今宵の皆既月食52分間と、論語の「知者は惑わず、 仁者は憂えず、 勇者は恐れず」
今夜、皆既月食が見られる。
それも空の高いところで。
「一夜のうちの月の満ち欠け」
国立天文台「星空情報」によると、
今宵の21時45分から、
1時18分にかけてのこと。
3時間33分間。
21時45分に、
満月の左下からゆっくり欠け始める。
23時06分には満月が地球の本影にすっぽり入る。
これを「皆既」というそうだ。
この瞬間は見逃せない。
そしてこの皆既状態は、
23時58分まで続く。
52分間。
現象が科学的に解明されているから、
幻想的な気分になれるが、
解明されていなければ、
不安、不吉が人々の心を満たすだろう。
しかし現代人の私たちは、
この幻想を楽しむことができる。
そ皆既状態のあと、
再び地球の影から、
月が顔をだす。
今夜のように、
「食」の始めから終りまでの皆既月食を堪能できるのは、
2000年7月16日以来のこと。
つまり11年ぶり。
ただし今年は月食の当たり年で、
6月16日にもこの現象が起こった。
次に皆既月食の全過程が見られるのは、
2018年1月31日になるという。
6年先。
私はその頃、65歳。
いったいどんな世の中になっているのか。
私はどうなっているのか。
3時間33分間は見続けないけれど、
皆既の52分は見ようと思う。
その間に、さまざまなことを考えるだろう。
昨日は、午後、立教大学。
大学院ビジネスデザイン研究科委員会。
いわば教授会のようなもの。
立教キャンパスでは、
恒例のクリスマスツリーが出来上がっていて、
にぎやか。
ビジネスデザイン研究科委員会は、
重要案件を議論し、
より良い社会人大学院を目指す。
今日は午後からその立教の結城ゼミ。
夕方、来年のゼミに関して、
教授・准教授陣による調査研究・演習指導ガイダンス。
来年度にゼミを履修する院生に、
各教授・准教授がプレゼンテーションをする。
そのあと私は、結城ゼミ現役生との忘年会。
きっと、みんなで皆既月食の始まりあたりを、
眺めるのだろう。
それもいいもんだ。
㈱商業界に入社して30年。
最後の4年間は社長をやっていた。
「皆既月食」があっても、
眺める余裕もなく仕事していたと思う。
それから4年。
立教の大学院の院生諸君とともに、
「一夜の月の満ち欠け」を堪能する。
さて朝日新聞のコラム『経済気象台』。
コラムニスト昴氏が書く。
「知者惑わず、勇者恐れず」
まずアメリカでのリンゴ・フジや、
コーベ・マーブル・ビーフのエピソードを紹介して、
日本農業・畜産業の技術の高さ、確かさを語る。
「コシヒカリのおむすびがコンビニで売られる国だ。
日本産米にかなうものはない」
さらに高名な大病院の内科部長の手術例の話を出す。
「80万円かかる手術資材が
輸入自由化されれば30万円で済む」
ここで「知者惑わず、勇者恐れず」
野田総理や民主党に向かって言い放つ。
つまりはTPP問題への政府の逡巡を指弾する内容。
この言葉、原典は『論語』。
「子曰、知者不惑、仁者不憂、勇者不懼」
子曰わく、
知者は惑わず、
仁者は憂えず、
勇者は懼(おそ)れず。
「知者は迷うことはない。
仁者は悩むことはない。
勇者は恐れることはない」
昴氏は「仁者」を外して語ったが、
「仁者」であることこそ、大切だと思う。
知者は、正しい知識・知恵を備えた者。
だから惑うこと、迷うことがない。
知識商人は迷わない。
仁者は、正しい行いをする者。
だから悩んだり、憂えたりしない。
ただし、仁者が一番難しい。
理念がしっかりしていなければならない。
勇者も難しいが、
真の勇者は、正しきことでのみ、闘う。
つまり大義を背負う。
だから恐れることがない。
だから勇者なのである。
勇気とは、大義を背負うからこそ、
湧き出てくるものなのだ。
などと考えつつ、
惑わず、憂えず、恐れずの心境を思う。
今宵は皆既月食の52分間で、
その心境に近づけるかもしれない。
みなさんも、良い週末を。
<結城義晴>