[2011帰国後の米欧報告記①]ハード・ディスカウント・ボックスストア「アルディ」フォトレポートといなげやina21
まず、お知らせを三つ。
宣伝ではない。
ご報告。
今夜10時25分からNHKのEテレで、
「仕事学のすすめ」が放映される。
大久保恒夫さんが出演して、
「こうして企業は再生する」の第2回目。
ご存知、㈱セブン&アイ・フードシステムズ社長。
是非、ご覧下さい。
それから、通称「ハンドブック」に、
4ケタ台の一括お買い上げ。
東洋経済新報社刊『1秒でわかる! 小売業界ハンドブック』
1秒ではわかるはずはないけれど、
ありがとうございます。
通称「店ドラ」こと、
『店長のためのやさしい《ドラッカー講座》』には、
台湾での翻訳本出版オファーがきています。
これも、嬉しいこと。
さてオリンパス。
1990年代からの含み損1000億円超。
朝日新聞『天声人語』の表現を借りると、
「見て見ぬふりで20年も放置し、
切るに切れぬ病巣にした」
つまり粉飾。
過去のものであろうと、
粉飾を押し隠しつつの健全経営など、
絶対にあり得ない。
だからマイケル・ウッドフォード元社長は、
それを質した。
そしてこのイギリス人経営者は、
突如、解任された。
その気持ち、よくわかる。
故倉本長治商業界主幹は、
『商売十訓』で言い切った。
「損得より先に善悪を考えよう」
「欠損は社会のためにも不善と悟れ」
粉飾を知りつつ、
経営を続けていると、
経営者も社員も蝕まれていく。
やがてそれが組織の風土となり、
企業は腐っていく。
誠に残念なことだし、
本当に恐ろしいことだ。
膿を出し尽くして、
再出発するしかない。
私はいつも、そう考える。
日経MJ『消費見所カン所』に、
㈱いなげや社長の遠藤正敏さん登場。
「高齢者を中心に食品を自宅近くで購入する傾向が強まり、
コンビニエンスストアとの競争が激しくなっている」
そう、業態間競争の激化。
アメリカでもヨーロッパでも、
そして日本でも。
「非食品専業業態が、
生鮮やデリを扱い始めて、
チャネル間競争が起こる」
コーネル大学ジン・ジャーマン名誉教授の指摘。
遠藤さんは述懐する。
「消費マインドは見通せない」
だから確かなことをやる。
エブリデー・ロープライスの小型店フォーマット。
「いなげや ina(いーな)21」
やりきりさえすれば、
いつの時代にも、
確かなニーズはある。
しかしこれをやりきるのは、
本当に難しい。
イオングループの小型ディスカウント・フォーマットの「アコレ」は、
現在13店舗だが、
どちらもモデルは、
ドイツの「アルディ」のはず。
ご本家は小型ボックスストアで、
「ハード・ディスカウンター」と呼ばれる。
現在、グループ全体(Aldi Nord & Aldi Sud)の年商(2010年)は、
470億5600万ユーロ(1ユーロ110円換算で、5兆1762億円)。
ドイツ(Aldi Nord & Aldi Sud)の業績(2010年)は、
年商219億9900万ユーロ(1ユーロ110円換算で、2兆4199億円)
国内マーケット・シェアは13.54%。
アメリカのアルディも、
1978年にシカゴ郊外に第1号店を出してから、
200店、500店、そして1000店を超えて、
やっとディスカウントの効果が出始めた。
1000店までに30年かかった。
アメリカでの業績(2010年)は、
年商83億6200万ドル(1ドル100円で換算で、8362億円)、
売上げの伸び率は12.1%。
店舗数は1135店で、
こちらの伸び率は7.0%。
両者を比較すると、
既存店が伸びていることもわかる。
2011年全米チェーンストア・ランキング17位。
店舗面積は1万平方フィート(281坪)に標準化されている。
入り口から入ったコンコース。
取扱アイテムは、1,300SKU。
限定品揃えのリミテッド・アソートメント。
95%がプライベートブランド。
コーラもPBで、
常時2リットルを59セント販売。
1ドル100円換算ならば59円、
為替換算の80円ならば48円。
店内は明るくて、
売り場は、簡素でノーフリル。
徹底して、金をかけないローコスト運営。
店舗左サイドの壁面。
パン売り場の商品もよく売れている。
レジ手前の冷凍食品売り場。
リーチインケースだが、
見通しがいい。
冷凍食品やアイスクリームも、
平ケースでしっかり品揃えされている。
生鮮食品が充実してきた。
「悪かろう、安かろう」では、断じてない。
それが、最大のポイントである。
パレットに積まれて入荷し、
そのまま陳列・販売され、
そのまま購入されていく。
卵は奥主通路の主役。
リーチインケースで売られ、
ラージAの1ダースが、
常時99セント。
これにはウォルマートすら、
大いに手を焼いている。
住関連商品のコモディティグッズも、
安くて、充実。
天井からカラフルな垂れ幕が下がり、
什器は移動式の省力型。
省力機器の下段には滑車が付いている。
商品は単品大量陳列。
その陳列の上部にボードがあり、
プライスカードには、
商品名と価格のみ。
このダラスの新店の天井は、
最新流行のむき出し型で、明るい。
スローガンは、
「Unbelievable Quality…Incredible Saving…Guarantee」
「信じられない品質、途方もない節約、保証します」
レジは4台。
チェッカーは座って作業する。
これ、ヨーロッパ方式。
アルディは、
エブリデー・ロープライスを貫徹している。
それは今や、コストコと並んで双璧。
ウォルマート以上といってよい。
その理由は、リミテッド・アソートメントにある。
単品大量販売は、これこそウォルマートをしのぐ。
私は、総合スーパーとしてのハーパーマーケットは、
このリミテッド・アソートメント・ストアに、
価格では勝てないと思うに至っている。
つまりウォルマートもアルディには、
コモディティ・ディスカウントではかなわない。
だからウォルマートは、ノンコモディティ開発とホスピタリティ、
そして生活総合コンプリートストア構築を目指している。
いなげやina21は、イオン・アコレとも共同で取り組んで、
店数を増やし続ける覚悟で取り組まねばいけない。
さて、いなげや遠藤さんのコメントのもう一つは、
「買い物客の無料送迎サービス」
これは「高齢者の来店を促す取り組み」
なんと、埼玉県飯能市のサビア飯能店での試み。
わが商人舎最高顧問の杉山昭次郎先生が、
この商圏内にお住まいになっている。
「飯能の流通仙人」
当年とって85歳。
いなげやの無料送迎バスが、
「流通仙人」を出迎え、送り出す。
想像するだけで、嬉しくなる。
ありがとうございます。
韓国の「割引店」と称される総合スーパーにとっては、
必須のサービス。
高齢化が進む地域ならば、
そして採算が取れれば、
日本でも、大いに広めてほしいものだ。
<結城義晴>