「ストレステストとV字改革後の憂鬱」と「コンビニ完全サービス産業」
「ストレステスト」
一般には、唐突に出てきた。
菅直人首相が例によって、
海江田万里経済産業相をはめた形になった。
その時のキーワード。
リスク管理手法のひとつ。
システムに通常以上の負荷をかける。
そして正常に動作するか、
隠れた欠陥がないかを調べる。
今朝の日経新聞一面コラム『春秋』が皮肉った。
「もとは企業の品質管理で使われてきた言葉」
しかし「きのうの枝野幸男官房長官の発表では、
安全評価の基準が詰まっていない」
日経新聞は企業経営になぞらえて、
「方針管理」という言葉を使う。
「どの製品に注力するかなど、
トップが方針を決め社内を動かすこと」
決めの言葉は、
「政府の原発対応のようなことをしていれば、
企業は生き残れない」
政府が生き残れないのは仕方ないが、
日本国が生き残れないのは困る。
政府機関自体のストレステストが、
この震災対応であった。
しかしそれでも日本経済は弱くはない。
これも日経のコラム『大機小機』。
「V字改革の後」のタイトル。
「日銀支店長会議でも確認されたように、
既に持ち直しの動きが始まっている」
「サプライチェーンの修復は、
大方の予想を上回るスピードで進んでいる」
「当面の懸念材料は、原発の停止に伴う電力の供給不安」だが、
「この問題がクリアされれば、
年内はV字型の回復が期待できよう」
「かくてV字回復の後、我々が直面するのは、
成長力の天井の低下という従来の課題」
「日本経済の『復旧』のスピードは速いが、
『復興』の姿はまだ見えない」
昨日は夕方から立教大学キャンパス。
F&Bマーケティングの講義。
今回はゲスト講師に小森勝先生を招いて、
「コンビニエンスストアの動向」を、
講義いただいた。
「中食マーケットの中核」をなすのがコンビニ。
2010年で8兆0175億円の総年商。
これは前年比1.4%のプラス。
既存店は7兆3947億円で、
前年比マイナス0.8%。
店舗数は4万3372店。
前年比プラス1.7%。
昭和49年(1974年)の発足以来、
成長を続けてきたコンビニにも、
伸びに陰りが見えてきた。
全小売業に占めるシェアは6.0%。
小森先生の講義は、
バイイングパワーの強さから、
客層の変化、
コンビニの存在理由、
そして出店戦略、海外戦略、
商品戦略、販促戦略、
サービス戦略、店舗運営まで、
多岐にわたった。
最後に東日本大震災におけるコンビニの貢献と、
業態の将来予測まで、
ほんとうに頭の中が整理された。
2010年度のセブン‐イレブンは、
料金収納金額が3兆2427億円で、
商品売上高が2兆9476億円。
もう、完全にサービス業となりつつある。
そんな勉強をした後、日経ばかりで恐縮だが、
今朝の朝刊で「コンビニ、店内調理を拡充」の記事。
小森先生の商品戦略レクチャーが、
ズバリ当たった記事内容。
セブン‐イレブン・ジャパンは、
1万1200店にフライヤーが備えられている。
小森先生の講義では、
これまでコロッケ、メンチカツ、唐揚げがメニューだったが、
今朝の記事は「とんかつ」を販売し始めるというもの。
「価格は1枚150グラム強で298円」
イトーヨーカ堂の特売価格と同じ。
「協力メーカーの工場で冷蔵肉に下味や衣をつけ、
出荷段階で冷凍」
「店頭で注文を受けてから調理」
「受取時間を指定した電話予約にも原則として応じる」
狙いは「出来たて」販売。
スーパーマーケットへの対抗意識満々。
サークルKサンクスも、
「店内で焼き上げる焼き鳥」を導入。
「工場でほぼ焼き上げて冷凍状態で出荷。
店内でホットプレートを使い、
タレをかけて焼いて仕上げる」
「モモ肉、皮、つくねの3種類で価格は1本105円」
「実験店では従来品の15倍、
1店当たり1日150本のペース」の実績。
6200店に導入される。
ローソンも焼き鳥の調理法を改善。
従来の「工場で焼いて冷凍した後、レンジで解凍する」方法では、
水っぽさが出る。
そこで「店内で油で揚げる方式」を採用。
ローソンは、「家庭でのおかず需要を狙った揚げ物」を、
2007年に本格導入し、現在、ほぼ全1万店で展開。
「コンビニは男性客が7割を占め、
女性客の開拓が課題」
「店内調理の揚げ物類は粗利益率が50%前後」
セブン‐イレブンの揚げ物は、
「1店1日約1万5000円の売上げ」
とんかつの投入で「1割の上積みを狙う」
店内調理品、生鮮食品、スイーツ、エトセトラ。
コンビニは中食の王者であるだけでなく、
フードサービスまで侵食し始めている。
「中食戦線過激なり」
コンビニとスーパーマーケット。
業態が異なれば競争はないなどと、
のんきなことを言ってはいられない。
アメリカでも、業態間競争は、
深刻なテーマである。
さて昨夜は講義の後、
小森先生を囲んで、
F&Bマーケティングの履修生と結城ゼミ生とで、
一献。
ところは、先週に続いて、
「一軒め酒場」
小森先生に心から感謝しつつ、
まさに暑気払い。
梅雨明けが早かった分、
暑い夏は長くなりそう。
暑気払いが増えるだろう今年。
私の胃袋のストレステストは、
日々、実施されるに違いない。
<結城義晴>
2 件のコメント
結城先生へ 7月11日のTV東京の番組・ワールドビジネスサテライトにサンキュードラッグの平野健二さんが出演されていました。テーマーは「狭小ビジネス」 平野社長のお話ではサンキュードラッグの年商最大規模の店舗ですら、店舗の500m以内から来店されるお客様で売り上げ構成比の75%を占めるそうです。この事実からサンキュードラッグは1km商圏のドミナト化を進めているとのこと。高齢化率が3割になった北九州市の人口構造と深く関係していそうです。
いまちゃん、ご指摘の通り。
キリン堂もサンキュードラッグも、
小商圏化をさらに推し進め、
狭小商圏化戦略を採用しています。
いわばそれは当然の方向です。
それだけドラッグストアが、
顧客の顔を見ての商売となるからです。
アメリカではドラッグストアがコンビニよりも、
狭小商圏業態として発達しています。
かつてネイバーフッドショッピングセンターと言えば、
スーパーマーケットとドラッグストアが核店舗でした。
しかし1980年代以降、
スーパーマーケットがコンビネーションストアを開発し、
店舗の中にドラッグストア部門を組み込んで、
結果として、ネイバーフッドショッピングセンターに、
スーパーマーケットと並んで出店するドラッグストアは、
必要なくなりました。
そこで現在は、
ネイバーフッドショッピングセンターの敷地入り口付近に、
コンビニやフードサービスと同じように、
ドラッグストアは店舗配置されています。
あるいはコンビニエンスセンターと呼ばれる超小型の商業集積に入っています。
そしてスーパーマーケット以上に、
狭い商圏の商売となっています。
平野さんはそのこともよく知っているはずです。
ドラッグストアこそ地域密着どころか、
コミュニティ密着、顧客密着業態と言えます。