アメリカ報告・その③全米第2位年商4兆円1725店「セーフウェイ」の生死をかけた「フォーマット転換」を見てもらおう!
御心配おかけしました。
今朝の体温は36度4分。
下がってきました。
それでも咽の痛みはまったくない。
だからいつもの風邪ではない。
疲労から来たものと断定。
日経新聞の白鳥和生さんへのメールにも書いた。
「無理はするけど無茶をしないテクニックは、
ハードスケジュールの中で、
小刻みにでも冷静に休養の時間をとることにあります」
今回はそれができなかった。
おおいに反省。
さて商人舎「発足の会」発起人の一人に名を連ねていただいている松崎靖さん。
同い年の知識商人同志で、ブログ仲間でもある。
その松崎さんのブログ『あなたへの手紙・月水金』は、
しっとりとしていて、いつも読み手に考えさせる。
モーレツ・モーレツのブログが多い中、
特異の存在感をもっている。
その最新版「丁稚のすすめ」。
「祈れ 働け」 と、松崎さんが若かりし頃に丁稚に行った先の社長さんが、
書いてくれた言葉がいい。
「毎日の仕事は祈りの翼によって神様に運ばれて行く 働くことは祈りである」
ブログのご一読をお勧めます。
昨日は、横浜の商人舎オフィスに訪問者あり。
まず午前中に、MDD会のご一行様。
私の隣が、㈱万代の吉川英樹さん、
いちばん右が㈱エクゼの前田仁さん、
いちばん左は㈱JTB西日本の小阪裕介さん。
この春、この秋、さらに来年の視察研修会の打ち合わせ。
万代の取引先のメーカー・卸売業の勉強会。
万代からは1人だけ参加して、口は出さない。
私は、食品製造業・卸売業向けのアメリカ研修と考えて、
テキストなどもそちら向けにアレンジする。
メーカー、卸売業の営業スタッフのエース級が集う研修会で、
そのつど、解説しつつ、私自身が気づかされることも多い。
楽しみな研修会だ。
夕方の訪問者は二人。
右から常盤勝美さん、猪股信吾さん。
常盤さんは商人舎ホームページの人気ブログの著者。
「2週間天気予報」
㈱ライフビジネスウェザーの常務取締役情報制作部長で、
気象予報士・流通気象コンサルタント。
猪股さんは、今年度の立教大学大学院結城ゼミ生で、
インターネット・サイト運営の専門家。
商人舎ホームページの今後の展望や、
そのための様々なコラボレーションの可能性など、
話題は多岐にわたった。
常盤さんは、
気象とマーチャンダイジングの融合という本業のほかに、
気象と52週マーチャンダイジング、
POSデータとウェザー・マーチャンダイジングの接続、
さらに進めてID-POSとの接点などを追い求めて、
発展・成長中。
コンサルティングや調査研究など、
ご要望があれば、お寄せください。
ブログもご愛読のほど。
さて、アメリカ帰国後レポート第3弾は、
セーフウェイの
「ニューライフスタイルストア」編。
セーフウェイは1926年発足の老舗小売業。
1980年代には、米国スーパーマーケット業界第1位の企業となり、
現在は、クローガーに次いで第2位。
2009年度の売上高は408億5100万ドル。
いつものように1ドル100円換算すると4兆0851億円。
残念ながら、その伸び率はマイナス7.4%で、
純利益も10億9800万ドルの赤字。
期末店舗数1725店だが、
この9割近くの店舗が改装中。
この店舗リニューアル作戦は、2005年に始まった。
1億ドルの規模で、セーフウェイはブランド再建キャンペーンを開始。
キャッチフレーズは“Ingredients for life” (イングリーディエンツ・フォー・ライフ)。
「生活にとってなくてはならないもの」といったニュアンス。
要は店づくり、品揃え、商品展開に、
新しい「ライフスタイル」提案をふんだんに盛り込もうという考え方。
これを称して「セーフウェイのニューライフスタイルストア」という。
従来型のスーパーマーケットは、
市場のど真ん中に存在するものの、
四方を囲まれて、四隅から顧客と消費を奪い取られていった。
ハードディスカウンター、スーパーセンター、コンビニ、
そしてスペシャルティ・スーパーマーケット。
そこで、専門スーパーマーケットの方向にシフトして、
セーフウェイのポジショニングの再確立を図ろうという試みだった。
専門スーパーマーケットの方向性とは、
ホールフーズやウェグマンズに近づくということ。
当時でいえば4兆円の企業が、
その10分の1の年商の企業群に学ぶということ。
それから6年。
決算数値にこそ、まだ改善効果が出ていないが、
セーフウェイは確実に変わろうとしている。
その「ニューライフスタイル・ストア」の中で、
とびきりの繁盛店をご覧に入れよう。
店舗左手をはいると、花売り場からベーカリー。
床は木目調でシックに出来上がっている。
生花が鮮度と季節感を表現する。
そして青果部門のトップにはバナナ。
ブドウのプレゼンテーションも、美しい島陳列。
もちろんリンゴも青果部門の主役。
オレンジなど柑橘系の果物も豊富な品ぞろえ。
ニューライフスタイル提案とは多様性に対応するという意味でもある。
そして青果部門のど真ん中に君臨するのが、
オーガニックのアイランド。
アイランドの左手にはカゴ盛り陳列。
真ん中はオーガニックリンゴ。
形の悪いトマトなども並べられている。
青果が映える店づくり。
壁面沿いの葉物の鮮度感も高い。
壁面青果部門の陳列線は長い。
すなわち客数が多い店であることを示している。
そして適度な突き出し陳列。
青果部門の中島陳列は、
滑車のついた丸い陳列台に、
マッシュルームの缶詰・瓶詰が並べられている。
セーフウェイは伝統的に肉が強い。
グロサリーストアから発祥して、
スーパーマーケットに業態転換した時に、
最大の課題だったのが、食肉産業と一体化して、
精肉部門を確立することだった。
奥壁面は対面の精肉売り場、セルフ売り場からドラッグ部門につながる。
フード&ドラッグは、ニューライフスタイル店舗でも必須の条件。
最後に店舗右翼に至る曲がり角にワイン売り場。
ワインの品ぞろえをバラエティ豊かにすることも、
ナショナルチェーンのスぺシャルティ化には欠かせない。
ただし、私は「セーフウェイ」のクラブカードが気に入らない。
黄色く見えるカードがほとんどの棚に張ってあるが、
会員カードをもっている顧客を囲い込もうという作戦。
しかし日本のビジネスマンならだれでも、
JALとANAのカードをもっているのと同じで、
クローガ―とセーフウェイのカードはアメリカ人の常識。
だからそのカード手数料やオペレーションコスト分、割高感が出ていて、
私はこれがウォルマートのエブリデーロープライスを、
助けることになっていると考えている。
店舗右翼はサービスデリとミールソリューションのコーナー。
こちらは対面コーナー。
「ready meals」(レディ・ミール)コーナーは、
持ち帰ってすぐに食べられる商品群を品揃え。
こちらは対面方式。
「meals to go」コーナーは逆に、
セルフサービスのミールソリューション商品売り場。
広大なグロサリーの売場が店舗中央を占めていて、
そこは明るいが、両右翼は照明を落とし、
商品にスポットライトが当たるように細工されている。
これが店にスペシャルティ感を与えている。
2005年からスタートしたプライベートブランド「O Organics」。
写真の真ん中あたりに見える。
HORIZONはオーガニックのナショナルブランド。
「O」がセーフウェイのブランド。
2008年にBetter Living Brands Allianceを組織して、
「O」ブランドを他の小売業者や海外向けに卸販売し始めている。
パンのエンド陳列。
ゴンドラアイルは長い。
中通路は切らない。
この考え方は従来型のスーパーマーケットで、
ホールフーズなどはどんどん中通路を入れる。
ドライグロサリーは従来型とあまり変わらない。
それがこのタイプの店の問題かもしれないが、
この店はよく売れている。
レジ前のゴンドラエンド。
ちょうど陳列作業まえだった。
朝のエンド陳列作業。
冷蔵ケースにも直置きしたダンボールから陳列。
駐車場には配送車。
パンが店内に運び込まれている。
ニューライフスタイル店舗として、良く売れる店である。
セーフウェイはこのアップスケールタイプへの転換に、
企業の生死をかけている。
1725店の大転換。
では従来型の店とはどんな店か。
その青果部門。
コンベンショナル型の精肉部門。
床、天井、壁面装飾、照明。
そして商品と提案性。
新型は天井もホールフーズと同様に、
高くて、むき出しの木目。
床もウッディ感覚。
格段の違いを見せる「ニューライフスタイル型」。
この違いをアメリカ中のスーパーマーケット企業が、
追い求めている。
セーフウェイのフォーマット転換は、
日本のスーパーマーケット経営者にも、
鋭く突き付けられている課題である。
これは、もう、間違いない。
そのためにいかに自らをポジショニングし、
いかにフォーマットをつくるか。
解答は「現場にしかない」。
Keep your ear to the ground!
(つづきます)
<結城義晴>