日本の業態別4月販売実績とホールフーズ、ボーダーズに深く関連していること
5月26日、ラスベガスの朝。
日本を発って7日目となる。
昨日は40度に近い熱帯日。
ホテルのプールには人があふれていた。
しかし朝6時にはさすがに人影は見られない。
今日でラスベガスともお別れ。
サンフランシスコに向かう。
やっとこの旅も、
終点が見えてきた。
もうひと頑張り。
昨夜は8時間くらい寝て、
すっかり元気が戻った。
さて日本の状況。
パリにいる菅直人首相。
フランスのサルコジ大統領と会談。
エネルギー政策に関して、
「一層の安全性を確保したうえで、
原子力を活用する考えだ」と明言。
サルコジ大統領は、
「原子力か、原子力なしかという議論は適切でない」
二者択一ではない、という主張。
まさしく現代化の焦点となる考え方。
菅首相も同意。
G8首脳会議での連携も申し合わせた。
一方、朝日新聞の世論調査。
日米仏ロ韓独中の7カ国で展開。
原子力発電の利用に関して。
①賛成が反対より多いのは米国とフランス。
米国は賛成55%、反対31%、
フランスは51%、44%。
②賛成反対が拮抗しているのは韓国と中国。
③反対が多数なのは、ドイツ、ロシア、日本。
ドイツは、反対81%、賛成19%
ロシアは賛成36%、反対52%、
日本は賛成34%、反対42%。
連合は、原発の新増設について、
「着実に進める」としていた従来の方針を凍結することを決定。
読売新聞の記事。
古賀伸明会長は、「事故の検証を待たなければ、
原発をどう位置づけるかという選択肢が広がらない」
これが日本国民一般の正直な感想だろう。
さらに経済産業省の今夏の節電対策。
企業の大半や家庭に電力使用を、
昨夏ピーク比15%削減を求める節電策。
しかし今夏は例年以上の暑さの予想。
「企業や個人にとって厳しい夏」と日経新聞は書く。
さて、日本の小売業・外食の4月販売実績が、
次々に発表された。
商人舎取材班からの報告をもとに、
ダイジェストしておこう。
日本チェーンストア協会。
総合スーパーを中心とする販売統計。
60社、8003店舗の4月の総販売額は、
1兆0474億0470万円。
店舗調整後の前年同月比はマイナス1.3%で、
3カ月ぶりの売上げ減。
野菜の相場安や3月の東日本大震災特需の反動から
食料品の動きが鈍かったためだ。
節電意識もあり、花見需要が盛り上がらなかったことも原因。
食料品の販売額は6417億5601万円で
前年同月比マイナス1.5%、
前月比マイナス1.8%と、いずれも下回った。
衣料品の販売額は1100億1893万円。
前年同月比でみると、マイナス2.3%だったものの、
前月比では21.4%増と大幅に伸びた。
4月は全体的に気温が高く、
夏物衣料に動きが見られた。
住関連は2262億0627万円。
前年同月比はマイナス2.1%ながら、
前月比はプラス12.9%と、
こちらも売上げ好調。
入学・進級の時期ということで、
文具や学習机などの動きがよかった。
日本フランチャイズチェーン協会。
「コンビニエンスストア統計データ」
既存店ベースの売上高は6044億0900万円。
前年同月比プラス1.6%で、今月も引き続き増加。
ただし、商品構成別にみると、サービスの売上高が
前年同月比マイナス15.1%。
もちろんこれは震災の影響によるところが大きい。
節電によるイベント等の自粛により、
2カ月連続でマイナスとなった。
3月は、非食品売上げの大幅な増加がみられた。
しかしそれも収まり、4月はプラス6.2%。
3月の23.8%プラスと比べると、
落ち着きを取り戻しているのが分かる。
日本百貨店協会発表の
「全国百貨店売上高概況」。
86社、254店舗の総売上高は4750億2177万円。
昨対マイナス1.5%だが、
前月の大幅なマイナスからは回復。
大阪地区の売上げは4.7%増で、9カ月ぶりにプラス。
この春に増床・リニューアルを完成した店舗が押上げ効果を発揮した。
大阪駅にオープンした三越伊勢丹が、
そのけん引役を担った。
商品別売上高は以下の通り。
衣料品は、1742億0482万円でマイナス0.5%、
身のまわり品は、606億9958万円でマイナス0.9%、
雑貨は、677億0442万円でマイナス3.5%、
家庭用品は、247億5597万円でマイナス4.4%、
食料品は、1187億4083万円でマイナス0.5%。
子ども衣料と菓子の項目以外、
すべてマイナスだった。
続いて、「スーパーマーケット販売統計調査」。
社団法人新日本スーパーマーケット協会(NSAJ)、
オール日本スーパーマーケット協会(AJS)、
日本スーパーマーケット協会(JSA)、
3団体の合同統計発表。
はじめに、JSA専務理事の大塚明さんが統計調査の改善点を述べた。
速報値の集計企業数が263社から280社に増加、
集計カテゴリーや集計エリアの分類を変更、
売上高の既存店昨対と保有店舗数別での売上高集計を開始するなど。
その4月の総売上高は7924億4615万円、
既存店の前年同月比マイナス0.6%。
全店ベースではプラス1.2%。
食品合計は6829億6680万円で、
マイナス0.2%(全店ベースでプラス1.7%)。
生鮮3部門の合計が2578億0792万円で、
これもマイナス0.8%(プラス0.9%)。
その内訳は、
青果が1030億6675万円でマイナス2.3%(マイナス0.7%)、
水産が727億6904万円でマイナス2.6%(0.9%)、
畜産は好調で、819億7213万円のプラス2.8%(4.7%)。
今月から一般食品の分類が変わり、
一般食品とひとくくりにされていた日配の売上げが
発表されることになった。
これは非常に良い。
その一般食品が、2231億8069万円でマイナス0.7%(プラス1.1%)。
日配は、1343億194万円、プラス0.7%(プラス2.8%)、
惣菜は引き続き好調で、
676億7625万円のプラス1.4%(プラス4.8%)。
そして、非食品が687億0949万円でマイナス1.7%(マイナス0.9%)、
その他が407億6986万円、プラス0.1%(マイナス0.4%)だった。
エリア別集計にも変更があった。
これまでは「関東エリア」と「東海・北陸エリア」で集計していたものを、
今月からは「首都圏エリア」、「北信越エリア」、「東海エリア」とした。
これにより、エリア別の特徴がより正確に、数字に表れる。
北海道・東北エリアの既存店前年同月比はマイナス0.6%、
首都圏エリアは、マイナス0.7%、
北信越エリアは、プラス1.1%、
東海エリアは、マイナス2.6%、
関西エリアは、マイナス1.3%、
中国・四国エリアは、プラス1.3%
そして、九州・沖縄エリアがマイナス0.7%。
さらに今月から新たに設けられた保有店舗数別集計。
1~3店舗を保有している企業数は44社で、
売上高の既存店前年同月比はマイナス1.9%。
4~10店舗の企業は83社ともっとも多く、マイナス0.4%。
11~25店舗の企業は72社で、マイナス0.3%、
26~50店舗が44社で、マイナス0.1%、
最後に51店舗以上を保有している企業は37社あり、マイナス0.9%。
これをみると、全項目で前年を割り込んでおり、
会社の規模によって、数値の差がないことが分かった。
4月のトレンドとしては、
日々の売上高のアップダウンが
非常に大きかった。
月初めは好スタートをきったものの、
7日の大きな余震により、落ち込んでしまった。
しかし、後半はだいぶ戻してきたので、
全体としては回復基調にある。
大塚さんは興味深い話をされた。
「とあるスーパーマーケットの方と話をしたのだが、
“被災地”と“非被災地”の境に立地している店がよく売れている」
以前は、鮭の切り身2~3切のパックが主に売れていたが、
今は6~8切パックがよく売れているのだという。
施設の人が買い出しにきたり、
親戚が避難してきて、瞬間的に家族が増えているのが理由だ。
震災後は主食素材の割合が多かったが、
今後、バラエティ化をどう進めていくのか、
いかにPRや情報を付加した売場づくりをするのかが重要になる。
続いては、JSA川野幸夫会長が、
1年を振り返っての言葉。
「スーパーの代表はスーパーマーケット。
しかし日本では、総合スーパーが
スーパーマーケットの代表と見られている。
これはなぜなのか。
今までスーパーマーケット業界の統計数字を
きちんと出してこなかったからだ。
数字がなければ、国民生活の実態は見えてこない。
そこで、スーパーマーケット3団体が協力して、
昨年の5月から統計を発表するようになった。
正直、できるのかと心配はあったが、
お陰様で毎月2百数十社の統計がとれて、発表ができた。
これからもより正確で、より綿密な数字を示していきたい」
「ヤオコーでは3月・4月の売上げが既存店で大変よかった。
供給が滞り、特売が打てなかったため、粗利率が確保できた。
震災後、ヤオコーでも例にもれず、棚から商品がなくなった。
棚から物がなくなると、消費者は不安になり、
余計な商品まで買ってしまい、さらに品薄となる悪循環だった。
しかし、商品の確保だけに走った店より、
ヤオコー本来の提案型の店づくりに努力した店が成績はよかった。
今回の震災であらためて、
私たちはお客さんから頼りにされていて、
本当に良い、ありがたい仕事をさせていただいていると思った。
スーパーマーケットの果たすべき役割は大きいのだと認識できた。
被災された企業はこれまでより強くなって、
スーパーマーケットの使命を果たしてくれるだろうと強く感じている」
また、スーパーマーケットの店頭などで募った義援金や、
売上げの一部、従業員・役員からの寄付金など、
総額で62億2539万2213円が寄せられたことを発表した。
最後に、日本フードサービス協会の「外食産業データ」。
204社、3万1421店舗からのデータを集計。
外食産業の4月度売上状況は、
過去最大の減少率だった3月のマイナス10.3%から
4月はマイナス2.8%と急速に回復した。
しかし、まだまだ自粛や節電などの影響から、
消費は鈍っているため、客数はマイナス3%。
ファストフードの前年比はマイナス1.8%、
ファミリーレストランはマイナス1.5%、
パブや居酒屋は自粛ムードがいぜん強く、マイナス11%、
ディナーレストランがマイナス2.5%、
喫茶がマイナス4.4%と、
先月よりはすこし良くなっているものの、
外食産業の不調はつづく。
アメリカでも外食はずっと不況だ。
タックス、サービス料にチップまで上乗せされると、
顧客はスーパーマーケットでの買い物を優先する。
だからスーパーマーケットの店内に、
イートインが多数設けられる。
しかし単なるイートインでは駄目。
食事する環境を整えねばならない。
ホールフーズ・マーケットやウェグマンズがその先導をする。
オーガニック・スーパーマーケットとして、
世界最高のレベルを堅持し、
イノベーションを続けるホールフーズ。
この企業を差別化戦略だの独自化戦略だのという言葉で、
軽く語りたくはない。
1979年に始めた自然食品店、
そして1980年にスタートしたホールフーズ。
CEOジョン・マッケイの生き方そのものが、
全従業員の生き方となって、
この企業の隅々にまで息づいている。
そして今、そのオーガニックやナチュラル、ローカルの考え方を、
顧客に知らしめるために、
「売場で食事」してもら政策が、
コアコンピタンスのひとつとなってきた。
売場はこんな展開。
「売場で食事」の局面。
椅子が高くて、センスがいいこと。
歩いている買物顧客をみおろす感じ。
デリ売場、チーズ売場。
そしてイートイン。
鮨屋のカウンターのごときスペース。
コーヒー&エスプレッソ、そしてケーキ。
ホールフーズだけではない。
書店チェーンのボーダーズ。
連邦破産法11条を適用申請したが、
売場は元気で変わらない。
顧客もやってきている。
ここではイート・インではなく、リード・イン。
立ち読みではなく、
座り読み。
ここでは本を読むのはタダ。
スーパーマーケットでも、
「ゆっくり座ってタダの試食スペース」は設けられぬか。
ついでに先の三越伊勢丹大阪の地下食品売り場。
優雅なイートインコーナー。
おばちゃんはこれがすき。
しかし三越伊勢丹はちょっと椅子が低い。
おじさんも、休憩しつつ、イートイン。
買物客に見下ろされない。
高いテーブルと高い椅子。
そしてセンスアップされた空間が必須。
いかがだろう。
日本のスーパーマーケットのイートイン。
全体にテーブルとイスが低すぎる。
売上げのトレンドと、
小売業側の知恵と努力。
低迷続きの百貨店でも、
世界最先端のマーケティングを展開すれば、
光明が見えてくる。
このポジショニングとイノベーションこそ、
私がアメリカで学びたいことだ。
(まだまだつづきます)
<結城義晴>
2 件のコメント
30年前にPOSを導入した時には、ハード/ソフトの両方を検証し、結果として当時は、投資コストに運用コスト増が、両者のメリットを享受するまでには至らなかった。その時アメリカのPOSを見たときに、「なぜPOSが導入されたのか」という理由が見えた。海外の流通を視察する度に、先生のおっしゃる「ポジショニングとイノベーション」を驚きとともに感じるけれど、「そこに至るまでの理由」までは誰も解説をしてくれません。特にアメリカの200年の歴史の中での様々なものが、結果として、今の小売りの業態を作るに至り、ただの物まねだけでは結果は出せません。ホールフーズを真似して成功した企業もみあたりません。日本でもあのハローディを見学に行く企業は有りますが、真似はできません。手本とする企業を「そこに至った理由を解明し、自分の企業と比較しながら、エキスだけではなく、同じ気持ちにならないと」真似できないものなんだなと感じます。そして、「それをすることは、だれのためになるのか」という事で、「顧客のためであり、従業員のためである」という事なんですよね。アメリカの視察をするたびに、従業員の人々の「笑顔」は、「そこに至るのでの様々な理由」に裏付けられたもので、簡単には今の日本人に真似できそうもないと、つい弱音をはきそうです。
inoue様、いつもご投稿感謝します。
仰る通りだと思います。
賛成です。
しかし「弱音」はいけません。
必ず、私たちにも、できるはずです。
私たちのやり方で。
私たちのものとして。
アブラハムリンカーンの言葉。
“government of the people,
by the people,
for the people”
この心意気は私たちの仕事に通ずるものです。