松下幸之助「経営はお金だ」と「バランスシート&キャッシュフロー経営」
今日、東日本大震災発生から5カ月。
警察庁発表の死亡者は1万5689人。
宮城9391人、岩手4632人、福島1600人。
行方不明者は4744人。
合わせると、2万0433人。
あらためて大変な震災だったと思い知らされる。
心よりご冥福を祈りたい。
避難生活者はいまだに8万7063人。
避難先はなんと47都道府県。
日本中で避難者を受け入れている。
なんだかうれしくなる。
ただし最も多い避難場所は
仮設住宅、民間の借上げ住宅など。
ここに3万5366人。
まだ学校や公民館などに避難している人が
1万2905人もいる。
宮城で8247人、福島で1898人、岩手で1144人。
こちらは一刻も早く、
適切な手を打ちたい。
日経新聞の社説。
「首相、延命策尽きる」
日経はよほど菅直人に呆れ、頭に来ているのだろう。
私自身の体調はいまいちだが、
見出しを見て、思わず腹を抱えて笑った。
「首相は自民党が衆院解散・総選挙を求めているとみて、
逆に延命の可能性があると判断していた」
しかし「同党の軟化を予想しきれなかった」
岡田克也幹事長も、
ひどく損な役回りだったが、
妥協を重ねつつ、努力した。
「内閣支持率が低下の一途をたどり、
解散の可能性が極めて低くなったこともあり、
万策が尽きた格好だ」
延命策の万策尽きた。
ここまで貶めるか、という物言い。
一方、各紙こぞって絶賛するのが、
サッカー、サムライ・ジャパンの香川。
ドイツ・ブンデスリーガ「ドルトムント」で急成長を遂げた。
「鮮やか2発」
昨晩、札幌ドームで行われたキリン・カップ。
因縁の日本代表対韓国代表。
香川が2得点、本田が1得点。
役者がそろって、3対0で完勝、圧勝。
13年ぶりにホームゲームを勝利したという。
ザッケローニ監督が就任してから、無敗。
これも日本中をホカホカした気分にさせてくれる。
9月から始まるワールドカップ・アジア予選に向けて、
「いい感じ」のチーム状態となった。
しかしことサッカーに関しては、自前ではなく、
古くはクラマー氏以来、
ヨーロッパに借りをつくりっぱなし。
香川のドイツ、ザッケローニのイタリア。
日経のサッカー専門名物記者の武智幸徳は、
「日本には香川という決め手があり、
韓国にはなかったということ」
絶賛。
私はお膳立てをした遠藤、李もよかったし、
長谷部が良い動きをしたと思う。
2点目も清武のお手柄。
本田の得点も、彼らしい存在感。
ディフェンダー・ミッドフィルダー、
あとから出た選手を含めて、
全員で韓国をゼロに抑えた。
つまりはチームの勝利。
それが良かった。
菅直人はなでしこジャパンに国民栄誉賞を出すらしいが、
サムライ・ジャパンもいい線、いってる。
「女子供」だけでないところを見せてくれた。
スポーツに関しては、
気分のいい、この頃だ。
あとはアメリカでのゴルフに、
池田勇太あたりが活躍することだろう。
甲子園球児たちのひたむきなプレーは、
もう、言うことはないし。
ただ、応援しつつ、楽しむだけ。
「赤勝て、白勝て、どっちも勝て」
さて、日経新聞コラムの『大機小機』。
コラムニスト五月氏が、
「キャッシュ・イズ・キング」のタイトルで書く。
パナソニック創業者と呼ぶよりも、
松下電器創業者というほうがふさわしい。
あの松下幸之助さんの大切な教えの一つ。
「経営はお金だ」
「最終的にお金がたまっていかない経営は、
どこかおかしいというもの」
そのエピソード。
「決算を締めた翌日、幸之助さんが突然、
大金庫がある財務部の部屋に入ってきた」
そして言った。
「私のカネを見せてくれ」
ん~、オーナーシップ経営。
「財務部長は金庫を開けて
銀行預金や手形、現金などの有り高を
冷や汗をかきながら説明した」
これ、貸借対照表の勘定科目。
「翌期からは決算が締まると
利益よりまず『お金』の残高の報告をした」
営業利益、経常利益は損益計算書の科目。
コラムニストは言う。
「経営とは将来キャッシュフロー(現金収支)の創出である」
「キャッシュフロー経営とは結局、
幸之助さんのいう『お金が大事』の経営に他ならない」
取り分けて、サブプライムローンの破たんやリーマン・ショック以降、
経営者の価値観は「キャッシュ・イズ・キング」に傾斜してきた。
「その戦略の根本にあるのが、
貸借対照表(バランスシート)を軸にした経営」
私はこの面ではすぐに、
岡田卓也イオン名誉会長の経営を思い出す。
『岡田卓也の十章』 (㈱商業界刊)
私が古巣に置き土産にしてきた単行本。
岡田さんが戦後の焼け跡の蔵から発見したもの、
それは先代の残した「見識べ大福帳」という複式簿記だった。
ここから岡田屋、ジャスコ、イオンを通じて、
岡田さんはバランスシート経営を貫く。
イトーヨーカ堂創業者の伊藤雅俊さんも、然り。
ダイエー、西友、マイカル、様々な企業があったが、
結局、残ったのはセブン&アイとイオン。
両社ともに、創業者が貸借対照表経営派だった。
コラムニストは言い切る。
「経営革新は損益計算書(PL)からは生まれてこない」
「PLから生まれるのは改善にすぎず、
抜本的に企業体質を変化させるには、
トップが主導しBSの構造を変えていくことが不可欠」
ピーター・ドラッカー先生は、
経営革新、すなわちイノベーションを、
次のように表現する。
「人的資源や物的資源に対し、
より大きな富を生み出す新しい能力をもたらすこと」
<マネジメント・エッセンシャル版>
ここでいう「富」こそ、
まさに松下幸之助の「お金」。
五月氏は、バランスシート経営からしか、
イノベーションは生まれないと言う。
「たとえば、棚卸し資産を劇的に削減しようと目指すとき、
単に月末の在庫残高を少なくするだけでは無理である」
私は『食品商業』編集長を務めていたときのことを思い出した。
「商品回転率を高める」という特集を組んだ。
あるコンサルタントの原稿に、
「奥の手を披露しよう」とあって、
「期末の棚卸寸前の店頭在庫金額を減らせ」
といういうテクニックが開陳されていた。
私がバッサリと、
そのフレーズを切り捨てたことは言うまでもない。
「生産工程での最初のインプットから最終商品のアウトプットまで、
全ての部門で合理化、効率化を進め、
リードタイムを全体で縮める必要がある」
「消費者に届くまでの流通在庫や
物流への取り組みも忘れてはならない。
そうした過程で抜本的な経営革新は生まれてくる」
コラムニストは結ぶ。
「いかなる事業、いかなる地域においても、
経営理念とともにバランスシート中心の経営は、
いつの時代も普遍の要諦である」
キャッシュフロー経営、
バランスシート経営、
「お金の経営」。
「富の創造」
コラムニストは結ぶ。
「いかなる事業、いかなる地域においても、
経営理念とともにバランスシート中心の経営は、
いつの時代も普遍の要諦である」
いささか興奮気味か、
五月氏、文章が乱れる。
「いかなる事業、いかなる地域、いつの時代」と、
並べねば文章にならない。
そのあとで、こう結ぶ。
「バランスシート中心の経営は、
経営理念とともに普遍の要諦である」
これが結城義晴の文章法だが、
それはさておいて、
言わんとすることには全くの同感。
菅直人の延命策の万策は、
「期末在庫金額を減らせ」のごとき、
手練手管だった。
いま、日本国にとって必要なのは、
バランスシート経営と理念経営である。
さらに、サムライ・ジャパンのごとき、
全軍一致のマインドである。
<結城義晴>