結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2011年06月30日(木曜日)

アサヒ・キリンの共同配送開始とアークス・ユニバースの経営統合で新しいパラダイムの時代始まる

帰国したら、途端に、
二つの画期的ニュース。

時差ボケはないけれど、
私自身、かなりの疲労。

それでも仕事の成果が上がっているから、
気力も体力も保たれている。

画期的なニュースの第1は、
「アサヒ・キリンがビール共同配送」。

なんとビール業界7割を超えるシェア二強が、
「共同配送」を始める。

きっかけは、東日本大震災だと思う。
かの震災では、両社ともに商品供給が滞った。
その反省を踏まえて、まず物流を見直す。

今秋、首都圏の1都3県から始められ、
順次、福岡県や愛知県、関西などに地域が広げられる。

両社ともに全国9カ所に工場をもつ。
そのうち工場が近隣に立地する地域から、
工場から取引先卸への物流を中継する配送拠点を相互に活用。

したがって同じトラックに両社の商品が混載される。
これによって積載効率は飛躍的に高まる。

両社のトラック台数は1~2割減少。
輸送距離は短縮され、
二酸化炭素(CO2)排出量は3割削減。

さらにこれが成功すれば、
資材の共通化や共同調達も視野に入る。

他業界にもこの影響は出そう。

何しろ金融では三井と住友が統合し、
三大メガバンクとなったほど。

キリンとサントリーがご破算になったあと、
ビール業界二強は、
まずは物流を手始めに、
実質的に21世紀を見通し始めた。

一方、第2はスーパーマーケット業界のニュース。
「アークス、ユニバースを子会社化」

アークスは北海道にドミナントを築く企業。
「八ヶ岳連峰経営」の小売業ホールディングカンパニー。
2011年2月期年商3036億0800万円、
経常利益100億6100万円。

ユニバースは青森県を中心に岩手県にしたローカルチェーン。
2011年4月期年商1025億8200万円、
経常利益41億7000万円。
超優良のスーパーマーケット企業。

両社ともに東京証券取引所1部上場。

その持株会社アークスの傘下にユニバースが入る。
株式交換によりユニバースがアークスの完全子会社となる。
ユニバースは上場廃止。

トータル売上高は、
4061億9000万円。

現在、食品スーパーマーケット業界の第1位企業は、
ライフコーポレーションで、
売上高は4808億2200万円、

経常利益98億5000万円。

アークスはライフに次ぐ第2位に躍り出る。

そのうえ、アークス、ユニバースともに、
業績の中身がいい。

ユニバース社長三浦紘一さんが、
アークス会長に就任する。
社長はアークスの横山清さん。

こういった合併の場合、
大切になるのは、
第1に人事、
第2に本部所在地、
第3にネーミング。

私はアメリカのスーパーマーケットのように、
ナショナルチェーンはマルチ・バナーがいいと考えている。

クローガーやセーフウェイは、
もともとのローカルチェーンの人事と管理、
ネーミングなどを活かす。
バナーとは「店舗ブランド」のこと。

この店舗バナーを合併した企業に、
踏襲させる。
全店統一ロゴなどには間違ってもしない。

アークスとユニバースはともに、
共同仕入れ機構のシジシージャパンに加盟している。
両者が統合したアークスは、
さらに南下政策をとって、
東日本での店舗拡大を志向する。

とりわけCGCジャパン加盟企業を中心に、
同志的M&Aを積極的に推進する。

横山社長の弁。
「売上高5000億円は目の前。
1兆円ぐらいまでやる」

わたしはこのM&A、高く評価する。

新生アークスは、
ローカルチェーンの新たな行き方を示した。

横山清アークス社長は語る。
「業績が好調な2社が組めば規模の拡大を続けられる」。

もちろんこれで、ニッチな企業がなくなるわけではない。
ある種の寡占化が進むと、なおさらニッチ企業が重要になる。
私は「範囲の経済」を信奉するものだ。
その範囲の中に、
第1にマーケット・リーダーが躍進する。
第2にマーケット・チャレンジャーが存在感を示す。
第3にマーケット・フォロワーが、これまで生き残ってきたが、
これらが脱落する。

そして第4のマーケット・ニッチャーは、
むしろ輝きだす。

いちばん危険なのは、
マーケット・フォロワー。
つまり3番手、4番手、5番手エトセトラの企業。

アークスとユニバースのM&Aは、
マーケット・リーダー志向を貫くものだ。

ここに評価のポイントがある。

時差ボケなどなっている暇はない。
震災からの復興・振興をグランドデザインしつつ、
むしろ胸躍る新時代が待っていると考えるべきだ。

両社の社員、取引先はもとより、
これからのスーパーマーケットを担う人たちも、
このM&Aの行方を見守りつつ、
モデルにしたいと考えるに違いない。

胸躍る時代がやってきたと考えるべきだ。

<結城義晴>


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