世界最大食品展示会アヌーガで商談[1]15万人参集メッセの全貌
昨日の夕刊と今朝の朝刊は休刊。
そこで日経電子版に面白い投稿。
松井証券社長の松井道夫(まつい・みちお)さん。
私の一つ下の1953年、長野県生まれ。
日本郵船に入社し、義父の経営する松井証券に転職。
95年、代表取締役社長に就任後、
98年、日本初の本格的インターネット株取引を開始。
「日本版ビッグ・バン」を牽引。
「証券界の革命児」あるいは「証券界の異端児」。
革新的なサービスを次々に導入するもすべて真似され、
昨今は「松井の時代も終わったね」といわれるが、
闘志は衰えていない。
電子版の記事から抜粋した松井さんのプロフィール。
その松井さん自身が投稿。
イノベーションとコモディティに関して、
実に興味深い話。
「松井証券が草分けとなったネット証券の10年間を振り返ると、前半5年は、
従来型の対面営業をする大手証券とネット証券の競争だった」
後半5年は、
「予想以上のスピードでネット取引が普及すると、
参入障壁の低さゆえに次々と新規参入があり、
必然的にネット証券同士の手数料競争になった」
「私は10年前、
手数料自由化とインターネット普及という二つの大きな波を利用して
イノベーションを起こしたつもりだったが、何のことはない、
それがアッという間にコモディティー化してしまった」
「仕組みのかなりのものは松井独自で考えたものだったが、
パテントを取らずに公開してしまった。
でも、公開したからこそ、
予想をはるかに上回るスピードで普及したのだから、
文句は言えない」
イノベーションは盗まれる、
真似られる。
しかし、
「イノベーションは参入障壁を崩し、
第一幕目は必ず価格の過当競争になる」
どんな分野でも同じ。
「安さだけを武器にシェア競争をした末に、
体力の劣るプレーヤーから脱落し、
第一幕は下ろされる」
そのあとが重要。
「続く第二幕は単純な価格競争ではなく
智恵で勝敗が決まる」
そのイノベーションの本質。
「イノベーションは常識を覆すことだと私は思っている」
そして決意表明。
「大正7年創業以来、
松井証券が守ってきた矜持(きょうじ)は
『他者の真似はしない』」
最後に、
「真似しての商売など、
そもそも面白くない」
拍手。
さてドイツの旅。
二日目は動き回った。
歩き回った。
朝一番でデュッセルドルフのチャイナ・クラブ。
ここでセミナー。
最初に私が30分ほど、
全体像を話す。
ゲスト講師は、藤田孝司さん。
元江崎グリコフランス駐在所長。
その時代、私はこのアヌーガで、
藤田さんに会っている。
藤田さんは現在、
JAPAN FOODINGという会社の社長。
そしてコンサルタント。
ヨーロッパの食品業界と流通業界の最新の動きを、
丁寧にレクチャーしてくれた。
さらにアヌーガやシアルでの、
商談、情報収集のコツを伝授。
貴重な講義だった。
藤田さんとJAPAN FOODINGマーケティングディレクターの末永雅美さん。
心から感謝。
すぐにバスに乗り、
アウトバーンをケルンへ。
見えてきましたライン川。
その向こうにケルン市街と、
あのケルン大聖堂。
ライン川に架かる橋を渡ると、
ケルンメッセ会場。
道路標識にも、
アヌーガのお知らせ。
この掲示の下で、車は長い行列の大渋滞。
そしてアヌーガの北入口に到着。
胸がわくわくしてくる。
広大なケルンメッセ会場。
万国旗が掲げられている。
何しろ世界最大の食品展示会。
アヌーガの旗がひらめく。
そのアヌーガのトレードマーク。
会場に入ると、素晴らしい空間。
パネルで全体像が掲示されている。
入り口を入る。
案内嬢と写真。
9つのチームに分かれて、
視察し、情報収集し、商談する。
いざ出発。
アヌーガは、1919年の第1回以来、
奇数年に開催されている。
もうひとつの食品展示会パリ・シアルは偶数年。
だからヨーロッパでは、毎年、
世界規模の食品見本市と商取引が行われていることになる。
アヌーガには、5大陸100カ国6500社が出展し、
世界中から15万人のビジターが参集する。
出展企業の82%、来場者63%がドイツ国外からの参加というから、
まさにグローバルな食品・飲料の最新トレンドが発信され、収集され、
取引されるプラットフォームとなる。
そのアヌーガは2003年から、
「10の専門見本市を一堂に会する」をコンセプトに変わった。
それぞれのテーマにそって、
市場をグループ分けして展示する。
1.ファイン・フード(こう呼ばれつつ、国別ブースがある)
2.チルドおよびフレッシュフード
3.ミート
4.フローズン・フード
5.デアリー(乳製品)
6.パン・ベーカリーおよびホットドリンク
7.ドリンク
8.フードサービス
9.リテールテック
10.オーガニック
これらに共通する将来トレンドテーマは9つ。
1.グルメ食品および特産品
2.ハラル・フード(イスラム教徒が食べることのできる食品)
3.オーガニック食品
4.ベジタリアン・フード
5.健康食品および機能食品
6.コーシャ食品(ユダヤ教徒用の食品)
7.フィンガー・フード(片手で一口で食べられる食品)
8.プライベート・ブランド
9.原材料
そうした見本市会場の紹介パネル。
11号館までの広大な展示会場。
2号館、3号館、4号館、5号館、そして10号館は2フロア。
11号館は3フロア。
ひとつのフロアが東京ビッグサイトの東館をはるかに超える規模だから、
日本のスーパーマーケットトレードショーやフーデックスの10倍以上はある。
ウェブセンター。
コカコーラがスポンサーのコンビニ。
コピーセンター。
会場案内パンフレットが至る所においてある。
10のカテゴリーと9のトレンドごとに、
1冊ずつの小冊子になっている。
誰でも持っていくことができる。
サポートプログラムの会場。
小さなセミナーが、ミニシアターのように、
ひっきりなしに行われている。
北のはずれの8号館から視察開始。
「テースト11」というコンセプトブース。
2011年段階のトレンド商品の代表が展示されている。
高い天井、快適なコンコース。
7号館はフードテック&フードサービス。
フードサービスは今回、新たに組み込まれたテーマ。
8号館と7号館の間の中庭。
6号館と10号館が向かい合って、
広大なパビリオンを形成し、
両者にミートカテゴリーのブースがこれでもかと並ぶ。
その前のコンコースを、
見よ、この人、人、人。
広大な会場にもかかわらず、どこも人でいっぱい。
さまざまな国から、食品産業関係者が集まってくる。
左は10号館、右が5号館から4号館へ。
5号館1階は生鮮・デリ、そしてオーガニック。
2階は、それでもかとミート。
4号館は1階2階とも、
冷凍食品・アイスクリーム。
10号館は2フロア。
10号館1階は乳製品。
2階はファイン・フードすなわち国別ブース。
10号館と11号館の間の中庭でひと休憩。
見本市で収集したパンフレットをキャリーで運ぶ人。
11号館は3フロアとも国別パビリオン。
11号館から3号館へ。
3号館1階は国別展示会場、
2階はパン・ベーカリー・ホットドリンク。
2号館へ。こちらも3号館と同じ構成。
1階は国別パビリオンのファイン・フード、
2階はバン・ベーカリー、ホット・ドリンク。
チームメンバーと遭遇。
そして南の端の1号館。
ここにはアジアの国のブースが並ぶ。
南の端まで行って、取って返して、
再び北の端の8号館まで。
歩き疲れ、食べつかれ、
ゴルフのワンラウンド並みの体力消耗。
初日の視察を終えて、
アヌーガのトレードマークの前で全員で記念撮影。
60人ともなると、顔は見えない。あしからず。
再びライン川に送られつつ、
アウトバーンを走り、デュッセルドルフへ。
朝と同じチャイナ・クラブに戻って、
その会議室で結城義晴の第1回講義。
「ヨーロッパ小売業徹底解説」
食品産業のグローバルな課題とトレンド、
その中でアヌーガが果たしている役割、
アヌーガで学び、ビジネスに生かすための視点、
そしてメトロ、アルディといったドイツの小売業をガイダンス。
アヌーガ視察の疲れもある中、ご清聴に感謝。
松井道夫さんは、
イノベーションのあと、
必ずコモディティ化が起こると語る。
一方、アヌーガの広大な会場に並んでいる商品は、
すべて、ノンコモディティ商品だ。
だからこそ15万の人が引き寄せられ、
食品産業に携わる世界中の人々が集う。
ノンコモディティを求めて。
しかしノンコモディティはいつも多産多死。
ノンコモディティとして日の目を見る商品はごくわずか。
ここから宝を探し出すのが、
バイヤーの仕事であり、
醍醐味である。
その魅力あふれるブースと商品群の紹介は、
明日に続く。
乞うご期待。
<結城義晴>