『日経MJ』小売りトップたちの下期消費の見方とコーネル大学ジャーマン名誉教授の「ポジショニングのすすめ」
横浜も東京も、今日は、
最高気温が20度をきって19度。
クールビズの続きで、
スーツにノーネクタイで家を出たが
北風小僧の寒太郎まで吹いているので、
ちょっと肌寒い。
そこで鞄の中からネクタイを取り出して、
駅の待合室で鏡に向かって、締めた。
少し暖かくなった。
そんな季節の変わり目です。
かつて「日経流通新聞」と称していた『日経MJ』。
MJは「マーケティング・ジャーナル」の頭文字。
その日経MJ 、このところ、とてもいい。
デスクが、いいのでしょう。
今日の一面左肩に「小売りトップの見方」
今年下期の消費と営業に対するそれぞれの見方・考え方。
「業種によって温度差がある」
イオン社長の岡田元也さん。
「下期も上期同様、業績好調は続く」
セブン&アイ・ホールディングス社長
村田紀敏さん。
「新しいもの、新たな提案をすれば消費は動く」
ファミリーマート社長の上田準二さん。
「消費者は無駄な出費は控えている。
ただし、低価格品のみを買うことには飽きており、
週何回かは付加価値の高い商品を買う」
高島屋社長の鈴木弘治さん。
「下期の百貨店業界の売上高は
前年同期比2%ほどのマイナスと見ている。
楽観できる状況ではなく、
今後も回復基調で上向くとは考えていない」
一方、ファーストリテイリング会長兼社長
柳井正さん。
「秋冬からの方が経済環境は厳しくなる。
景気が悪くても成長していかないといけない」
最後にライフコーポレーション会長
清水信次さん。
「上期は東日本大震災の特需を除いても、
健闘したが、下期は厳しい」
総合スーパーやコンビニの経営者は下期も好調が続くとみる。
百貨店、ファッションのトップは厳しいと考える。
日経リサーチが集計を担当した日経DIの10月調査は、
「消費、緩やかに回復」
日経MJ の三面。
一方、世界のトレンドを言い当てるのは、
ポール・グルーグマン教授。
「世界は50%以上の確率で、
景気後退に陥る」
それよりも気になるのは、
日本能率協会総合研究所の調査。
「買い物場所の使い分け調査2011」
そのものずばりのタイトルの調査だが、
それでもネーミングには一工夫ほしいところ。
これも日経MJの二面を占める。
関東・東海・関西の男女2000人以上から回答を得た。
年齢は15歳から69歳。
「買い物したいスーパー」を問う。
2009年お調査で一番多かったのが、
「商品が安い」だった。
ところが今回の2011年調査では、
「品ぞろえが多い」が一番で74%。
「商品が安い」は二番手。
逆転現象が起こった。
ついで「商品が新鮮」。
ここまで回答の70%台。
それから60%台に、
「品質が良い」「安心・安全」が来る。
東日本大震災を体験して、
日本人の購買に影響が出た。
それはリーマンショックの世界的金融危機の影響から、
次の段階に移ったことを意味する。
先週の金曜日21日に行われたコーネル大学セミナー。
名誉教授のジン・ジャーマン先生の講義は、
「食品小売業のトレンド」。
その結論は、「ポジショニング」の勧めだった。
私が最近言い続けていることとシンクロしていた。
まず、全ての業態が食品購買客を狙っている。
米国スーパーマーケットの来店頻度は週2.5回、
対してスーパーセンターやドラッグストアは月に1回。
ウォルグリーンはシカゴの10店舗で生鮮を品揃え、
2011年末までに400店に拡大する。
CVSファーマシーは生鮮食品を都市部の1400店に導入。
これは全体の20%に相当する。
ウォルマートの対極にあるターゲットは、
2012年末までに1300店舗で生鮮食品売り場を取り入れる。
食品を扱って、既存店売上高が6%改善。
さらにアリス・コム、アマゾン・コムなどネット通販で、
食品販売が増えている。
つまりは多くのチャネルで、
生鮮やデリを扱う。
購買頻度アップを狙う。
日本もまったく同じ。
ドラッグストア、ホームセンター、
家電・カメラ量販店、ディスカウントストア。
そのうえで、ソーシャルネットワークによって、
「価格の透明性」が飛躍的に高まった。
比較しやすい環境を手にした消費者と、
価格比較される食品リテイラー。
だからアメリカでは、
価格競争力のある企業の躍進が続く。
ウォルマート、アルディ、ウィンコ・フーズ。
ダラージェネラル、セーブアロット、ファミリーダラー。
一方、ホールフーズやウェグマンズのようなスペシャリストが、
立脚点を鮮明にして、「凛」としてマーケットに立つ。
コモディティ・ディスカウンター。
サービス&クォリティ・スーパーマーケット。
その間に、コンベンショナル型のスーパーマーケットが、
サンドイッチ状態。
彼らは従来から、
豊富な品ぞろえと鮮度・品質で対抗してきた。
しかしアメリカではこれが、
「コストの増加」を引き起こす原因となっている。
顧客が求めるのは、
(1)より安い価格
(2)より高い付加価値
(3)より速い対応
日本の「買い物場所の使い分け調査2011」は、
このジャーマン教授の指摘とは異なる。
しかし私はアメリカのポジショニング競争を、
日本の人々も知っておかねばならないと考える。
ジャーマン先生は言う。
「自身の正しいポジショニングが不可欠だ」
私はこれを「ポジショニング競争」と名付ける。
これは「コンテスト型競争」であって、
「レース型競争」ではない。
価格志向の企業群の中からも、
「レース型競争」から抜け出している者が出ている。
ここに気付かねばならない。
さて昨日25日は、
虎ノ門の日本チェーンストア協会の会議室をお借りして、
商業経営問題研究会(通称:RMLC)の10月例会。
商業経営問題研究会とは。
通称「RMLC」〈Retail Management Learning Circle〉。
小売業、流通業、商業に関して、
客観的・多角的・実務的な側面から研究し続けている会議体。
2003年、杉山昭次郎を中核として「杉山ゼミ」が発足し、
その後、故磯見精祐が座長となって「RMLC」へと発展。
2007年、磯見逝去の後、座長を結城義晴が引き継ぎ、
高木和成が代表世話人として今日に至る。
毎月、20日前後に4時間に及ぶ月例研究会を開催し、
鋭い切り口で問題提起し、問題解決への提案を続けている。
事務局は㈱商人舎内info@shoninsha.co.jp
<『1秒でわかる!小売業界ハンドブック』(東洋経済新報社刊)より>
代表世話人の高木和成さん。
現在、RMLCには20名ほどの会員が参加している。
毎月、10数名が集まっては、
そのときどきの小売流通業のテーマに関して、
ゲスト講師を招いたり、各自が研究や考察を発表したり。
そのあとで、ディスカッションする。
昨日は、は9月に行った栃木県宇都宮市・真岡市の店舗視察について、
山口紀生さんと小林清泰さんがそれぞれの視点で分析報告。
そのあと、和田光誉さんが、テスコ日本撤退を受けて、
外資小売業の現状と、その課題をレポートしてくれた。
午後1時半に始まり、終わるのは5時。
休憩はわずかに10分。
次から次に質問や意見が飛び交う。
㈱セイミヤの加藤勝正社長も、
潮来から駆けつける。
いつも真剣な議論が交わされる。
この商業経営問題研究会名で初めて出版されたのが、
『1秒でわかる!小売業界ハンドブック』
会員にとって、ひとつの成果物。
これからも、研究し、議論し
問題解決の道筋を提起する。
そんな活動を続けることで、
第二弾、第三弾の単行本を発刊したいものだ。
それはおそらく「ポジショニング競争への解」を、
もたらしてくれるものとなるだろう。
<結城義晴>