テスコジャパン撤退の考察と「高い障壁」vs「展望のあるマーケット」
台風12号。
大型なれど、
ゆっくり歩き。
粘る。
菅直人前首相のごとく。
菅は小型だったが・・・。
この台風が行ってしまったら、
秋がやってくる。
東日本大震災のあった年の最後の夏を、
台風によって実感することになる。
大型の台風。
くれぐれも用心を。
さて、イギリスのテスコ。
日本ではテスコジャパンの法人名で展開。
その実態は、
シートゥーネットワークやスーパーフレックを買収した129店。
店名は「つるかめランド」、「テスコエクスプレス」。
このテスコが、「日本事業からの撤退」を発表。
売却先をどこにするかの検討に入る。
撤退の理由。
「中長期的にビジネスを拡大する展望が
うかがえないため」
日本のマーケットへの対応はテスコでさえも、
難しかったということか。
今後のアジア戦略は、
「成長の見込める地域」に狙いをつけ、
そこに資金、人材を集中させる方針。
テスコは世界14カ国で約5400店舗を展開中。
世界第1位の小売業ウォルマートよりも、
第2位のフランスのカルフールよりも、
「現地化」が巧みなコングロマリットとして知られる。
2011年2月期の売上高は676億ポンド(約8兆4353億円)。
世界小売業ランクでは、
第3位、アメリカのCVSケアマーク、
第4位、ドイツのメトロに次ぐ第5位。
「ウインブルドン方式」と呼ばれる考え方で、
現地の人材を最大限に活用して、
現地に溶け込む政策は、
国際小売業の中で最も柔軟と言われた。
日本には企業買収で進出したが、
その買収先とミスマッチもあり、
結局、飛躍できなかった。
外資小売業の日本上陸の歴史。
1998年、コストコ。
福岡のトリアス久山に出店。
現在、9店舗で、すべて黒字の成功。
2000年、フランスのカルフール、
幕張に出店。
私は「正体見たり、カルフール」の特集を、
『販売革新』誌上で展開。
この年、ドイツのメトロもキャッシュ&キャリー業態で上陸。
メトロは日本に類似例がほとんどない異業態での進出。
2002年、ウォルマート、西友と資本提携して参入。
2003年、テスコがシートゥーネットワークを買収して日本上陸。
2004年、そのシートゥーネットワークに、
千葉県のスーパーフレックを買収させて拡大。
ここまでが上陸の歴史。
しかし翌2005年、カルフールは、
店舗をイオンに売却して撤退。
カルフールは一番主義で、
「真っ先進出、真っ先撤退」を繰り返してきた。
2011年の今になって、
テスコが撤退表明。
フランスのカルフールとイギリスのテスコが撤退、
アメリカのウォルマートは苦戦続きながらも維持、
ドイツのメトロ、アメリカのコストコは一応の成功。
5者3様の結果を招いて、
結論は持ち越し。
まあ、当たり前の中間総括といったところか。
撤退の理由に挙げられているのが、
一般には主に2つ。
第1は、日本の「消費市場が難しい」という論拠。
もちろん食生活に関して、
「生魚」を食べるなど鮮度にうるさい国民性は、
欧米の小売業にとっては困難な障害だろう。
しかしコストコは見事に成功している。
外食産業でもマクドナルドやケンタッキーフライドチキンは、
うまくいっている。
だから、テスコやカルフールがこの面で躓いたというのは、
正当な撤退原因ではない。
第2は、日本の「商習慣の違いの壁が高かった」という点。
日経新聞は「とりわけ主力の加工食品が欧米と違い、
過当競争で利益率が低いほか、改廃が激しい」とする。
もちろんそれもあろう。
しかしこれもコストコやメトロは、
加工食品を大量に扱っている。
特に前者は取引慣行にコストコ方式を持ち込んで、
大きな成果を上げている。
テスコが、日本の商慣行を、
乗り越えられないはずはない。
商慣行や法律の問題のリスクだけ考えると、
中国のほうがむしろ、断然大きい。
例えば韓国では、
カルフールやウォルマートが撤退したが、
テスコだけはサムソン商事と組んで、
「ホームプラス」というハイパーマーケットを開発し、
マーケットに定着させている。
一方、アメリカでは独自資本で進出し、
フレッシュ&イージーという小型店を開発。
200店弱まで店舗網を広げ、
「400店になったら黒字化する」と意気軒昂。
なぜこうもあっさりと、
日本に見切りをつけたのかは、
理解しがたい。
やはり発表の額面通り、
日本は中長期的にみて、
「拡大する展望のうかがえないマーケット」なのか。
だとすると日本企業にとっても、問題は深刻だ。
だが私は、それよりも、
「困難を乗り越える内部材料」が、
テスコジャパンにそろっていないという条件が、
本当の撤退理由だろうと思う。
海外進出の場合、
ふたつの要件が考えられる。
第1は、独自の資本で行くか、
第2は、確かな提携先と組むか。
合弁企業をつくるにしても、
提携するにしても、
相手先選びを間違えば、
取り返しのつかないことになる。
テスコジャパンはその失敗の例となった。
ウォルマートの提携先も、
「ボタンのかけ違え」だったが、
ひどく苦労しながらも、
展望が見えるところまでこぎつけてきた。
日本の消費市場と商慣行が、
外国資本から見て難しいのならば、
それは参入障壁となって、
日本企業にとっては好都合だ。
しかしテスコが「展望のないマーケット」だと考えたとしても、
ウォルマートは「展望」を見ていることになる。、
こう考えると複雑な思いもするが、
参入障壁が高いよりも、
展望のあるマーケットのほうが望ましい。
これからは小売業の顔ぶれが減っていく。
その減っていく顔ぶれの中にテスコがいたということだ。
あなたの会社が、
テスコと同列にならないことを祈るのみ。
コストコのメンバーシップホールセールクラブ、
メトロのキャッシュ&キャリー。
日本にない業態やフォーマットは残る。
「総合スーパー」や「ミニスーパー」は、
腐るほどある。
それは残らない。
価値あるものには、
高い障壁も、
何でもないのだ。
<結城義晴>
2 件のコメント
結城先生へ
昔々 カルフールの日本上陸に驚き、オープン後間もなく博多から幕張まで店舗視察に行ったことを懐かしく思い出しました。
お盆に近隣の西武に買い物に行きましたが、節電の為か店内が非常に暗く、ウォルマート仕様?の黒塗の什器が尚更その薄暗さを際出せています。
「価格の安さNo1」のPOPばかり目立ちました。
対象的に8月31日にオープンした近隣のミニストップは、クリンリネスが行き届いた店内に、前進立体陳列が徹底され、デザート類も豊富で品揃えが良く(私にとって)店員の人たちも本部からの応援の人たちなのか、挨拶・接客が素晴らしく一遍でファンになりました。
いまちゃん、ご報告感謝。
節電のために照明を落とす、そのやりかた。
もっともっと工夫すべきでしょう。
新店のミニストップ、基本に忠実で、
それが今、小売業の強さなのでしょう。
震災の後、様々な変化がありますが、
総じて小売業は、良い方向に来ていると思います。