がからんでしまうことはもってのほかだが、
一方で大相撲は、プロサッカーやプロ野球とは、違う。
建国記念の日に、
自分の国のこと、その歴史、
これからのあり方など、
考えてみることは大事だ。
とはいっても、店を開け、売場に立つ人々は、
今日から三連休。
そして月曜日はバレンタインデー。
バレンタイン一色のプロモーションの中で、
雪が客足にどれだけ影響を与えるかを、
おもんばかっていることだろう。
さて昨日で、
第45回スーパーマーケット・トレードショーが終了。
来場者数は過去最高。
初日の8日は2万6037名
中日の9日は3万1270名
最終日10日は2万6114名
都合、8万3421名。
しかも一般顧客をシャットアウトして、
プロの入場者だけで8万3421人。
昨年が3日間合計で、8万1747人だったから、
1674人の増加で、2.05%プラス。
こうなると、10万人の大台を、
早く超えてほしいと飛躍を願ってしまうが、
一方で、全国のスーパーマーケットの年間客数増を、
ちょっとだけ牽引する数値目標ならばいいだろうとも思う。
さて今年のトレードショー、
エコロジーや省エネ、環境対応、省力化が大きなトレンドだった。
TERAOKAブースのデモンストレーションには、
たくさんの人々が並んだ。
これは顧客にとっては「タイムセービング」、
店舗にとっては「省力化」。
それが両立するシステム。
イシダのブースも、今年、
ブース大賞をとるかもしれないほどに、充実。
サンヨーはパナソニックのグループに入って、
パナソニック電工などとのコラボレーションも展開。
ブースのトップには、
二酸化炭素排出量ゼロ化への挑戦が掲げられた。
さらに「フューチャーストア」のコンセプト提案も。
学習院大学の上田隆穂経済学部長とコラボしてもらいたいものだ。
オカムラもさまざまなエコ・テーマに積極的。
一番普及しそうなのが、これ。
クローズド・ショーケース。
「10%の省エネ」がうたわれている。
食品卸も、その役割を果たすべく、
様々な展開。
国分、菱食のブースは、トレードショー全体を牽引する出来栄え。
三井食品もユニークな提案が多かった。
ペットと楽しむコミュニケーションフードは、昨年から提案されている。
菓子卸の高山。
菓子卸グループのNS。
卸売業は、地方の中小メーカーやうずもれた生産者の商品を、
全国レベルに引き上げてほしい。
それがこのトレードショーの社会的機能でもある。
メーカーも、テレビ宣伝で大ヒットした商品ではなく、
これから売り出そうと考える新しいブランドの提案に余念がない。
例えば伊藤園は、「おーいお茶」ではなく、
タリーズ・コーヒーのブースをつくる。
ガチガチのナショナルブランドの提案ではない。
UCCコーヒーにはVIPラウンジで、
私も毎年、お世話になる。
卸売業や製造業だけでなく、
小売業も提案する。
その代表が成城石井。
スーパーマーケットの「売場力」をキャッチフレーズにしていた。
そして今回、最も盛況だったのが地方ブース。
地方自治体、地方金融機関が、それを実現させた。
まさに、地方の時代がやってきて、
間違いなく「食の世界」では、
地方が主役であることが証明された。
アメリカのフードマーケティング協会(FMI)も、
長らく食品展示会を開催していた。
しかし昨年から隔年開催へと後退した。
その理由は、簡単。
展示企業が集まらなくなったからだ。
2008年のラスベガスでのFMI展示会は、
入り口をコカコーラとネスレのブースが占めていた。
アメリカ社会全体に、「コモディティ化現象」が蔓延している。
だからFMIもグローバル企業に入口を任せるしかない。
しかしそれでは、バイヤーたちも、
わざわざFMIの展示会に行くニーズを見つけられない。
ヨーロッパでは、
毎偶数年開催のパリ・シアルも、
毎奇数年のケルン・アヌーガも、
その展示の中心は中小企業である。
ヨーロッパ中の村々、町々の産品が参集する。
もちろん大企業も海外企業も参加するけれど。
中小生産者、卸売業者にとっては、
最大の宣伝の場、
小売りや外食のバイヤーにとっては、
わが店だけの商品を見つける場。
両者のニーズが一致する。
つまりノンコモディティ・グッズ中心の展示会なのだ。
だから「意味」があるし、「意義」が生れる。
日本のスーパーマーケット・トレードショーは、
地方行政や地方金融機関が中小企業をとりまとめて、
その地方らしい一大集積展示場を形成する。
沖縄県物産。
徳島県。
山梨県。
福島県。
熊本県。
そして高橋はるみ知事が自ら売り込んだ北海道。
日本のスーパーマーケット・トレードショーの強みはここにある。
フランス・パリのシアル、ドイツ・ケルンのアヌーガに並ぶのは、
この点である。
ただし、ヨーロッパの二大食品展示会と異なる点がある。
もちろんその規模は、まだまだ日本が及ばない。
しかしそれは、ヨーロッパ全土から発信し、
南北アメリカ大陸、アフリカ、アジア、オセアニアを、
すべてターゲットとするシアルやアヌーガと、
現状の日本中心のスーパーマーケットトレードショーの、
マーケットサイズの違いである。
しかしもう一つ決定的な差異は、
開催時期の問題。
シアル、アヌーガは10月。
これは食品生産の収穫期に当たる。
今年の収穫の成果を、一番よいときに世界に伝える。
同時に10月のパリは最良の観光シーズンに当たる。
対して日本は2月。
これは3月4月のメーカーの新製品発売の先取り宣伝の時期である。
両者の伝統が違うのだから仕方ない。
私の提案だが、2月開催はよしとして、
東アジアの「春節」に開催期間を合わせるべきだろう。
まず中国、香港、台湾、東南アジアから、
春節の時期には日本を驚くほど多くの人々が来襲する。
その時期に開催を合わせる。
来年は、2月はじめの開催となるようだ。
8万3421名の参加者。
1127社の展示者。
そして主催者・事務局。
すべての皆さんに感謝したい。
願わくば、この展示会と同様に、
いやそれ以上に、日本中のスーパーマーケットの店頭が、
活気づきますように。
建国記念の日に、そう思う。
「万が一に、すべての商売がなくなるとしても、
最後になくなるのがスーパーマーケットだ」
「そんなありがたいスーパーマーケットをやっているんだから、
みんな、元気出して、やりましょう」
協会名誉会長の清水信次さんの言葉が、重い。
<結城義晴>