結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2011年05月11日(水曜日)

「買い物ウォッチ」に見るフードサービスの窮地と牛丼チェーンが始めた内食・中食・外食の競争

北海道を除いて、全国的に雨。
東京・横浜も雨。
それもかなり激しい雨。

今夜は後楽園ドームで、
初のナイトゲーム。
通常の6割の電力消費で試合を開催する。

天候の異変はちょっと気になるところだが、
人間の力ではどうにもならない。

日経新聞の「きょうのことば」で、
「ライフライン」が取り上げられた。

「電気や上下水道、ガス、通信、道路・鉄道など
生活に不可欠な設備のことを指す。

本来の意味は『命綱』

「最近ではインターネットや携帯電話などのほか、
生活必需品を24時間販売するコンビニエンスストアも
広い意味でのライフラインとみなされている」

コンビニだけではなく、
スーパーマーケットもドラッグストアも、
もちろん総合スーパーも、
小売業・サービス業の拠点は、
ライフラインとなった。

それでも、小売業の代表としてコンビニが、
日経新聞の「ライフライン」の定義に入ってくる。

これも「ひとつずつ、すこしずつ、いっぽずつ」だが、
商業の現代化が進んでいると私は思って、
元気が出てきた。

さて、同じく日経新聞の「買い物ウオッチ」。
20歳以上の全国の男女1000人に、
4月28日から5月1日に行ったインターネット調査。
今回は「外食動向」

東日本大震災の影響から、
売上高・客数とも、大幅に下落しているフードサービス業界。

のっけから、厳しい回答。
すべての外食業態で、
「利用する機会を減らしたい」人が11~15%台、
逆に「増やしたい」は3~7%にとどまった。

震災後に外食の機会が「減った」人は26.7%。
地域で見ると東北45.6%、関東31.9%、近畿、四国も20%超。

「利用を減らした回答者が最も多い業態は、
居酒屋の22.5%。

ファミリーレストランと低価格すしチェーンが18%強で続き、
喫茶店・コーヒーチェーンなども16%を超えた」

ワタミは4月の既存店売上高が前年同月比90.4%。

一方、「中食」は健闘。
セブン-イレブンは4月の米飯・麺類の売上げが、
前年同月比5%弱増えた。

これは「ライフライン」そのものであることを示している。

「震災後に自宅で料理を作る機会が増えた」人も、
20.9%にのぼった。

こちらはスーパーマーケットの出番となる。

しかし20~24歳では、
居酒屋に行く機会を増やしたい人が14.6%。
減らしたい人を5ポイント近く上回った。

外食は若者が牽引する。
内食・中食は全客層で守る。

大雑把にみれば、そんな構造か。

ただし4月のファストフードは、
日本マクドナルドホールディングスが3.6%増、
ゼンショー「すき家」が同6.0%増。

それもあってか、牛丼チェーンの3強が、
揃い踏みで「期間限定で値下げキャンペーン」を展開予定。

ゼンショーは牛丼(並)を30~40円値下げし250円にする。
「すき家」は16~22日、「なか卯」は17~23日。

吉野家は東日本地区で、17日から23日まで、
牛丼の並盛りを380円から270円に値下げ。
主要商品もディスカウント。

そして松屋フーズは、
16~23日、「牛めし」(並)を通常の320円から240円に、
23~30日、「ビビン丼」(並)を430円から340円に、
30日~6月6日、「キムカル丼」(並)を490円から390円に。

ファストフードの逆襲が始まる。

しかしこうして外食と内食、中食が、
しのぎを削って競争することは、
消費者にとって悪くはない。

お客は喜んでいる。

私だって、この時期、
牛丼食べてみようかと思う。

内食・中食、外食。
日本でこれだけ分化していることは、
進化を意味する。

歴史的にみると、
もともとは内食しかなかった。
だから言葉としては食事はすべて内食だった。
すべて内食だから、
それをわざわざ「内食」とは呼ばない。

従って、言葉としては「食事」から派生して、
まず「外食」が最初に生まれた。

広辞苑の定義では、
「家庭外でする食事」。

次に広辞苑に「内食」の概念が入って来る。
1991年11月改定の第四版から。

この時点の言葉の定義は、
「外食」に対して「家庭内でする食事」。

現在の広辞苑第六版では、
内食を「家庭内で調理してする食事」と説明している。
「調理」という言葉が含まれている。

「中食」(なかしょく)という言葉は、
2008年の第六版から登場。

その中食の意味は、
「店で買って家に持ち帰り、すぐ食べられる調理済の食品」。

外食と内食の境界領域の「中食」の概念が、
国民的辞典の『広辞苑』にまで取り上げられている。

これは逆に、
外食と内食の範囲が狭まってきたことを表しているが、
それでも三者間での競争は、
お客を喜ばせる。

震災からの復興のなかでも、
三者の競争が見たい。

みんな、頑張れ。

最後に『メッセージ』から。
「天の邪鬼」

競争は、闘争とは違う。
その混同は、成長と膨張を錯覚することに似ている。

競争を拒否する者は、理念的平和主義者なのか。
それとも怠け者のキリギリスなのか。

一見、温厚なヒューマニストに映るが、
それは怠惰な天の邪鬼にほかならない。

天の邪鬼が競争から逃避しつつ
闘争を煽る。

政治の世界にも、行政にも、業界や会社にも
天の邪鬼の群れが潜んでいる。

それは私自身の心の中にも、
あなたの心のなかにも。

この天の邪鬼を退治するには、
勇気をもつこと、競争環境を整えること。

疲弊を癒す活力は
良質の競争の中にしかない。

<結城義晴著・商業界刊>

そろそろ、競争を奨励してもよいころだと思う。

牛丼チェーンがそれを始めた。

<結城義晴>


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