コーネル・ジャパン第3期9月補講「ヤオコー狭山物流センターでの実習」で学びとったイノベーション
「お客の支持を得る店は、
レベルが高い低いよりも、
そのレベルが高くなろうとしている店、
高くなりつつあるのがお客にわかる店なんだよ」
昨日のブログで報告した宇都宮クリニックの最中、
10店以上の店を回りながら、
流通仙人の杉山昭次郎先生が漏らした言葉。
さすがに流通仙人、
プロのコンサルタント、
商人舎最高顧問。
このクリニックは、毎年の夏の恒例行事。
現在は私が座長を務める商業経営問題研究会だが、
もともとは杉山先生が座長だった。
84歳になりながら、
「試行錯誤することが成長の源だ」と、
仙人は最近、気が付いた。
その含蓄のある言葉。
レベルが高まりつつある店。
レベルアップがお客にわかる店。
小さくともよい。
日々、レベルが上がっている店。
クレイトン・クリステンセンの持論。
「持続的イノベーション」
その意志をもつ店、
それが顧客にわかる店。
店に限らない。
人間や組織にも、
このことは当てはまる。
自分の部下でも、
自分の学生でも、
友人でも知り合いでも、
もともとのレベルが高い者は、
それはそれで評価する。
しかし、低い者が、
努力をして自分を高めようとしている。
実際に、努力によってレベルが上がってきた。
そんな人間、
そんな組織が、
私は好きだ。
これまでも好きだった。
これは私に限らず、
店に対する顧客の評価にも通ずる。
逆に停滞している店、
レベルダウンしている店。
お客は、そんな店から去っていく。
商品の品質や鮮度でもよいし、
クレンリネスでもよい。
プロモーションでも、
ホスピタリティでもよい。
セブン&アイ・フードシステムズ社長の大久保恒夫さんは、
「まず、挨拶」と言う。
挨拶のレベルが、
店全体で、
グングン高まっている店。
「挨拶」は誰にもそれが、よくわかる。
必ず、地域のお客から支援してもらえる。
さて昨日から、
コーネル大学RMPジャパン第3期の補講。
東日本大震災で延期となっていた情報システムと物流問題。
今年も埼玉県川越駅に集合し、
バスでヤオコーの狭山物流センターに移動。
センター内の会議室をお借りしての講義となった。
第一講座の講師は㈱プラネットの玉生弘昌社長。
「流通業界におけるITシステム活用の常識」。
東日本大震災で、
情報や物流のシステムは多大な被害をこうむった。
その前提に立った講義となった。
まずセシウムをはじめとする放射線汚染の誤解、
そして正しい知識の必要性。
専門家の内容をわかりやすく語ってくれた。
次に事業継続を脅かすさまざまな危機に、
いかに対処すべきか。
中央集権より現場自立、
中央依存より相互依存、
そのための現場力の条件、
こうしたことを整理したうえで、
日本の流通におけるネットワークの進展、
より良いEDIを実現させるための標準の三要素、
そして情報システムのレガシー問題とオープン系の問題。
自らの体験や実績をもとに、
これ以上ないというほどにわかりやすい講義が展開された。
私が最後に、CIOの必要性を付け加えさせていただいて、終了。
CIOとはチーフ・インフォメーション・オフィサー。
情報担当取締役のことだが、
役員の中に一人、専門家が必要となる。
玉生さんの持論でもある。
講義を終えた玉生さんを囲んで、
荒井伸也首席講師と写真。
控室で荒井先生から質問。
「経営者はいつ、どんな時に。
情報システム投資をしたらよいのか」
玉生さんの答えは、
「そのためにCIOが必要」というもの。
情報の専門家を経営者に育てるか、
経営者が情報リテラシーを学んでCIOになるか。
道は、どちらかしかない。
それがコンピュータ・リテラシーの問題だ。
すなわち、コンピュータを読み書き算盤のように使いこなすこと。
決して難しいスキルではない。
玉生社長を、
ヤオコー顧問の大塚明さんが送ってくれた。
日本スーパーマーケット専務理事。
大塚さんもコーネル・ジャパンの講師。
第二講座の講師は、臼井秀彰さん。
チェーンストアの物流コンサルタントの第一人者。
「スーパーマーケットのロジスティクス問題」がテーマ。
ロジスティクス戦略の立案、
センター開設の目的と課題などを、
実務的な視点から話してくれた。
センターフィー問題は数値を示しながら課題を指摘。
小売業は、物流機能を事業に加えた新しいビジネスモデルを作るべきだ。
これが臼井さんの主張。
私は講義の初めに「真摯に受け止めてほしい」とくぎを刺した。
第三期生はどのように受け止めただろうか。
そしていよいよ、ヤオコー物流センターの視察。
はじめに大塚明さんからの解説。
さらにヤオコーロジスティックス推進部長の笠本秀之さんのコメント。
笠本さんは㈱ヤオコービジネスサービス常務取締役を兼務する。
そのうえで、物流センター運営に携わる皆さんが、
センター施設を案内してくださった。
ヤオコー狭山センターはグロッサリーセンターとチルドセンターからなる。
昨年12月に2300坪を増床し、3万7000坪に拡張。
現在、狭山センターでグロッサリーは64店舗、
チルドは47店舗に供給するが、
増床強化によって70店ほどにまでキャパシティが広がった。
そのセンター施設とオペレーションを、
2チームに分かれて解説してもらう。
小分けピッキングには興味津々の三期生。
3温度帯で管理されるチルドセンター。
ここでは精肉と鮮魚(おもにマグロ)の検質も行われる。
1時間ほどの視察を終えて、再び会議室にもどり、
それぞれの部門担当の方から詳しく説明していただいた。
最後に質疑応答。
三期生の質問に丁寧に丁寧に答えてくださった。
物流センター担当部長の本城宗尚さん、
グロッサリーセンター長の加藤さん、
狭山チルドセンター長の中下さん、
精肉マネジャーの水野尚さん、
鮮魚マネジャーの椿さん。
皆さんに心から感謝。
講義が終了したのは午後8時。
ヤオコーの皆さんもご一緒して、
近くの豆腐料理の「梅の花」で夕食。
お酒もいただき、みんなで談笑・懇親。
最後に副学長からのお礼の言葉。
「ヤオコーには持続的なイノベーションがある。
センターや物流に関しても、
1年間に、その変化がよくわかる」
「シンプルにシンプルに変わっている」
「このイノベーションこそ、
私たちがヤオコーから学ぶものだ」
流通仙人の言葉が、
ヤオコーの中で実現されている。
締めのご挨拶は笠本秀之さん。
「シャン・シャン・シャン、
シャシャシャン・シャン」の締め。
本庄の生まれで、
かの地の締め方だそうだが、
これもシンプルで、とてもよかった。
感謝をこめて笠本さんへ『店ドラ』をプレゼント。
そして固い握手。
すべての皆さんに、
心から感謝。
私は、
イノベーションを続ける者が、
大好きだ。
それを阻む者とは、
闘い続ける。
そんな意を強くした一日だった。
<結城義晴>