結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2011年04月09日(土曜日)

「東北関東大津波大震災」結城義晴渾身の現地ルポ「三章 盛岡ジョイス/ベルプラス編」

“Think unthinkable!”
「考えられないようなことまで考えよ」

それから、
“Never say, never”
「絶対に起こらないなどとは、金輪際言うな!」

日経新聞国際面で編集委員の高坂哲郎さんが、
欧米の安全保障や危機管理の専門家の合言葉を紹介している。

中部銀次郎の言葉にすれば、
「最悪を覚悟して最善を尽くせ!」

中部さんはストイックなスポーツマンだったから、
「最善を尽くせ」と結論づけるが、
欧米人のリスクマネジメントはリアリズムだから、
「最悪を覚悟せよ」としか言わない。

しかし最善を尽くしても、
それでも人間の力ではどうにもならないことがある。

昨日の日経新聞一面コラム『春秋』。
災害社会学の第一人者・広井脩の著書『災害と日本人』から引いた。
「日本人の伝統的な災害観」の三つ。
①「天譴(てんけん)論」
「人間社会への天の戒めとみる」
関東大震災の時の渋沢栄一や内村鑑三の考え方。
石原慎太郎東京都知事がこの天譴論者。
②「精神論」
「災害に科学的に対処するよりも心構えを強調する考え方」
これは「最終的に神仏依存に通じる」
今回も振興宗教がはびこるだろう。

③「運命論」
「災害とそれによる生死を運命として受け入れる」

「そう割り切ることで悲劇性を心理的に抑える効用がある一方で、
あきらめにつながる恐れもある」
これは、広井さんの指摘。

このコラムは最後に、
東京都三宅村の平野祐康村長の言葉を出す。
「火山噴火で4年半の全島避難を経験した」ひと。
「誇れることがあったとすれば、
自殺者を出さなかったことだ」

そして結びは、「人と人のつながりがますます大切になる」。

私はそれに付け加えたい。
これから必要なのは、
「一心に仕事をすること」。

その日経の投資・財務欄。
「小売り・外食、震災が影」
セブン&アイは381億円の営業利益マイナス、
そして260億円の特別損失。

高島屋は3月、売り上げ減90億円。

ダイエーは店舗の被害などで15億円の特損。

ファミリーマートは営業利益25億円のマイナス、
40億~60億円の特損。

しまむらは90億円の売上げマイナス、
30億円の特損。

ファーストリテイリングは30億円の売り上げ減、
10億円の特損。

売上げマイナスと特別損失の、
オンパレード。

この数字の世界は、
天譴論でも精神論でも運命論でも、
逃れられないし、解決しない。

一昨昨日、
ベルプラス会長の遠藤須美夫さんとじっくり話した。
共同仕入れ機構CGCジャパンの重鎮で、
東北CGC のリーダー。
20110408163309.jpg
「今回はCGCの役割が大きかったし、
今後はCGCブランドがもっともっと重要になる」

私も同感。

いわきのマルトも大船渡のマイヤも、
CGCジャパンに加盟していて、
その商品供給と仲間企業の助力に、
大いに励まされ、助けられた。

東北と北関東の広範な震災は、
ナショナルチェーンの「機能」の強さを、
再認識させた。

イオンはナショナルチェーンだし、
セブン-イレブン、ローソン、ファミリーマートのコンビニも、
ナショナルチェーン。

しまむらもユニクロも、
ニトリもコメリも、
ナショナルチェーン。

ナショナルチェーンとは、
全国規模のチェーンストアであるということ。

だから東北北関東の震災に対しても、
健全な西日本の店や部門が奮起して、
東日本の店や部門を自助することができる。
CGCジャパンも全日食チェーンも、
ボランタリーチェーンのナショナルチェーン。

遠藤さんの言うCGCの役割の強さは、
地域地域のローカルチェーンが集まって、
「ナショナルチェーン」を形成していることを意味する。

ベルプラスもジョイスも、
CGCジャパン加盟のナショナルチェーンで、
まあ東北はCGCジャパンだらけということになる。

ジョイスの小苅米英樹社長は、言う。
「営業本部の全店では、
店長が中心となって店頭販売を始めたし、
総務部門はガソリンの補給をいち早く確保した。
開発本部は被害状況を素早く調べ、
商品本部はトラックで商品を集めに回った」
20110408163317.jpg

「組織ごとに機能を果たし、
自動的に動くことができた」

震災が起こったときにいちばん、
やってはいけない態度。
それは「指示待ち」。
行政には未だにその傾向が顕著だが、
小売業に、それがあってはならない。

小苅米さんが言うのは、
「指示待ち」がなかったということ。

それでも営業本部の佐々木寧さんは、述懐する。
「この20日間ほどはまともに眠っていない」
組織で役割・機能分担して動くと言っても、
その組織ごとのトップは、不眠不休である。

ジョイス専務の青木洋一さんは、
この会社の懐刀だが、
「これからは体力勝負になる」と見る。

私の「寡占化が進む」という見方にも、
賛成してくれた。

それはジョイスが、リージョナルチェーンを志向しながら、
ナショナルチェーンのCGCジャパンにも加盟していることの、
バックボーンを意識した見解だと思う。

東北関東大震災の後、
日本の小売りマーケットの様相は、
確実に変わる。

私は、強く実感した。

しかしナショナルチェーンが、
重要な機能を果たしたことは確かだが、
店舗の価値が個店にあることは、
絶対的な要素である。

ここは、間違えてはいけない。

強い個店がナショナルチェーンの力によって、
さらに強くなることが起こる。

弱い個店はナショナルチェーンだろうが、
リージョナルチェーンだろうが、弱い。

小苅米さんは震災後全社にメッセージを発した。
毎週月曜日に「社長からの手紙」を出しているが、
その震災特別版。

それには呼びかけがあった。
「早く通常に戻そう」

いち早く通常に戻した者が、
顧客の支持を得る。

顧客こそが、
「はやく日常を取り戻したい」と、
熱望しているに違いないのだから。

<結城義晴>


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