結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2011年10月26日(水曜日)

『日経MJ』小売りトップたちの下期消費の見方とコーネル大学ジャーマン名誉教授の「ポジショニングのすすめ」

横浜も東京も、今日は、
最高気温が20度をきって19度。

クールビズの続きで、
スーツにノーネクタイで家を出たが
北風小僧の寒太郎まで吹いているので、
ちょっと肌寒い。

そこで鞄の中からネクタイを取り出して、
駅の待合室で鏡に向かって、締めた。

少し暖かくなった。

そんな季節の変わり目です。

かつて「日経流通新聞」と称していた『日経MJ』。
MJは「マーケティング・ジャーナル」の頭文字。

その日経MJ 、このところ、とてもいい。
デスクが、いいのでしょう。

今日の一面左肩に「小売りトップの見方」
今年下期の消費と営業に対するそれぞれの見方・考え方。
「業種によって温度差がある」

イオン社長の岡田元也さん。
「下期も上期同様、業績好調は続く」

セブン&アイ・ホールディングス社長
村田紀敏さん。

「新しいもの、新たな提案をすれば消費は動く」

ファミリーマート社長の上田準二さん。
「消費者は無駄な出費は控えている。
ただし、低価格品のみを買うことには飽きており、
週何回かは付加価値の高い商品を買う」

高島屋社長の鈴木弘治さん。
「下期の百貨店業界の売上高は
前年同期比2%ほどのマイナスと見ている。
楽観できる状況ではなく、
今後も回復基調で上向くとは考えていない」

一方、ファーストリテイリング会長兼社長
柳井正さん。

「秋冬からの方が経済環境は厳しくなる。
景気が悪くても成長していかないといけない」

最後にライフコーポレーション会長
清水信次さん。

「上期は東日本大震災の特需を除いても、
健闘したが、下期は厳しい」

総合スーパーやコンビニの経営者は下期も好調が続くとみる。
百貨店、ファッションのトップは厳しいと考える。

日経リサーチが集計を担当した日経DIの10月調査は、
「消費、緩やかに回復」
日経MJ の三面。

一方、世界のトレンドを言い当てるのは、
ポール・グルーグマン教授。
「世界は50%以上の確率で、
景気後退に陥る」

それよりも気になるのは、
日本能率協会総合研究所の調査。
「買い物場所の使い分け調査2011」
そのものずばりのタイトルの調査だが、
それでもネーミングには一工夫ほしいところ。
これも日経MJの二面を占める。

関東・東海・関西の男女2000人以上から回答を得た。
年齢は15歳から69歳。

「買い物したいスーパー」を問う。
2009年お調査で一番多かったのが、
「商品が安い」だった。

ところが今回の2011年調査では、
「品ぞろえが多い」が一番で74%。
「商品が安い」は二番手。

逆転現象が起こった。

ついで「商品が新鮮」
ここまで回答の70%台。

それから60%台に、
「品質が良い」「安心・安全」が来る。

東日本大震災を体験して、
日本人の購買に影響が出た。

それはリーマンショックの世界的金融危機の影響から、
次の段階に移ったことを意味する。

先週の金曜日21日に行われたコーネル大学セミナー。
20111022103625.jpg

名誉教授のジン・ジャーマン先生の講義は、
「食品小売業のトレンド」。
20111022103608.jpg

その結論は、「ポジショニング」の勧めだった。
私が最近言い続けていることとシンクロしていた。

まず、全ての業態が食品購買客を狙っている。
米国スーパーマーケットの来店頻度は週2.5回、
対してスーパーセンターやドラッグストアは月に1回。

ウォルグリーンはシカゴの10店舗で生鮮を品揃え、
2011年末までに400店に拡大する。
CVSファーマシーは生鮮食品を都市部の1400店に導入。
これは全体の20%に相当する。

ウォルマートの対極にあるターゲットは、
2012年末までに1300店舗で生鮮食品売り場を取り入れる。

食品を扱って、既存店売上高が6%改善。

さらにアリス・コム、アマゾン・コムなどネット通販で、
食品販売が増えている。

つまりは多くのチャネルで、
生鮮やデリを扱う。
購買頻度アップを狙う。

日本もまったく同じ。

ドラッグストア、ホームセンター、
家電・カメラ量販店、ディスカウントストア。

そのうえで、ソーシャルネットワークによって、
「価格の透明性」が飛躍的に高まった。

比較しやすい環境を手にした消費者と、
価格比較される食品リテイラー。

だからアメリカでは、
価格競争力のある企業の躍進が続く。

ウォルマート、アルディ、ウィンコ・フーズ。
ダラージェネラル、セーブアロット、ファミリーダラー。

一方、ホールフーズウェグマンズのようなスペシャリストが、
立脚点を鮮明にして、「凛」としてマーケットに立つ。

コモディティ・ディスカウンター。
サービス&クォリティ・スーパーマーケット。
その間に、コンベンショナル型のスーパーマーケットが、
サンドイッチ状態。

彼らは従来から、
豊富な品ぞろえと鮮度・品質で対抗してきた。
しかしアメリカではこれが、
「コストの増加」を引き起こす原因となっている。

顧客が求めるのは、
(1)より安い価格
(2)より高い付加価値
(3)より速い対応

日本の「買い物場所の使い分け調査2011」は、
このジャーマン教授の指摘とは異なる。

しかし私はアメリカのポジショニング競争を、
日本の人々も知っておかねばならないと考える。

ジャーマン先生は言う。
「自身の正しいポジショニングが不可欠だ」

私はこれを「ポジショニング競争」と名付ける。
これは「コンテスト型競争」であって、
「レース型競争」ではない。

価格志向の企業群の中からも、
「レース型競争」から抜け出している者が出ている。

ここに気付かねばならない。

さて昨日25日は、
虎ノ門の日本チェーンストア協会の会議室をお借りして、
商業経営問題研究会(通称:RMLC)の10月例会。
20111026203502.jpg
商業経営問題研究会とは。
通称「RMLC」〈Retail Management Learning Circle〉。
小売業、流通業、商業に関して、
客観的・多角的・実務的な側面から研究し続けている会議体。
2003年、杉山昭次郎を中核として「杉山ゼミ」が発足し、
その後、故磯見精祐が座長となって「RMLC」へと発展。
2007年、磯見逝去の後、座長を結城義晴が引き継ぎ、
高木和成が代表世話人として今日に至る。
毎月、20日前後に4時間に及ぶ月例研究会を開催し、
鋭い切り口で問題提起し、問題解決への提案を続けている。

事務局は㈱商人舎内info@shoninsha.co.jp
<『1秒でわかる!小売業界ハンドブック』(東洋経済新報社刊)より>

代表世話人の高木和成さん。
20111026211642.jpg

現在、RMLCには20名ほどの会員が参加している。
毎月、10数名が集まっては、
そのときどきの小売流通業のテーマに関して、
ゲスト講師を招いたり、各自が研究や考察を発表したり。
そのあとで、ディスカッションする。
20111026211631.jpg

昨日は、は9月に行った栃木県宇都宮市・真岡市の店舗視察について、
山口紀生さんと小林清泰さんがそれぞれの視点で分析報告。
20111026203513.jpg

そのあと、和田光誉さんが、テスコ日本撤退を受けて、
外資小売業の現状と、その課題をレポートしてくれた。
20111026203526.jpg
午後1時半に始まり、終わるのは5時。
休憩はわずかに10分。

次から次に質問や意見が飛び交う。
㈱セイミヤの加藤勝正社長も、
潮来から駆けつける。
いつも真剣な議論が交わされる。
20111026203534.jpg
この商業経営問題研究会名で初めて出版されたのが、
『1秒でわかる!小売業界ハンドブック』
会員にとって、ひとつの成果物。

これからも、研究し、議論し
問題解決の道筋を提起する。
そんな活動を続けることで、
第二弾、第三弾の単行本を発刊したいものだ。

それはおそらく「ポジショニング競争への解」を、
もたらしてくれるものとなるだろう。

<結城義晴>


コメントする

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

次のHTML タグと属性が使えます: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <strike> <strong>

post date*

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)

「月刊商人舎」購読者専用サイト
月刊商人舎 今月号
商人舎 流通スーパーニュース
月刊商人舎magazine Facebook

ウレコン

今月の標語
商人舎インフォメーション
商人舎スペシャルメンバー
商人舎発起人

東北関東大震災へのメッセージ

ミドルマネジメント研修会
商人舎ミドルマネジメント研修会
海外視察研修会
商人舎の新刊
チェーンストア産業ビジョン

結城義晴・著


コロナは時間を早める

結城義晴・著


流通RE戦略―EC時代の店舗と売場を科学する

鈴木哲男・著

結城義晴の著書の紹介

新装版 出来‼︎

新装版 店長のためのやさしい《ドラッカー講座》

新装版 店長のためのやさしい《ドラッカー講座》
(イーストプレス刊)

新着ブログ
毎日更新宣言カレンダー
指定月の記事を読む
毎日更新宣言カテゴリー
毎日更新宣言最新記事
毎日更新宣言最新コメント
知識商人のためのリンク集

掲載の記事・写真・動画等の無断転載を禁じます。商人舎サイトについて
Copyright © 2008- Shoninsha Co., Ltd. All rights reserved.