中国戦略はイオンがSC+SM、セブン&アイがデパ地下・食品SM、その中の台湾資本RTマートの強さ
今朝の日経新聞のスポーツ欄。
コラム『クールダウン』。
日経は文化欄やスポーツ欄に以外にいいコラムがある。
今日は「最大のファンサービス」というテーマ。
「夏休みのラジオ体操最終日や学校の卒業式など、
小さい時分は『皆勤』すると景品がもらえ、表彰された」
そうだった。
「皆勤賞」は勉強ができるできないではなく、
全員に権利がある公平なものだった。
「社会に出て仕事を持つと『休まない』というだけでは、
だれも何もくれないようになるけれど
『皆勤』はいくつになっても誇っていいことなのではないか」
賛成。
大いに。
大阪の㈱万代社長の加藤徹さんは、
代表取締役社長に就任してから、
皆勤で、朝6時に出社する。
だから4時半に起床する。
「皆勤」というのはすごい。
私も、2007年8月10日から、
皆勤でブログを書き続けていてわかるが、
本人は当たり前になりつつあるが、
「皆勤」は尊い。
「例えば横綱白鵬。
4年半前の横綱昇進から休場が一度もない」
そのひたむきさが、モンゴル人でありながら、
日本人以上に日本国民から敬愛される理由のひとつ。
「派手な連勝記録などと違い、
『休まない』だけでは注目されないが、
それが信頼を生む」
小売りサービス業は、
派手な連勝記録の仕事ではない。
しかし毎日毎日、コツコツと、
売場をつくり、顧客をもてなす。
コラムは結ぶ。
「スポーツ界で最も大切なファンサービスといえるだろう」
小売りサービス業にとっても、
最も大切な顧客サービスである。
その意味で、
コンビニはすごい。
さて、中国進出のニュース連発。
これも今朝の日経新聞。
「イオン、出店攻勢 中国の中間層に照準」
イオンの中国での現状。
ショッピングセンター(SC)を含む大型店が30店、
食品スーパーマーケットは主に香港で10店、
コンビニエンスストアは少ないが22店。
2010年度の中国での総売上高は約1千億円。
今後は、2013年度までは年数店の出店。
しかし2014年度は2ケタ出店、
その後は年20店ペース。
そして2020年度に200店体制を目論む。
ハイパーマーケット(総合スーパー)が核店舗。
そこに衣料品や雑貨など百数十の専門店が入るSC。
延べ床面積は10万平方メートル、年商100億円。
これが標準タイプ。
「賃借のため1店当たりの投資額は20億円程度」
さらに食品スーパーマーケットは全国のマックスバリュが地域ごとに担当。
マックスバリュ東海が広東省、
マックスバリュ中部が江蘇省、
マックスバリュ西日本が山東省。
2012年中に現地法人を設立し、
競うように出店をスタート。
スーパーマーケットといっても、
延べ床面積が1000~2000平方メートルの小型店の集中出店方式。
こちらは2020年度段階で400店体制の計画。
このSC200店、スーパーマーケット400店の体制のために、
各省に物流センターを創設。
筆頭株主の三菱商事が保有する物流網や商品調達先を活用。
一方、セブン&アイは、
「中国で『デパ地下』
高級食品スーパー開業」
これは日経新聞の12月3日の記事。
2日の金曜日に、北京市で、
百貨店の地下フロアに
高級食品スーパーマーケットを開業。
店名は「王府井ヨーカ堂・三里屯店」。
売り場面積は約2000平方メートル。
イオンとは反対に、
「これからの中国での食品スーパー事業は
『デパ地下』運営を柱にする」
「総菜や輸入食品、有機野菜の品ぞろえを充実させ、
大都市で急増する富裕層を顧客として獲得する」
運営会社に出資するヨークベニマルの大高善興社長は
「『デパ地下』で最後の勝負をかける」と意気込む。
上海でも久光百貨店の地下売場のフレッシュマートは、
市内に高級スーパーマーケットとして市場をリードする。
郊外にはウォルマート、カルフール、テスコなど、
有力外資企業が群雄割拠。
さらに台湾資本のRTマートが完全に現地化して、
ハイパーマーケット業態で群を抜く。
ならばデパ地下で高所得者層を狙う。
これはSTPの戦略として理にかなう。
Sはセグメンテーション、
Tはターゲティング、
Pはポジショニング。
イオンとセブン&アイ。
異なるマーケット観と異なる経営戦略。
これはとてもいい。
さてその上海のRTマート。
私の手元にある資料は、
「中国のトップ・グロサリー・リテイラー」
①ウォルマート・チャイナ 322店 99億6900万ドル
②オーシャン&RTマート 174店 72億3000万ドル
③チャイナ・リソース 3042店 68億1300万ドル
④カルフール 645店 57億3200万ドル
中国チェーン経営協会発表のランキングでは、
①百聯グループ 1037億元(1兆3481億円)
②華潤万家 718億元(9334億円)
③大潤発 502億元(6526億円)
④カルフール 420億元(5460億円)
⑤ウォルマート 400億元(5200億円)
この第3の大潤発がRTマート。
フランスのオーシャンと資本・業務提携をしていて、
台湾資本。
ハイパーマーケット業態だが、
店舗と売り場は一番良い。
1階フロアにはテナントが入る。
箱型のショッピングセンター。
動く歩道のスロープを昇って、2階へ。
2階も両サイドにテナントが並ぶ。
一番奥に、見えてきました。
RTマートの入り口。
これが、カルフールが編み出した典型的なハイパーマーケット。
まず、非食品プロモーションの大量陳列。
入り口右手は書籍・CD売り場。
入り口から店舗の半分くらいがノンフード。
奥がフード。
コンコース沿いのエンド陳列も原則そのもの。
店舗中央を走るコンコースの真ん中には、
島陳列のプロモーション。
右手にドラッグ・コスメティックスが売場が見えてくる。
高級感のある売り場は上海第一のクレンリネスぶり。
左手は衣料品売り場。
衣料品も定番アイテムが並ぶが、
高いクオリティ感がある。
コスメティックスの次に雑貨売り場。
バザーと呼ぶ。
左手はグロサーと雑貨。
エンドはサンプル陳列の典型で、
1アイテム2SKUの原則通り。
そしていよいよ、生鮮食品売り場。
青果部門は上海のハイパーマーケット第一の管理状態。
カルフールやウォルマート、テスコのクレート陳列と異なり、
日本流の単品陳列。
青果部門に続いて、穀類などのバルク売り場。
乾物売り場も充実しているし、
管理レベルが高い。
もちろん人員も投入されている。
ここがカルフール、ウォルマートとの大きな違い。
右手奥通路沿いは対面売り場の精肉。
精肉も品質管理が良い。
鮮魚は氷を敷き詰め、
その上に陳列。
これはカルフールから学んだ。
「水産区」と部門名が表示されている。
鮮魚部門のスペースも品揃えも日本並みの上海最高レベル。
上海蟹も品揃え。
惣菜部門は中華料理の豊富なメニューが満載。
真ん中に作業スペースがある惣菜売り場。
ホット惣菜もおいしそうだし、
清潔感がある。
肉まんの売り場はアツアツの品ぞろえ。
右手奥の売り場はベーカリー。
コーナーを曲がるとインストアベーカリーの売り場が続く。
未成熟のべーカリーは菓子パンが多い。
しかしRTマートでは主食となるパンが売られている。
ベーカリーをかこむように、
洋惣菜売り場。
揚げ物惣菜もパレット盛りで、
衛生的できれいな売り場。
冷蔵多段ケースには、
日本と同じような豊富な品目が用意されている。
飲料の島陳列も見事。
アメリカの売り場のようだ。
コンコースに戻って、グロサリー部門。
そのエンド陳列も原則的。
ハイパーマーケットとはこれだ、という売場づくり。
私はすっかり感心してしまった。
売場の管理状態が良いというだけではない。
客数は多いし、売れている。
それでいて管理がいい。
上海小売業では多くはない。
それはオペレーションとマネジメントが出来上がっているからだ。
RTマート、恐るべし。
台湾資本の小売業、すごい。
台湾企業は日本の小売業をよく学んでいる。
アメリカ・チェーンストアも学習している。
そのうえ、上海の中国人の生活を知っている。
上海の中国人の働かせ方を熟知している。
カルフール、ウォルマート、テスコ、メトロ。
並み居る世界企業を相手に、
彼らから学びつつ、
彼らの追随を許さない経営と運営。
日本企業も、
ハイパーマーケットづくりの面では、
RTマートに真摯に学ばねばならない。
今回の上海旅行で一番の収穫が、
このRTマートだった。
その中国でイオンやセブン&アイ、
平和堂、イズミヤなどが、
21世紀戦略を展開しようとしている。
<結城義晴>
2 件のコメント
結城先生へ
お客様の立場になり、「真摯に店作り」が一番ですね。
勉強になりました。ありがとうございました。
藤井直之さま、どこの国の小売業でも、
自分のカスタマーに真摯に向き合うことが何より大切です。
私も勉強させられました。