アメリカ非食品業態に鮮明な「複占・三占」状態を俯瞰する
ネバダ州ラスベガスで、
もう5日目の朝。
商人舎第9回USA研修会ベーシック・コースの87名は、
これから帰国します。
その全体写真撮影風景。
ウォルマートの広大な駐車場に集まって。
全員が写るように並んで。
そして全体写真。
みんなの顔がコメ粒大で、恐縮。
ご家族、ご友人、会社のみなさん、
探してください。
誰がどこにいるか。
どんな満足顔をしているか。
ツアーのスタートから、航空機の欠航で、
Bグループがホノルル経由となってしまった。
それでもハワイのウォルマートやホールフーズを、
オプションで視察し、プラス・アルファの成果を得た。
全体でも、これだけの人数でしかできない、
コラボレーションの果実を獲得した。
なにより、活気とエネルギーがあった。
帰ったら、やるぞ!
自ら、変わるぞ!
そんな気概に溢れた人間集団と化していた。
これこそ奇跡だと、私は思った。
さて、ブログはラスベガス滞在3日目にさかのぼる。
視察は、いよいよ最後の日。
この日の朝は、結城義晴の第2回セミナー。
ベーシック・コーズはたっぷりとセミナーの時間をとる。
ホテル2階の会議会場には、
7時半ごろから参加者が次々に集まってきた。
前日、17チームが視察店の商品調査を行った。
調査内容を商品構成グラフにまとめ、分析するために、
会場のあちらこちらでディスカッションが始まった。
広い会場に、17チームがそれぞれに集まり、
真剣な議論が展開されている。
その姿をみると、なんだか、とてもうれしい。
その真剣さに10分講義開始時間を延長し、
8時40分、講義をはじめる。
トラブル発生のため、
参加者87名が一堂にそろうのはこの講義が初めて。
私も、力が入る。
アメリカ小売業の業態の変遷、
最新のチェーンストア・ランキング、
業態論からフォーマット論まで、
重要なテーマを2時間にわたって語った。
「鳥の目」「魚の目」がなければ、
「虫の目」は生きてこない。
もちろん虫の目は、調査・研究を、
科学的にチームごとにすることによって、
客観化される。
それに私の講義で「鳥の目・魚の目」を補強する。
朝早くからのご清聴を感謝。
さて、アメリカ小売業
今日は非食品企業のチェーンストア・ランキングを見ていこう。
<フォーチュンなどから商人舎が作成したランキングに基づいている〉
食品を扱う会社も、
非食品を知らなくてよいとは言えない。
非食品小売業が、
真剣に食品を研究していることは、
周知の事実だ。
しかし食品小売業は、非食品の研究が足りない。
アメリカの非食品小売業第1位は、
ウォルマート。
ウォルマートは食品小売業としても第1位で、
アメリカのスーパーマーケット関係者は、
いつもウォルマートを研究しているから、
日本よりも非食品の理解が深い気がする。
私はいつも、ウォルマートを基準にして、
アメリカを見る。
年商4050億4600万ドル。店舗数4304。
この数字が、ウォルマートを基準にせざるを得ないことを、
如実に表している。
第2位はコストコ。
年商762億5500万ドル、540店。
ウォルマートが唯一かなわないジャンル、
それがメンバーシップホールセールクラブの業態。
コストコに対して、ウォルマートはサムズというバナーで対抗しているが、
まったく足もとにも及ばない。
そこで、サムズはなりふり構わず、
コストコのコピー作戦に出た。
コストコの会員費が16億9100万ドル、
純利益が13億0300万ドル。
つまり会員費で利益を出している業態。
その会員費も、いつでも返金を了解しますと謳っている。
その緊張感がコストコ全店に満ち溢れている。
第3位はターゲット。
673億9000億ドルで、1750店舗を展開するディスカウントストア。
赤のターゲット、青のウォルマートいわれるほど、
店舗のカラーリングは対照的。
店づくりも、ウォルマートと対象的。
生い立ちも対照的。
ウォルマートがバラエティストア出身なのに対して、
ターゲットはデイトンハドソンという百貨店出身。
何からなにまでウォルマートと正反対のポジショニング。
だから存在の意味がある。
ウォルマートとターゲットの中間のポジショニングだったKマートは、
だから衰退し、没落した。
第4位はドラッグストア1位のウォルグリーン。
年商633億3500万ドル、7397店。
第5位はホームセンター1位のホーム・デポ。
591億7600万ドル、1966店。
第6位はCVSケアマーク。
ドラッグストア第2位。
年商553億5500万ドル、7025店。
第7位はホームセンター2位のロウズ。
472億2000万ドル、1694店舗。
4位から7位までは、
ドラッグストアの2強とホームセンターの2強。
ドラッグストア第3位のライト・エイドは256億6900万ドルで、
アメリカ小売業ランクの13位だから、
まだ2強に食いついていて、
3強とも考えることができる。
これを「三占」と呼ぶ。
対してホームセンターの第3位メナードは、
チェーンストアランキング43位で、年商78億9700万ドル。
ホームセンター産業は「複占」の様相が顕著だ。
第8位は、シアーズ・ホールディングス。
シアーズのGMS、
そしてKマートのディスカウントストア及びスーパーセンターを展開する。
年商440億4300万ドル、3519店。
要は没落したシアーズと破産したKマートを、
ホールディングカンパニーのもとに統合し、
生きながらえている会社。
第9位は家電専門手のベスト・バイ。
年商373億1400万ドル、1192店。
しかし家電の1位はウォルマート。
第10位はGMS業態のJ.C.ペニー。
175億5600万ドル、1101店。
リージョナル・ショッピングセンターに入って、
メイシーやコールズ、ディラードなどの百貨店と並んでいると、
JCペニーは紛れもない百貨店だと見えてくる。
荒井伸也さんが指摘した「大衆百貨店」こそ、
GMSと呼ばれた業態の正体だったことは、
今や明らかである。
第11位は百貨店第1位のコールズ。
年商171億7800万ドル、1058店。
この店はもう、シアーズやペニーとそっくり。
ジュニア・デパートメントストアと位置付けられている。
百貨店の3位は、有名なノードストロームの82億5800万ドル、184店。
伝説のサービスは健在で、
メイシーズへの対抗勢力の筆頭。
百貨店4位はディラードの58億9000万ドル、309店。
ディラードは1店当たりの売上高は少ないが、
百貨店業態としては低コストの運営でしっかり利益を出している。
その意味でポジショニングの明確な企業だ。
百貨店業界も淘汰が進み、メイシーズのガリバー状態。
非食品小売業第12位は、
オフィスサプライ業態のステープルス。
年商163億4300万ドル、1555店。
オフィスサプライ業態の2位は、
オフィス・マックスの59億5300万ドル、918店。
3位は、オフィス・デポの51億1400万ドル、1124店。
この業態も三占になっている。
非食品第13位はオフ・プライス・ストアのTJX。
年商158億4500万ドル、2154店。
TJマックスとマーシャルの二つのバナーを持つ。
ブランド品のディスカウンターという特殊な業態。
この業態の2位はロスで、71億8400万ドル、1004店。
この分野も複占状態。
そして非食品13位はアマゾン・ドット・コム。
店舗数0。
年商は128億2800万ドル。
インターネット小売業。
ここまで伸びてきた。
最後に第14位はダラージェネラル。
バラエティストアだが最近はダラーストアとも呼ぶ。
そしてこの業態の2位はファミリーダラー、
74億10万ドル、6655店。
3位はダラーツリー。
52億31万ドル、3806店。
この業態も三占。
GMSが王者で、
何でも売っている。
そんな世界はもう30年前に終わった。
GMSという総合業態が没落し、
バラエティ豊かな業態ごとに、
複占・三占になっている。
それがアメリカの非食品小売りマーケットである。
さてこの状態、
食品マーケットに波及してくるのか。
ここに大きな知的興味がわくが、
それは、明日に続く。
<結城義晴>
4 件のコメント
結城先生へ
商人舎第9回USA研修会ベーシック・コースを楽しく拝見させていただいています。そこで2点質問させてください。
①視察された店舗で、東日本大震災の募金活動や支援キャンペーンは展開している企業がありましたか?
②非食品部門の、ソニー等の日本の家電製品は東日本大震災の影響からボイコットされたり、店頭から姿を消していませんか?
よろしくお願いします。
いまちゃん、ご質問、ありがとうございます。
ご返事遅れ、ほんとうに恐縮です。
東日本大震災への募金活動や支援キャンペ―ン、
残念ながら、見当たらなかったように思います。
私の眼に映らなかったのかもしれませんし、
私が行った店でそれが行われていなかったのかもしれません。
それからボイコットはありませんが、この商品に関して、
きちんと放射性物質の検査をしたという掲示はありました。
大げさでもなく、普通に、対応していたように感じました。
結城先生へ
お忙しい中のご返事ありがとうございます。
販売革新6月号で創刊600号を迎え、初代編集長の倉本初夫主幹が、創刊の思い出を寄稿されていました。
日本の小売業、流通業の近代化から現代化への潮流を読みリードしてきたのが商業界との思いを強くしました。またその商業界から結城先生達が巣立っていかれた姿が、源遠長流(源が遠ければ遠いほど、滔滔と長い流れが今日に至っている。)の感あり。と感じました。
いまちゃん、いつもありがとうございます。
販売革新編集長の初代は倉本初夫主幹、
二代目が緒方知行さん。
私の記憶が確かならば、
三代目が高橋英松さん、
四代目が内呂民世さん、
五代目が伊東清さん、
六代目は再び内呂民世さん、
その次の七代目が結城義晴。
そして矢作勉、三浦美浩、
宮崎文隆、西岡克となります。
私は二代目の緒方知行さんの部下として、
昭和52年に入社し、すぐに、
販売革新に配属となりました。
懐かしい思い出ですが、
その名のごとく、革新が使命となる雑誌で、
それがなくなったら存在価値が喪失してしまいます。
恐ろしい雑誌なのです。
ありがとうございます。