「漱石と七草粥」/上半期決算小売業好調35社の中のHC&コンビニ
1月7日、七草粥の日。
朝日新聞の『天声人語』が、
夏目漱石の俳句を取り上げた。
漱石43歳の晩夏。
だから七草とは関係ない。
「胃潰瘍を患う夏目漱石は、
療養先の伊豆修善寺でひどい吐血に見舞われる」
そして「生死の境をさまよった後の一句」。
〈腸 に春滴るや粥の味〉
「腸」は「はらわた」と読み、
「滴る」は「したたる」と発する。
「絶食の末に許された粥は、
歓喜のうちにのどを抜け、
食道を震わせて下り、
腸に春を届けた」
春の七草。
せり、なずな、
ごぎょう、はこべら、ほとけのざ、
すずな、すずしろ
これぞ七草。
すずなはカブ、
すずしろはダイコン。
コラムは「家なら一草で構わない」と語る。
いまはスーパーマーケットで、
パックで売られている。
それを土鍋で、粥にする。
とりわけ美味いというわけではないが、
なぜか、ほっとする。
七草粥。
私は胃潰瘍ではないが、
すっきりとしたし、
夕方までこれ一椀で済ませた。
昨夜は横浜商人舎オフィスに、
立教大学大学院結城ゼミの佐藤康裕君が訪ねてくれた。
佐藤君は「駅ナカ」の研究を進めているが、
全国JR6社の駅ナカ商業施設をくまなく踏査した。
凄い研究となりつつある。
アンケートやヒアリングも、
雑誌記者顔負けの取材力で、
これも充実。
私の名前でご協力をお願いしたが、
ご協力企業とその担当者諸氏には、
心から感謝したい。
今朝の朝日新聞「経済欄」に、
「駅中に小型店を展開」の記事。
ポーラ・オルビスホールディングス社長の鈴木郷史社長。
3~5坪の小型店を「駅ナカ」に展開する構想。
「働く女性が増える中、
忙しい平日に少しでも商品に触れてもらい、
新規顧客を増やしたい」
しかし「駅ナカ」ビジネスは、
「超」のつくショートタイムショッピング。
そのことを忘れてはいけない。
さてさて日経新聞の『大機小機』。
「人口本位時代の『三国一』とは」のタイトル。
人口問題の記事には、
くまなく目を通しておきたい。
これからの最重要課題の一つ。
「日本には14世紀以降の室町時代から
『三国一』という言葉がある」
「三国とは日本と唐土、天竺(てんじく)」
中国とインドのこと。
コラムは経済学者アンガス・マディソン教授の研究を紹介。
「1820年時点で世界のGDPシェアは
日本3.0%、中国32.9%、インド16.0%と
3カ国で計51.9%に及んだ」
その時、「欧州26.6%、米国1.8%」
アメリカが新世界と言われていた時代。
「地球上の人口が10億人に達したのは1804年」
「1952年時点のGDPシェアは欧州29.3%、米国27.5%に対し、
日中印3カ国の合計でも12.6%」と変わった。
さらに「それから60年。
この間、日本は世界第2の経済大国に浮上したが、
中国に抜かれた」
「世界人口は現在、70億人。
最大の中国が13億5千万人、
2位のインドが12億4千万人」
「中国は10年以内にも名目GDPで米国に並ぶ。
インドは10年後に人口で中国を上回り、
GDPでもやがて日本を追い越すだろう」
その中で日本はどうするか。
コラムニストの提案は、
「デンマーク型」。
すなわち「1人当たりの富」の基準。
「デンマークは2010年も1人当たりGDPが世界5位」
GDPの総額を指標にするのではなく、
1人当たりを基準に考える。
まあ、当たり前で妥当な考え方だが、
そのためにどうするか、こそが大事。
私はいつも言うが、
小売流通・サービス業がGDPに貢献し、
1人当たりの豊かさを実現させるべきだと思う。
その小売業の2011年3~11月の実績。
日経新聞が特集記事を組んだ。
上半期決算を発表した上場46社のうち、
76%の35社が「経常増益を確保」。
そのうち「16社は2012年2月期通期の最高益」を見込む。
これ自体は非常に良いことだ。
とりわけ良い成績なのがコンビニ。
セブン&アイ・ホールディングスは、
連結経常利益が前年同期比23%増の2172億円。
過去最高を記録。
これを支えるセブン-イレブンは、
来店客約3%、既存店売上高約8%の伸び。
「生鮮品を充実」させて、「女性客」を獲得。
安価なプライベートブランド惣菜の拡大で、高齢者客も確保。
村田紀敏社長の発言は勢いがいい。
ファミリーマートも今期は最高益。
東北地方の復興需要が増益に寄与した例も多い。
「イオンの連結経常利益は、13%増の1145億円」。
これも過去最高。
とくに東北の既存店がいい。
イオンリテールの村井正平社長のコメントも、
「15~20%増収」と元気。
記事の表にある「増益率」の高い企業を順に紹介しておこう。
CDMホールディングス 50%、
アークランドサカモト 38%。
セブン&アイ 17%、
アークス 16%、
イオン 10~15%、
ローソン 11%、
同じくファミリーマート 11%。
ダイユーエイト 6.3%、
カスミ 6%、
ニトリホールディングス4%、
しまむら4%。
ホームセンターとコンビニが好調。
アークス、カスミといったスーパーマーケットもいい。
国民1人当たりのGDPに貢献するためにも、
もっともっと利益を上げていい。
もちろん、
「利益は目的ではない。
条件である」
ピーター・ドラッカー教授。
ありがたい言葉だ。
今日からの3連休、
商売する人も休む人も、
どっちも頑張れ。
<結城義晴>