野田首相の「福島原発事故収束宣言」とセブン‐イレブン「戸籍謄本サービス」とCVSベイエリアの「運営・孫悟空」
野田佳彦首相、「福島原発事故収束宣言」。
各紙一面トップを飾った。
東京電力福島第一原発の事故収束に向けた工程表では、
ステップ2の「温停止状態の達成」終了が確認された。
野田首相の記者会見での発言。
「発電所の事故そのものは収束に至ったと判断される」
しかし朝日新聞は福島県佐藤雄平知事の発言を出して、
「事故は収束していない。
多くの県民は不安を感じている」と反論を展開。
日経新聞はズバリ、「違和感がある」。
ステップ1は、原子炉を安定的に冷やす段階で、
これは7月に完了。
ステップ2は当初、来年1月中旬の終了予定だったが、
それが前倒しになった。
それでも「宣言」そのものに、批判が出る。
政権とはそんなものだが、
「事故収束宣言」が発せられても、
「本当の事故処理はまだまだこれから本番」だということは、
認識しておかねばならない。
さて今日は、コンビニの話題が二つ。
第1は、セブン‐イレブンが、
戸籍謄本、戸籍抄本、戸籍納付票の写しなどを、
店舗で受け取ることができるサービスを開始する。
スタートは来年1月11日から。
セブンイレブンは現在、すでに42自治体と協力して、
住民票の写しなどの店頭受け取りサービスを実施している。
しかしこのインフラサービス、
セブン-イレブンがシステムを用意しておいて、
各自治体の側がどう実行するかが問題の根本にある。
今回は、滋賀県愛荘町と奈良県生駒市。
町役場や市庁舎で住民基本台帳カードを取得し、
パスワードを登録しておく。
セブン-イレブン店頭のマルチコピー機に住基カードをかざして、
パスワードを打ち込んで、プリントアウトする。
今回、利用できるのは時間限定。
24時間ではない。
平日と土日曜日の午前8時半から午後8時まで。
利用料金は自治体によって異なるが、
戸籍謄本の場合、300円前後。
それらを含めて、いいことです。
ますます、社会のインフラ機能を果たすことになる。
第2のコンビニ関連ニュースは、
シー・ヴイ・エス(CVS)ベイエリアが、
サークルKサンクスのチェーンを脱退した件。
CVSベイエリアは、特異なビジネスモデルを展開している。
エリアフランチャイザー、すなわち地域限定本部。
その地域は「東京湾のベイエリア」。
ここにサンクスのバナーで集中出店して、
抜群の強さを発揮し、エリアフランチャイザーとして、
東証一部上場企業となった。
コンビニ・チェーンとしてのパッケージは、
ナショナルチェーン本部が提供する。
今回は、サークルKサンクス。
店舗とチェーンの運営をエリアフランチャイザーが行う。
だからCVSベイエリアは約120店の直営コンビニチェーンである。
日本のセブン‐イレブン・ジャパンも、
もとはと言えば、
アメリカのサウスランド社のエリアフランチャイザーだった。
ただしここでのエリアは日本国だった。
そしてセブン‐イレブン・ジャパンは、
本国のノウハウをはるかに超えたチェーンストア・システムをつくり上げた。
CVSベイエリアも特異なビジネスモデルを構築し、
今回、サークルKサンクスと袂を分かつことになった。
訴訟での和解で、解決金は15億円。
CVSベイエリアが払い、サークルKサンクスが受け取る。
その代りに来年3月以降、
CVSベイエリアは他のコンビニ本部と契約できる。
今後、ローソン、ファミリーマートなど、契約交渉戦が展開される。
ただしセブン‐イレブンは、
エリアフランチャイズも多店経営もあまり歓迎していないので、
CVSベイエリアがセブン-イレブンの看板を掲げることはない。
しかし、この話、おもしろい。
フランチャイズ・チェーンという契約概念のチェーンストア。
日本フランチャイズチェーン協会の定義をそのままに、
私は7つの項目に分類して整理している。
(1)事業者〈フランチャイザー〉が
他の事業者〈フランチャイジー〉との間に契約を結び、
(2)自己の商標、サービスマーク、トレードネーム
その他営業の対象となる商標および経営のノウハウを用いて、
(3)同一のイメージの下に商品の販売その他の事業を行う権利を与え、
(4)一方フランチャージーは一定の対価を支払い、
(5)事業に必要な賃金を投下して、
(6)フランチャイザーの指導及び援助の下に事業を行う。
(7)両者の継続的関係をいう。
今回この継続的関係を、CVSベイエリアの側が断ち切ろうとし、
そこで違約金が払われた。
契約の概念で結びつくから、
契約が切れる、契約をきる、こんな行為が起こる。
しかしCVSベイエリア自身は直営企業として、
自分のチェーンストアを形成し、展開している。
この直営チェーンストア、
なかなかに強い。
日本にチェーンストアが紹介されたばかりの頃、
故倉本長治商業界主幹がたとえ話で説明した。
「孫悟空が自分の毛をむしって、プッを吹くと、
小さな孫悟空が無数に出てきて、
寄ってたかって大きな妖怪をやっつける。
チェーンストアは、あの小さな孫悟空なんだよ」
私は子供のころから『西遊記』の話が大好きだったが、
長治先生のこのたとえ話はことさら好きで、
だからCVSベイエリアの強みもここにあると思う。
もちろんセブン-イレブンの強みも、
サークルKサンクスの強みも、
「小さな孫悟空」にある。
CVSベイエリアの面白さは、
オペレーションにおいて、
同社独自の「孫悟空」をつくったところにある。
そのCVS孫悟空に価値があるから、
15億円を払った。
何から何まで理想的な孫悟空をつくるという考えもある。
しかし、「オペレーション・マーケティングの孫悟空」の発想もある。
この発想、必ず、どこかに転用できる。
ではみなさん、良い週末を。
私は立教大学新座キャンパスで、
結城ゼミ敢行中。
頑張ります。
<結城義晴>