菱食4社合併で総合食品卸売業の「業態誕生」に思う
「水温む」
この語感がぴったり。
春の気分が、盛り上がってきた。
これで花粉症がなければ、
最高なのだけれど。
とはいっても、今年の花粉は、
所によっては10倍も飛ぶと、
前宣伝は華々しかったものの、
私の場合、そうでもない。
10年ほど前には、
「鼻うがい」などやっていた。
塩水を鼻から吸って鼻から出す。
現在は、そんな必要もなくなったし、
何の予防も、治療もしない。
マスクも、嫌いだから、しない。
ただただ、花粉症に耐えるだけ。
ということは私の場合、
軽い花粉症なのだと思う。
「鼻温む」春も楽しめる。
さて昨日は、朝から商人舎オフィスに出た。
ずいぶん仕事がたまっていて、
まずは来週からのアメリカ視察・事前テキストのチェック。
アメリカでは個人消費が、
国内総生産(GDP)の7割を占める。
日本も世界的にみれば個人消費の比率が高くて、6割。
韓国など、輸出がGDPの5割を占める。
個人消費を支えるのが、小売サービス業。
だからアメリカの消費産業は、ずっと、
この面で、世界のモデルになってきた。
「消費がすべて」という哲学は、
やや20世紀的に過ぎるけれど。
私がアメリカを初めて訪れたのは、
1978年9月。
故渥美俊一先生が50歳代で、
人生のうちでも最も元気なころ。
その渥美先生のが宰するペガサスクラブ。
その米国シニアコースに特別に招待いただいた。
㈱商業界に新卒入社して、2年目だった。
私は『販売革新』編集記者の名刺をもっていた。
そしてこの時が、
ペガサスクラブ米国セミナーの最盛期だった。
なんと一つのツアーで、500人。
バス12台が連なって、
スーパーリージョナルショッピングセンターを訪れた。
ネイバーフッドショッピングセンターの場合には、
4カ所が視察対象となり、
参加者は自分の好きなショッピングセンターを順番に訪れる。
Aショッピングセンターの次には、B、そしてC、Dという具合。
その間、12台のバスが循環していて、自由に乗り降りできる。
おそらくこのころが、
日本の流通業者のアメリカ視察最盛期だったと思う。
もちろん学び方も「マス・マーケティング」ではあったが。
私は渥美先生から、
アメリカの小売業やチェーンストア、
店舗と売場と商品の学び方など、
ほとんどのことを教えていただいた。
それは膨大な体系だった。
この渥美理論を前にするとき、
私は心から謙虚になる。
今年も、真に謙虚になって、
アメリカの消費産業から、
学ばせていただこうと思っている。
そう考えながらテキスト・チェックを行った。
午後は、東邦大学付属病院で、
定例の診察。
右目の眼圧17、左目は13。
決して良いわけではないけれど、
ひどく悪くもない。
その後、立教大学キャンパス12号館で、
大学院ビジネスデザイン研究科委員会。
大学院MBAの教授会のようなもの。
キャンパスでは、
今年度入試発表が行われていた。
正門を入ったところに掲示。
最近入試はインターネットで発表されるが、
昔ながらにキャンパスにも掲示される。
さて、ニュース。
食品卸売業4社の経営統合。
今年3月から本格的に進められると発表されていたが、
来年2012年4月までに完了する。
形式は中核となる菱食が、他の3社を子会社化して合併。
もちろん三菱商事傘下の日本最大食品卸売業で、
三菱商事の出資比率は約60%。
年商は単純合算で2兆2000億円。
一般にマスコミなど、
大きいものは手放しで絶賛する向きもあるけれど、
私はそうではない。
反対に、大きいものには、
何であろうと反発するという人がいるけれど、
私はそうでもない。
合併手続きの第1段階は、今年7月、菱食が、
現在の子会社の一つリョーショクリカーと合併したうえで、
株式交換によって、3社を子会社化。
3社とは明治屋商事、サンエス、フードサービスネットワーク。
一方、現在菱食にはリョーカジャパンというもう一つの子会社がある。
かつての菓子卸・橘髙を母体とした会社。
だからこの7月時点で、
菱食には4社の子会社がぶら下が。
第2段階は、10月、菱食が明治屋商事を合併。
その時点で、子会社はフードサービスネットワーク、サンエス、リョウーカジャパン。
第3段階は、来2012年4月、
フードサービスネットワーク、サンエス、リョウーカジャパンを合併。
このうちサンエスとリョーカジャパンは菓子卸。
この2社も当然ながら一つの事業部として統合される。
これによって、総合食品卸売業が誕生。
ドライ食品、チルド食品、酒類、菓子を一手に扱う総合食品卸売業。
小売業の「業態化」と同じ構造の卸売業が誕生する。
もちろん会社統合と並行して、
情報と物流のシステムの合体、共通化が進められる。
これに先駆けて、代表取締役人事が発表された。
三菱商事から井上彪氏が社長に就く。
井上さんは三菱商事で、食品本部長、生活産業グループを統括。
2003年には三菱商事代表取締役兼常務執行役員生活産業グループCEO、
2006年には代表取締役兼副社長執行役員を歴任。
ここでいう生活産業グループとは、
日本でもアメリカでも、
GDPに占める最大分野「個人消費」を総合的に担当する。
中野勘治社長は代表取締役会長に、
会長の後藤雅治さんは相談役に。
後藤さん、ほんとうにご苦労様でした。
菱食も、ここまで来ましたね。
中野さん、井上さん、よろしく。
菱食の中身の充実と真の融合は、
これからです。
さてさて、今日の日経新聞最終面『交友録』。
文芸評論家の北上次郎さんが、
作家の椎名誠さんとの出会いを書いている。
そうか椎名さんは昨年末に、
『本の雑誌』の編集長を降りていたのか。
1978年ごろ、既に私は、『本の雑誌』を手にしていた。
まだアングラ雑誌の趣きを残していた。
さらに東京・茗荷谷の東洋社印刷での毎月の出張校正では、
椎名さんが編集長を務めていた『ストアーズレポート』とご一緒した。
その後、椎名さんは㈱商業界にスカウトされて、
月刊『商業界』編集長に内定した。
しかし最終的には商業界を蹴って、
自ら創刊した『本の雑誌』に軸を移し、
同時に作家活動を始めた。
以後の大活躍は、ご承知の通り。
椎名誠さんも66歳。
北上次郎こと目黒考二さんは64歳。
6月28日に菱食社長に就任する井上彪さんは65歳。
そして私は58歳。
時代は変わったが、
これからさらに早回しで、
移っていきそうな予感がする。
良い週末を。
私は明日、
新年度入試口頭試問試験官の仕事で、
立教大学キャンパスへ。
「春温む」を楽しみつつ。
頑張ります。
<結城義晴>