アメリカ報告・その②1兆円企業「ホールフーズ」最新都市型500坪小型店の全貌をくまなく御覧入れます!
今回の風邪は粘り強い。
なかなか熱が引かない。
今朝もちょうど38度。
それでも長編のブログは書ける。
不思議なもので、3年以上も続けていると、
ブログを書くことが日常となって、
どんな体調のときにも書くことはできる。
内容のレベルは、自分では判断できない。
ただし、誤植は多くなってしまう。
校正陣がすぐに直すが、
打ち込みの間違いは多くなる。
前原誠司前外務大臣の辞任について、
各紙巻頭コラムで取り上げている。
こういった事件を一流のコラムニストがどのように描き分けるか。
何しろライバル新聞も必ずこの件を取り上げるのだから、
特徴を出さねばならない。
そこで面白いバトルが展開される。
といっても、結局は、
どんなたとえ話に引っ掛けるかということになるのだが。
読売新聞の看板コラム『編集手帳』は、
ちくま文庫『桂米朝コレクション4』から上方落語『帯久』の一節を取り上げた。
「悪(わる)なると何もかも悪なりますなあ。
弱り目に祟(たた)り目、泣き面に蜂、貧すれば鈍する、
藁(わら)打ちゃ手ェ打つ、便所へ行(い)たら人が入っとおるちゅうぐらいで」
菅直人政権の現状を茶化す。
日経新聞の『春秋』は、松本清張の推理小説『点と線』。
「本人や事務所に『点と線』のような数字への敏感さがあり、
献金を十分チェックしていれば、問題は防げたかもしれない」
前原前大臣が鉄道ファンであったことに引っ掛けたのだが、
はっきり言って、つまらない。
ただの事後説教になってしまった。
朝日新聞の『天声人語』。
大学受験の国語の試験問題に出たりして、
最も権威あるコラムだが、
今回はこれが一番よかった。
米国人作家O・ヘンリーの短編『善女のパン』に重ねた。
「小さなパン屋でいつも古くて安いパンを買う男がいた。
きっと貧乏なのだと女主人は思う」
「ある日、彼女はこっそりパンにバターをたっぷり塗って渡す。
だが男は建築家で、図を描くときにパンを消しゴム代わりにしていたのだった。
情けが仇(あだ)となり、大事な図面にバターがついて台無しになる――」
どんな事件にも、
人間としての暖かさが潜んでいたら、
それをすくいあげる心持ちをいつも持つべきだと、
私は思う。
さて、第10回アメリカ報告第二弾。
「ホールフーズの画期的都市型小型店」
これがいい。
今回、ホールフーズは新店3店と既存店1店を訪れた。
既存店は1500坪の店で、
アメリカのスーパーマーケットとしては標準サイズ。
この店がことのほか良かった。
地域になじんでいて、顧客をよく知っていて、
しかもそのうえでホールフーズのマーチャンダイジングが展開される。
もちろん新店にも、
最新のシステムが導入されていて、
これはこれで素晴らしかった。
しかし日本のスーパーマーケット企業にとって、
最も手が届きやすい存在が、
最新の都市型小型店。
「NOW OPEN」の立て看板がある。
そしてファサード。
ホールフーズの2010年度売上高は90億0600万ドル。
いつものように1ドル100円換算で9006億円。
もう1兆円に届きそうな勢いの会社。
その売上高伸び率は前年比12.1%。
さらに既存店伸び率は7.1%。
リーマンショックを受けて停滞していたが、
いち早く回復した。
回復の源となったのは、
「スーパーマーケットの原点に帰ろう」というコンセプト。
CEOのジョン・マッケイが呼び掛けた。
純利益は2億4600万ドル(246億円)。
こちらの伸び率は何と67.3%。
そして期末店舗数は299店になり、
300店を目前にした。
1店平均にすると30億円も売る。
期中新店が16店、期中買収店が2店、そして期中閉鎖店が3店。
ホールフーズは2007年2月21日、
オーガニック・スーパーマーケット第2位のワイルドオーツと統合。
当時のワイルド・オーツは年商12億ドル、110店。
このワイルド・オーツが500坪クラスの小型店を抱えていた。
いま、ホールフーズはこの小型店の改装を盛んに行っている。
これから紹介する店が、
そのモデルであることは確か。
売り場を写真で詳細に追いかけてみよう。
売場が狭いので、店頭に花売り場を出している。
青果部門の柱には地域を示した方向指示板がある。
楽しい売場づくり。
店に入ると左側に青果部門。
ブドウも山積み。
何といっても、バナナのぶら下げ陳列は目立つ。
店舗面積は約500坪。
だから至るところに商品を並べている。
果物の森の中を歩いている気分になる。
壁面の青果部門のダミー。
小型店は量販型にはならない。
しかし一定以上の品揃えをしなければ、
ホールフーズとしての完成されたライフスタイル提案ができない。
だからダミーを上手に使って陳列しなければならない。
コンパクトな紙袋のケース。
POPには、最小限の情報しか書かない。
青果部門の次にあるコーヒー売り場。
コンパクトに出来上がっている。
ばら売りコーナーの秤。
青果、コーヒーの次に、
コーナーを右に曲がると、
プリペアードフードからミートの対面売り場へ。
下段にも相変わらず、商品が埋め込まれている。
さらに乳製品売り場が続く。
チーズ売場の下段にも商品陳列。
チーズの対面売り場の向かいには、
島陳列のチーズ売場。
その前に、スープバー。
店は狭くとも、スープバーは必須。
スープバーの反対側にはサラダバー。
レギュラー店舗ではこれらがそれぞれ独立したアイランドになっているが、
小型店では一つにまとめられている。
そのサラダバーのペーパータオル。
プライベートブランドの「365」。
スープバーの横にも、コーンブレッドが、
関連陳列されている。
ホールフーズの小型店売場づくり政策がよく出ている。
チーズ売場からピザ、イタリアンのデリ売場へ。
店舗左手に位置付けられている。
オーダー・サンドイッチの申し込みボード。
パン売り場のサイド陳列。
こういった小物の陳列器具がふんだんに使われている。
乳製品、デリから鮮魚・精肉売り場へ。
店舗左サイドは対面販売コーナー。
魚売り場の冷蔵ケースの前面にもケース売りを設けている。
ゴンドラアイル内のリーチインケース。
今年の店の特長、
最新設備「新型リーチインケース」。
枠部分が細くて、商品がくっきりと見える。
飛び出してくるようにもみえる。
ゴンドラエンドではこれまた新製品のワイン。
「チャック・ザ・チャック」1ドル99セント。
そう、トレーダー・ジョーの1ドル99セントワイン「チャールズ・ショー」のコピー。
チャールズ・ショーは通称「2ダラー・チャック」と呼ばれる。
明らかにそれを意識して開発された商品。
両者を飲み比べてみたが、
私はトレーダー・ジョー派。
チーズとワインが対面で完全に関連販売。
ワイン売り場にスウィート・バゲットを関連付ける。
ゴンドラ列は冷凍食品の2本を入れて、全部で5本。
エンドにはウィング陳列。
365のプライベートブランド「パーパータオル」。
下段にもきちんとしたフェースどり。
グロサリーはスーパーマーケットの収益源。
きちんと品揃えするが、
在庫はゴンドラ上部に積んである。
天井には採光システム。
木造りのエコ店舗。
究極のエコストアはダウンサイジングによってなされる。
ダウンサイジングとは小型化のこと。
ダウンサイジングする代わりに、
フック陳列のような関連販売を多用する。
ホールフーズは全店で「ローカル」の商品を開発し、売り込む。
日本流にいえば「地産地消」。
売場のあちこちにあるごみ箱。
ホールフーズのごみ箱は、
なぜかセンス良く感じられる。
多分、色づかいだろう。
イエローの什器にグレーとブラックのごみ箱。
青果部門の作業カート。
これは葉物用の多段カート。
そしてグロサリー用のカート。
ホールフーズでもカートシステムで、
オペレーションが展開されている。
精肉のセルフサービス売り場のビニール袋ケース。
そして冷凍食品売場の隅に掃除用具。
床に「チェックアウトはこちら」のシールが張ってある。
その先をみると、顧客が並んでいる。
そして店舗右手が、
その集中チェックアウト・レジ。
両サイドに13台のレジがあって、
顧客は一列に並んで待ち、
順番に空いたレジに入る。
日本の新幹線の切符窓口と同じ方法。
いかがだろう。
ホールフーズの小型店。
テキサス州オースティンのランドマークストアは2200坪。
その4分の1ほどの店に、ホールフーズの持てる力を全部出し切った店。
ここに唯一、存在しないのは、
イートインスペース。
それ以外の要素はすべて盛り込まれている。
都市型小型店の典型をみた気がする。
もちろんオープンしたばかりであるから、
これからどんどん修正も加えられるに違いない。
しかしここには1兆円を目指すホールフーズの新フォーマットがある。
(明日へつづきます)
<結城義晴>
2 件のコメント
結城先生へ
くれぐれもお体大切にしてください。熱が38℃以上が続くようだと風邪では無くインフルエンザを疑った方がいいかもしれません。
ホールフーズの500坪店の紹介は「ワオー!!!」と叫びたい位素晴らしいお店ですね!フック陳列、ごみ箱、小さな什器等、日本のスーパーマーケットはハミダシ陳列一切禁止の本部通達で、店舗が均一化して味も素っ気も無い企業が多いのですが、神は細部に宿る、リテールはディテールとの言葉とおり、細部へのこだわり(お客様への利便性への配慮)と一品でも多くをお買い上げいただきたい!との店の強い意志が感じられました。
ありがとうございます。
いまちゃん、ありがとうございます。
熱も6度台に下がってきました。
養生すれば必ず、回復します。
栄養をとって、水分を十分にとって、
解熱剤を飲んで、じっと寝ている。
そうすれば必ず、
自分の中から力が湧いてきて、
風邪は治ります。
この小型店では、小道具に視点を当てて、
たくさんの写真をとりました。
私の言う「近景写真」です。
時には「小さな視点」をたくさん集めた方が、
全体が見えたりするものです。