「実行の第3期生」コーネル蓼科合宿でシミュレーション・バトル”Practice comes first!
読売新聞の一面コラム「編集手帳」
作詞家・脚本家の故関沢新一さんの「座右の銘」を紹介している。
「疲れたら休め。
彼らもそう遠くへは行ってないはずだ」
「彼ら」とは「ライバル」のこと。
もう一つ、
米国の神経科学会誌電子版に掲載された研究成果。
日本の理化学研究所などが発表。
「運動記憶」は練習の合間、
休憩中に脳に定着する。
それがマウスを使った実験で分かった。
「『疲れたら休め』は技術の上達を図るうえからも
至言であるらしい」
コラムニストは述懐する。
「疲れたら休め」
自分に言ってみる。
「疲れたら休め」
あなたにも言おう。
さて昨日から長野県の蓼科。
涼しくて過ごしやすい。
別に、「疲れたから休みに来た」わけではない。
コーネル大学ジャパンの合宿。
実行の第3期生31人が全員そろって、
シミュレーション・ゲームで学ぶ。
コーネル・ジャパンの特長を示すカリキュラム。
2008年10月にスタートした第1期は、25人。
「伝説の第1期生」と呼んだ。
当時、㈱成城石井社長の大久保恒夫さん、
北辰商事㈱副社長の太田順康さんをはじめ、
そうそうたるメンバーが集った歴史的第1期だった。
この中から期中に、
小苅米秀樹さんが㈱ジョイス社長になった。
2009年10月から始まった第2期は満員の30人。
私は「奇跡の第2期生」と名付けた。
第1期の伝説に負けない奇跡を起こして、
第2期生は巣立っていった。
期中に原昭彦さんが大久保さんの後を継いで㈱成城石井社長に、
澤田司さんが㈱ベルプラス社長に昇格。
この期も、
「産業内大学として次世代の経営者をつくる」
という目的を、十二分に果たした。
そして2010年10月から第3期。
31人で、満員を超えた。
ほんとうに申し訳なかったが、
定員を超えたために、
お断りした企業も多数あった。
第1期、第2期、第3期と、
コーネル・ジャパンは業界の期待に応えて、
発展と進化を遂げてきた。
すべての皆さんに感謝したい。
その今期を私は「実行の第3期生」と言い表したが、
まさにキャッチフレーズの通り。
現場で実力を発揮する第3期生によるシミュレーション・バトル。
大いに期待された。
JR中央線茅野駅から車で30分ほど走ると、
緑に囲まれた蓼科フォーラムが見えてくる。
東京商工会議所が運営する研修・会議施設。
コーネル・ジャパン6月の講義は、
今年も、蓼科フォーラムを借り切って行われる。
13時半、授業の開始。
初めに副学長のカリキュラム趣旨説明。
毎度毎度、動機づけをし、
学習の目的を明らかにする。
それが学習効果を高める。
授業は階段教室で行われる。
これがまた、いい。
今回は、31人の第3期生が6チームに分かれ、
スーパーマーケット・シミュレーション・ゲーム(S・S・G)を展開する。
2日間にわたり、大いに盛り上がる。
開発にたずさわった浅香健一先生、森順治先生が、
S・S・Gの趣旨を説明。
赤字にあるスーパーマーケットを各チームが引き継ぐ。
とりまく環境、諸条件を分析、検討しつつ、
同じ商圏に位置する他チームとの競合に勝つために、
自らの売上高、値入れ、特売などの計画を意思決定していく。
今回は、3カ月間の想定で、
3回の意思決定を競い合う。
各チームの意思決定数値のそれぞれを、
コンピュータ・ソフトがマーケット全体の動向を勘案しながら、
各店の営業成績として打ち出してくれる。
このゲームはチームのコミュニケーションと、
決定までのプロセスを大切にしているが、
何よりもゲームを楽しむことが大事。
蓼科フォーラムの広いホールに6つのテーブルと
ホワイトボードが設置された。
初めに「自店の強み」やポリシーを決め、
それに応じて経営戦略、店名、組織を決めることからスタート。
着席して話し合う各チームの間を先生方が
いつでも質問や相談に応じられるように歩き回る。
徐々に各チームが立ち上げり、動き出す。
30分もすると、
動きはさらに激しくなる。
質問に答える浅香先生。
副学長の私も、各チームを激励してまわる。
私は各チームを回って、
「自らの強み」とポリシーを明らかにせよ、と説いた。
「組織は戦略に従う」(アルフレッド・チャンドラー・ジュニア)とも、
アドバイスした。
各チームの戦略がつくられていく。
新聞紙を敷いた上に模造紙を置き、
店名、各人の役職、経営戦略を書いて発表する。
思わず立ち上がって資料を覗き込んで話し出すチーム。
早くも模造紙に書きこむチーム。
なぜか、このチームは立ちあがって議論。
テーブルの上にのって、書き込むチーム。
行儀よく、静かに議論するチーム。
各チーム各様で、おもしろい。
そして50分のディスカッションを経て、
各チームの組織と経営方針の発表が行われる。
廣田亘店長(阪食)が率いるのは「FVH48」店。
同店は財務を本間正治さん(マルエツ)、
営業を長崎善人さん(ユニバース)、
販促を浜田剛さん(JR東日本ウォータービジネス)、
人事を千木良治さん(国分)が担当する。
基本戦略はマーケット占拠率アップ。
第2チームは店名を「スーパーこーちゃん」と命名。
店長は岡秀夫さん(関西スーパーマーケット)。
人事・販促を阿部修店次長(ジョイス)が担い、
生鮮を辻信之さん(シジシージャパン)、
グロサリーを池尾良さん(日本製粉)、
レジおよび財務を村越淳司さん(ランドロームジャパン)が統括する。
コモディティ商品を低価格で販売し、
惣菜、肉は品質重視の方針を設定。
「ど素人店長」と自ら名乗りつつ、
部下のやる気を引き出すのは第3チーム小竹経一店長(三井物産)。
店名は高練屋(こうねるや)。
店次長に黒田久徳さん(万代)、
財務管理会計に阿部智則さん(紀ノ国屋)、
営業は松尾直人さん(ラルズ)、
人事・販促は三浦健彦さん(ユニバース) と、
店長をサポートする強力布陣。
紅一点の高木明子さん(アンデルセン)は、
「ジョイン×ジョイン」店の店長。
温かい家庭のような、地域のお客様をもてなす店づくりを目ざす。
店次長が高橋茂幸さん(カスミ)、
営業が行光恒夫さん(いかりスーパーマーケット)、
人事販促が釜萢直人さん(マルエツ)、
財務管理が藤原勇一さん(昭和産業)。
急きょ店長交代が起こったことを物語る青の矢印。
福嶋繁店長(平和堂)が率いるのは「コーネル生鮮館」。
財務に高柳智史さん(タカヤナギ)、
営業企画に松尾圭祐さん(いかりスーパーマーケット)、
生鮮に青木繁さん(マミーマート)、
グロサリーに尾関篤さん(国太楼)を配し、
レジを福嶋店長が兼務する
赤字で大きく書かれた基本戦略は「生鮮で勝つ!!」。
フレッシュ市場「採れたて屋」は小林将人さん(三井物産)が店長。
海外出張の多い小林店長を支える店次長を
松本剛さん(タカキベーカリー)が、
財務を山口成樹さん(万代)、
営業を羽倉修一さん(伊藤軒)、
人事を横町正俊さん(よこまち)がサポートする。
そしてこの店には顧問として、
ストアコンパリゾン好きの森雅之さん(キョーエイ)がいる。
業績不振の店を、どう立て直すのか。
経営方針に基づき、各チームが、
150分をかけて、6月の施策を打ち出していく。
スーパーこーちゃんの岡店長は浅香先生に矢継ぎ早に質問。
コンサルティングは5万円の経費がかかるが、
質問はタダ。
こちらは高練屋。
三浦人事販促担当が浅香先生に熱心に質問する。
私はその間、窓辺のソファで仕事。
そうして全チームの6月の施策が出そろった。
森先生と浅香先生は別室で、営業成績の分析にはいる。
一方、18時からは荒井伸也首席講師の講義。
「スーパーマーケット・チェーンにおける
意思決定方法論と会議の持ち方」。
何度聞いても荒井先生のこの講義はいい。
夕食をはさみ、いよいよ6月の営業成績の結果発表。
店長と財務担当の二人が、
シミュレーション結果を受けて、
成功の要因と課題を発表する。
FVH48店は売上げ、経常利益ともに好スタート。
財務担当の本間さんが、店長とともに好成績の要因を発表。
スーパーこーちゃん店は、
高めの予算をクリアできなかったが、
まあまあの売上げを達成。
ただし、粗利益率が低い。
財務担当の村越さんが、そうした課題を発表。
高練屋は営業担当の松尾さんが、店長とともに発表。
成績は可もなく、不可もなく、手堅いスタート。
そして最も高い経常利益額を確保したのは、ジョイン×ジョイン店。
高木店長を財務で支える藤原さんが、好成績の要因を発表。
コーネル生鮮館店は、売上未達で、唯一赤字に転落。
苦しいスタートになった。
財務担当の高柳さんは、懺悔ぎみ。
売上げが最下位だったのがフレッシュ市場店。
山口財務担当が、店長の不在中、
スタッフがカバーしきれなかったと反省の弁。
6月の課題をふまえつつ、
いよいよ2カ月目の7月の施策立案。
時間は午後9時を回っている。
それでも各チームともに真剣な議論が続く。
好成績だったチームも。
赤字になった店舗も。
電卓をたたき、ホワイトボードに書き込み、議論を続ける。
議論が熱くなると、立ち上がってくる。
そして10時40分。
7月の意思決定シートを提出し、この日は終了。
そして深夜11時を回ってからのビール。
ディスカッションをした後ののどに心地よい。
明日の朝は8時から、再びS・S・G。
ほんとうに充実した一日。
飲みすぎず、12時にはお開き。
ということで、
上田惇生先生の番組を見ることはできなかった。
しかしこのシミュレーション・バトルこそ、
ドラッカーの教えを実践するもの。
“Practice comes first!”
「実行第一」
明日は、佳境に至る。
乞う、ご期待。
<結城義晴>