結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2011年11月22日(火曜日)

「日本のエンゲル係数なぜ高い」と新団体「日本TCGF」とその発足の意味

少し寒くなって、
11月下旬の陽気です。

「風のように流れ去る時間があれば、
泥のごとく滞る歳月もある」
と、
朝日新聞一面コラム『天声人語』。

「オウム裁判が終結した。
語るべき人の、語るべき言葉は
最後まで聞かれぬまま」
と、
読売新聞一面コラム『編集手帳』。

「生きにくい時代には、色んな教えが『輝く未来』を競い、
悶々(もんもん)と暮らす人々を誘う」

経営コンサルタントの常とう手段の一つは、
脅し。

競争は喉を掻き切るほどになる。
売上げは激減する時代になる。
だから私の言うことを聞きなさい。
これ、常とう手段。

私は㈱商業界の時代から、
3年ごとに「コンサルタント活用講座」を特集した。
その脅しや騙しにのらないようにと。

この業界ほどコンサルタントが多い世界はない。
もちろん良心的で志高きコンサルタント諸氏もたくさんいらっしゃる。
亡くなられた渥美俊一先生や飯能の流通仙人・杉山昭次郎先生。
私の友人にもそういったコンサルタントは多い。

しかし。
「よこしまな扇動家の仮面は、
むろん宗教家とは限らない。

こんな年だからこそ、頼るに足る、
本物のきずなを見抜きたい」

今日の『天声人語』の結び。
いかがわしいコンサルタントかどうかは、
その人の足元を見ればよい。

ドラッカー先生は、
「その会社を訪れれば5分でわかる」と、
言い切ったものだ。

さて昨日の日経新聞『景気指標』。
「日本のエンゲル係数なぜ高い」と題して、
編集委員の太田泰彦さんが「エンゲル係数」について書く。

「家計の支出のうち、食費が占める割合」
小学校か中学校で習った。

「一般に途上国ではエンゲル係数が高く、
経済発展に伴って国民所得が上がるにつれて低下する」

国際労働機関(ILO)によれば、
ミャンマーは72.7%、
インドは43.6%。

「米国7.2%、ドイツ6.9%、英国11.4%など、
主要国は20%以下がほとんど」。

しかし日本は、
「ここ10年間は約23%
にピタリと張りついて動かない」

「日本も終戦直後(1946年)は66.7%と高かった」
「復興期と高度成長期は一貫して下がり続け、80年には28%になった」

それが23%で動かない。
なぜか。

「日本で買う食料品の値段が、
他の先進国より高いからだ」

原田さんは、断言する。

「昨年下期の実地調査(円換算)によると、
豚肉1キログラムは日本で2400円だが、
米国は828円、英国では798円。
牛乳1リットルは日本で216円するが、
米国では100円、英国では99円」

ただし私がいつも指摘するように、
これは為替レート換算。

購買力平価で1ドル120円とすると、
アメリカの豚肉が1200円くらい、
牛乳も150円くらいになるか。

だから格差はちょっとだけ是正される。
とはいっても、豚肉や牛乳はやはり高い。
だからエンゲル系数23%の一因にはなっている。
「日本は国内農業の生産コストが高いため、
関税を高くして食料品の市場を守っている」
これは実際の話。

「このため輸入品の値段も高くなり、
農業を支えるための負担が、
消費者全体に広く薄くのしかかっている」

決して農業従事者を責めるつもりはないが、
政治と行政、そして農業という産業が絡み合って、
その付けが消費者にきている。
「関税削減で食品の価格が下がれば、
エンゲル係数も下がり、
家計はそのお金を他の支出に回せる」

「すべての分野で物価水準が継続的に下落するデフレ現象とは異なり、
足元で不振の個人消費を押し上げる効果も期待できる」

「環太平洋経済連携協定(TPP)が、
輸出産業だけを利するという見方は誤りだ」
日経新聞の主張が出てきた。

最後の言葉、
「自由貿易の最大の受益者は消費者である」

「消費者代位機能」

つまりお客様の代わりに役目を果たすことだが、
これが小売業・流通業の仕事だとすると、
エンゲル係数問題は、
私たち自身のテーマとなる。

さてひとつ、大事なニュース。
「イオンやキリン、三菱食品などが
商品安定供給へ新団体」

「国民生活消費産業団体連合会」、すなわち「生団連」ではない。

「日本TCGF」
TCGFとはザ・コンシューマー・グッズ・フォーラムの頭文字。

大手小売業、食品・日用品のメーカー・卸売業が、
業界の枠を越えた新任意団体を発足した。
現在は、29社が参加。

来年3月11日までに総会が開かれ、
東日本大震災で支障が起きた商品の安定供給のあり方などを提言する。

発起人は、
イオン㈱の岡田元也社長、
キリンホールディングスの加藤壹康会長、
花王の尾崎元規社長ら。

この団体は3つのテーマを設定している。
①「震災対策共有化」
災害時の商品の安定供給などを議論する
②「消費者コミュニケーション」
原発事故に伴う風評被害を防ぐ情報発信の仕方などを検証する
③「サステナビリティ)」
環境対応における持続可能性などを論議する

3つの委員会が月に1~3回のペースで、
課題の整理と解決策を検討する。

報じたのは日経新聞と日本食料新聞。
朝日、読売は蚊帳の外。
グローバル・レベルでは、
国際組織「ザ・コンシューマー・グッズ・フォーラム(TCGF)」がある。
ここにはウォルマートをはじめ、テスコ、ダノン、ネスレなど、
世界の小売業・食品メーカーなど大手企業がこぞって、
約650社が参画している。

日本TCGFはこの組織の日本版だが、
まだ29社で、まったくのひよっこ。

「本家」とは組織的な関係は持たない。
つまり従属関係はない。

しかし時宜を得た行動だとは思うが、
私の個人的意見は、
それこそ「生団連」との連携も必須だし、
例えば小売業を代表するイオンとセブン&アイ・ホールディングスが、
手を携えて発起人となってほしかったということ。

「士農工商」の序列の不当さを主張するためには、
こういったところでこそ「商」の一致団結がほしいものだ。

<結城義晴>


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