日本チェーンストア協会パネルディスカッション「東日本大震災からの教訓と課題」でコーディネーター
Everybody! Good Monday!
[vol47]
快晴であればなお秋惜しむかな
[朝日俳壇より 姫路市 蔭山一舟]
不明者の三八〇〇の中にいる
死者にもなれず釜石の友
[朝日歌壇より 本宮市 廣川秋男]
2011年第47週。
11月第4週。
今週は真ん中の23日水曜日が、
「勤労感謝の日」。
しかし小売業・サービス業は書き入れ時。
「勤労」が「感謝」される休日に、
小売・サービス業従事者は仕事する。
この矛盾こそ、小売サービス業の本質を示している。
人々が休んだり楽しんだりすることをサポートし、
それに奉仕する。
だから逆の意味で、私は、
「勤労感謝の日」こそ、
小売りサービス業の日だと思う。
朝に希望、
昼に努力、
夕に感謝。
毎年、11月の標語は、
変えない。
それは小売りサービス業の記念日「勤労感謝の日」があるからだ。
2008年4月17日に「商人舎発足の会」が開催された。
私は4時間の基調講演で語った。
タイトルは「小売りサービス業が日本を救う」。
国内産業の空洞化に対しても、
小売りサービス業がその穴を埋め、
新しい産業構造をつくる。
さらにそのうえで、海外進出も視野に入ってきた。
今朝の日経新聞一面トップ記事。
「海外出店数、国内を逆転
小売り・外食 加速」
コンビニエンスストアのトップ5社は、
セブン‐イレブン・ジャパン、ローソン、ファミリーマート、
それにサークルKサンクス、ミニストップ。
この「5社の2011年度の純増店舗数の合計は国内で約1600店」。
対して、サークルKサンクスを除く4社が海外進出しているが、
その純増数は、
「現地の運営企業と資本関係があるケースに限っても約2500店」。
今年度、海外が「国内の1.5倍」に及ぶ。
一方、ファーストリテイリングは、2012年8月期の決算までに、
主力フォーマットの「ユニクロ」を過去最高の108店、海外出店。
柳井正会長兼社長の弁。
「世界一のカジュアル衣料品店になるため、
成長するアジアに出なければならない」
フードサービスではワタミと吉野家。
ワタミは2011年中に海外店舗数が26店増。
2016年までに海外に約200店を出店。
吉野家ホールディングスも20年2月期までに、
国内店舗約800店に対し、
海外店舗は1000店強の計画。
商業統計では、国内小売業は2010年に年商約135兆円。
ピークは1996年で、それから7%の減少。
外食は2010年には、ピークの1997年から約2割減。
これは外食産業総合調査研究センター調べ。
一方、アジアは所得中間層が急増している。
中産階級の増加こそ、消費産業の成長には良いマーケット条件である。
「日本の食文化やファッションは海外でも人気」が高い。
コンビニ、カジュアルファッション、フードサービス。
東南アジア進出が主体だが、
これも産業空洞化を埋めつつ、
輸出関連事業を伸ばしていくことに貢献する。
新しい時代に入ったことは確かだ。
日経新聞31面に「日本を始めよう。」の自社広告。
㈱セブン&アイ・ホールディングス会長の
鈴木敏文さんが登場。
「日本は成熟社会で、
市場は飽和し成長力が乏しくなったといわれます。
そんなことはありません」
きっぱりと言い切る。
すばらしい。
私もまったく同感。
「消費者の志向は絶えず変化しています。
生活者のライフステージが変わることでも、
新しいニーズが生まれます。
人間は常に新しい物やサービスを求め続けるのです。
それに対応し続けていれば、
事業が行き詰まることはありません」
なんと晴れ晴れしい言葉だろう。
なんと勇気づけられる物言いだろう。
「勤労感謝の日」も、
私たちはこのことを自覚しつつ、
元気を出して仕事に邁進したい。
さて先週19日金曜は、
穏やかな秋の日差しをあびながら、
港区白金台の八芳園に向かった。
特別セミナーのパネルディスカッションが開かれた。
主催は日本チェーンストア協会。
私はそのコーディネーター。
八芳園は、あの大久保彦左衛門の下屋敷跡。
江戸時代初期、徳川家康の側臣の一人。
見事な大楼門形式の正門。
本館6階のチャットルームには、
小売業の通常会員、メーカー・卸の賛助会員が、
300名あまりが参集した。
司会は、小笠原荘一常務理事。
協会長の清水信次さんが開会のあいさつ。
東日本大震災での福島原発事故は、
初動で存分に費用投下すれば、
これほどにはならなかった。
天災と人災。
現在は、武器ではなく行政と政治によって、
第3次世界大戦がはじまっているようなものだ。
日本は、その中で国力が落ちている。
だから生活者に密着した産業がモノを言い、
日本を変えなければならない。
そこで清水さんは12月2日に、
「国民生活消費者団体連合会」、いわゆる「生団連」を立ち上げる。
先週15日に㈱ライフコーポレーションは50周年を祝った。
岩崎高治社長に経営を任せ、
清水さんは食品産業、消費産業のために奔走している。
そしてパネルディスカッションがスタート。
テーマは「東日本大震災からの教訓と課題」。
製配販の代表がそれぞれの活動を報告し、
震災から得た課題を語り合い、共有化しようというのが趣旨。
コーディネーターを務める私の隣は、
製造業を代表して日清食品㈱代表取締役社長の中川晋さん。
卸売業からは、
三菱食品㈱取締役専務執行役員の中嶋隆夫さん(左)。
小売業からは、
㈱イトーヨーカ堂取締役専務執行役員の竹田利明さん。
日清食品の中川さんからは鋭い指摘が次々に提起された。
「どん兵衛のかまぼこを製造していたメーカーが、
原発事故で出荷停止になった。
パーツが1個足りないだけで生産できない事態が発生した。
どん兵衛のパッケージには小さくかまぼこが載っている。
緊急対応品として、かまぼこなしの製品を販売したが、
かまぼこのシズル写真を消し、
かまぼこ1グラム分の内容量減少の表示変更をした」
「買いだめ消費で店頭から商品が消えた。
その解決法? いま、解はない。
しかし東南海地震が起これば80兆円の損失予測されている。
構造を変えるためには、『緊急の特例』が必要ではないか」
「東北・関東地方を最優先する商品供給を徹底させたが、
生産と仮需の発生で欠品が発生した。
各社から要請があり、出荷可能な得意先別に割り振った。
しかし、はたしてそうだったのか?
どこかに流通在庫があったのではないだろうか。
『公平性の論理』のジレンマとでもいうべき、営業課題が残った」
日清食品では震災前後のカップ麺の販売状況を緻密に分析している。
震災発生後の異常な販売数量、
しかし7月には、急速に流通在庫が滞留している。
今後、それをどのように平準化させるのか。
製造業の立場からは、そのことが課題であると締めくくった。
続いて三菱食品の中嶋さんは詳細な報告をもとに、
サプライチェーンの課題を挙げてくれた。
三菱食品は3.11の本震と4.7の余震による強震で、
東北・関東エリアの100カ所以上のセンターや倉庫が被災した。
ラックやマテハン機器は倒壊し、
メザニン(中2階式の組み立て式棚)設備が損傷。
これにより収容能力が落ち、倉庫機能が低下した。
さらに大津波で、
宮城県岩沼臨空地区の4つのディストリビューションセンターが、
壊滅的な被害を受ける。
「4月7日の震度6強の余震で被災した時に、
それまで復旧作業に頑張ってきた現地の社員が、
『笑っちゃいますよ』といった。
心が折れてしまうのではないかと、本当に心配した。
気力でやっていこうと励ましながら一緒にやってきた」
「東北・関東エリアからの受注の増大、メーカーの欠品対応など、
在庫確保数が増えたが、一方で保管能力が低下していた。
倉庫の大切さを感じた。
物流センターと倉庫の違いを感じた」
中嶋さんは行政への要望として、
緊急車両運行許可証の優先発行、
燃油の優先供給、
食品流通DCへのライフラインの優先的復旧、
配荷タスクフォースの検討などを挙げてくれた。
食品流通関係者の誰もが感じた課題だ。
だからこそ、ライフラインを担う食品流通業が一丸となって、
その要望を、今後の改善のアクションにつなげたい。
最後はイトーヨーカ堂の竹田さんが、
被災直後の状況から商品動向までを説明。
セブン&アイグループはイトーヨーカ堂、
ヨークベニマル、セブン‐イレブン、デニーズ、
セブン銀行(ATM)などが多大な被害を受けた。
「震度5弱以上の場合、
各店から安否・被災情報が本部に入ることになっている。
すべての店舗から連絡が入り、安心するも、
大津波の報が入ると同時に、東北ブロックからの連絡が途絶えた」
このブログでも取り上げたが、津波によって
石巻のヨークベニマル湊鹿妻店は壊滅的な被害にあう。
イトーヨーカ堂石巻あけぼの店も商品が散乱し、外周が陥没。
あけぼの店は、震災当日18時には営業を再開する。
「各店の店長が自主判断で夕方から店を開けた」
震災直後、カップラーメンや水、缶詰などの簡便食品が、
年末を上回る売れ行き数量になる。
しかし被災から時間が経つにつれ、商品動向が変わった。
2日後には、コンロや乾電池、ペーパー類の生活必需品、
1週間後には移動のための自転車、修理用品の売れた。
今回の震災では、中越地震を経験した原信やシジシーが、
被災した企業に、必要な商品を、必要な時期に送り届けたことで、
被災地域の住民生活を支えた。
こうした緊急時の商品動向は、
被災時のマーチャンダイジング情報として共有したい。
製配販パネラーの方々からの詳細な報告と課題提起。
私のまとめは堺屋太一さんの「非常時の5段階」
8カ月を経て、第1段階の「救助」、第2段階の「救済」から、
第3段階の「復旧」へと至っている。
しかし、これから新しいグランドデザインをつくる第4段階の「復興」があり、
世界のモデルとなるべく第5段階の「振興」がある。
そのためにも小売流通業、
さらにサプライチェーン全体が手を携えて、
問題解決していかなければならない。
「生団連」はその一つの手段である。
そんなメッセージで、締めくくった。
最後にパネラーの方々と、
日本チェーンストア協会の井上淳専務理事(右)。
清水さんともツーショット。
セブン&アイ・ホールディングスの高羽康夫さんとも、
久々にお会いした。
執行役広報センターシニアオフィサー。
白金台駅で別れ際に。
この日は、昼に立教大学大学院結城ゼミ1期生で、
その結城ゼミOB会会長の名古屋文彦さん来社。
先週はいい日ばかりだった。
今週もいい日が待っている。
「勤労感謝の日」。
元気がでてくる。
では、みなさん。
Good Monday!
<結城義晴>