「健全な中間層は経済成長の果実」と宇都宮店舗クリニックの「ディスカウント派と真ん中派、中の上・上の下派」
台風12号、日本列島に、
またしても大きな被害をもたらして去った。
関東地方の今日は、
やっと台風一過の日本晴れ。
しかし台風13号が日本の東、太平洋上にある。
日本は地震国でもあるが、台風国でもある。
被害に遭われた人々に、
心よりお見舞い申し上げたい。
今朝の日経新聞コラム『大機小機』。
コラムニスト蜻蛉氏が「中間層の反乱」と題してコメント。
「最小不幸社会」を謳った前首相に対して、
野田佳彦首相は、
「中間層の厚みが増す日本をつくる」
「はるかにイメージが湧く」と蜻蛉氏は評価。
これは小売流通業・サービス業にとっても、
あるべきことであり、ありがたいことだ。
「社会の広範で健全な中間層は
経済成長の果実である」
「財政立て直しのための消費増税」は、
「広範な中間層に負担を強いる」
しかし「これ抜きに中間層を維持できない」
それを野田さんは「率直に語らなければならない」
「鳩山由紀夫元首相の荒唐無稽な言動に、国中があきれた。
他者を指弾するばかりで一向に前に進まない菅直人前首相の政治にも失望した」
蜻蛉氏は「中間層」を失望させるな、と訴える。
それなしには「中間層の反乱」が起こる。
さてその中間層が本来、けん引する消費。
これも日経新聞の8月インターネット調査。
東京都、愛知県、大阪府の20代、40代の男女1000人の回答。
都会の消費者の二つの世代の調査。
タイトルは「震災6カ月 消費の行方(上)」
「震災後の2~3カ月に『消費を手控えた』人は55.1%」
どのくらい控えたか。
「震災直前の70~90%未満」が40.3%、
この回答が最多。
全体平均は震災後に約85%の消費支出だった。
世代別にみると、
40代が6割、
20代は5割弱。
「現在の店頭では、若年層の購買行動が比較的目立つ」
「『ハレ消費」」の分野で、消費意欲回復の兆し」
ハレ商品とは「嗜好品や海外旅行など非日常の商品」
今後の消費のキーワードとして「低価格」を挙げる人、
20代では、42.2%。
40代は6ポイント低い38%。
20代は、「貯蓄意欲」は高く、
「メリハリ消費」の意識が強い。
これに対して「バブル世代の40代」、
「不要不急の商品の購入を手控える傾向」。
アパレル・ファッションでも、
「40代向けブランドの回復が鈍い」
それは「景気の先行き不透明感も購入を控える要因」
電通総研の四元正弘氏は、指摘する。
「現状では“プチぜいたく”にとどまっている」
つまり「全般的な回復の腰折れ懸念」の指摘。
「日本人全体に震災後のストレスはたまっているが、
そのはけ口は”プチぜいたく”」
この調査から読み取れるトレンドは、
「メリハリ消費」と「プチぜいたく」か。
私はこの傾向の中で、
顧客が「賢く」なっていると思う。
賢い消費者に対しては、
賢い商人である必要がある。
我田引水のようだが、
「知識商人」の出番であるということだ。
さてさて先週木曜日9月1日、
商業経営問題研究会(RMLC)の店舗クリニック。
最初の視察店は百貨店・福田屋のFKDインターパーク店。
福田屋は宇都宮を地盤とする百貨店。
宇都宮市と河内郡上三川町にまたがる複合型工業団地に位置する。
このエリアは北関東自動車道宇都宮上三川ICをはじめとする交通アクセスがよい
だから大型商業施設が次々に出店している。
集客力のある地域であると同時に、競合も厳しい。
FKDインターパーク店は、
郊外型の百貨店として話題になった店。
次に向かったのは、隣接エリアにあるジョイフル本田宇都宮店。
㈱ジョイフル本田は、巨艦型ホームセンターを15店展開するが、
栃木県では初出店。
その一角にあるのが㈱ジャパンミート宇都宮店。
生鮮強化のディスカウントタイプのスーパーマーケット。
ジョイフル本田の抜群の集客力のご利益で、
「売上げはすべてをいやす」の生鮮・日配・惣菜主体の安売り店舗。
宇都宮市から真岡市に移動し、
たいらやのプライムマート真岡店。
512坪。
その真岡エリアの競合状況を視察。
㈱とりせん真岡店。643坪。
イオン㈱のザ・ビッグエクストラ真岡店。
スーパーセンターをリニューアルした4999坪。
その食品売り場の入り口。
㈱オータニのフードオアシス荒町店。643坪。
とりせん善光寺店。875坪。
真岡市から芳賀町に移動し、
たいらや芳賀店。
カワチと地元商業者との出店による、いわゆるNSC。
606坪。
そして宇都宮市にもどり、
㈱カスミの「フード・マーケット」テクノポリス清原店。
672坪。
最後に栃木を本拠とする㈱かましんの清原テクノ店。
700坪。
10店舗を一気に回った。
ディスカウント型のイオン・ザ・ビッグ・エクストラとジャパンミート。
どちらかといえば、高級型の福田屋百貨店。
「高質スーパーマーケット」と呼ばれる中の上、上の下を狙うのが、
たいらや、プライム・マート、オータニ・フードオアシス。
真ん中を抑えようというのが、
カスミ・フード・マーケット、とりせん、かましん。
ちょっと乱暴で、まことにおおざっぱだが、
こんな分類ができようか。
野田佳彦首相ではないが、
「中間層の厚みが増す日本」となれば、
真ん中派がマス・マーケットを占める。
そうでなければ、
「ディスカウント派」と「中の上・上の下派」とが、
マーケットを二分する。
もちろんおおざっぱな価格帯だけでの論議は、
危険であることは承知の上で、
そんな構造が見える。
宇都宮市の郊外や真岡市では、
「高売りの店」は生き残れない。
福田屋百貨店も限りなくスーパーマーケットに近寄っている。
「中の上・上の下派」も、
「コモディティ・ディスカウント&ノンコモディティ・値ごろ戦略」のマージンミックスで、
利益を確保する。
ディスカウント派は、徹底したローコスト、
そして物量で薄利多売を図る。
それぞれの派の中での優劣が、
明確になってきた。
すなわち「ポジショニング競争の時代」に、
入ったということだ。
宇都宮郊外はまるで、
アメリカのサバブ・エリアのようになってきた。
日本中に広がりつつあるのだろう。
そんなことを強く感じたクリニックだった。
<結城義晴>